金峰取水路・朴取水口

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現地踏査日:2012/7/25
記事作成日:2013/8/24
時系列では「錦川第一発電所・取水口」踏査の続きとなる。

向道湖のほぼ上端から国道を右折して県道179号金峰徳山線に入り、虻峠を越えた。自分にとってはまったく初めての場所であり、大した目標物もなさそうな山奥なので見逃しが心配されたが、道に迷うことなくそれらしき場所に到達できた。

この場所を地図で示そう。
航空映像モードでの拡大表示はできない


さて、現地を訪れたときのことを再現しよう。

地図では県道が金峰川を渡って再び登り坂になる場所のように読み取れる。それらしき場所に差し掛かったとき、確かに金峰川の中に水利関連施設特有の水色でペイントされた構造物を見つけた。しかし現地を訪れたときのタイミングは限りなく悪かった。
金峰川を渡る橋のところに車を停められるスペースがあったのだが、何故かそこには一台のボックスカーが停まっていたのだ。

地図でも分かる通り、この近辺は結構な山奥である。虻峠を越える間も一台の車にもすれ違わなかった。それなのに…これから物件を踏査するにあたって格好の場所を他の車が占有しているとは…
家族連れの車だった…分岐路に路肩崩落の標示が出ていたので道を確認していたのかも知れない

減速しつつ素早く周囲を眺めたが、他に車を停められそうな場所が見当たらず現物を目の前に見つけていながら一旦通り過ぎる以外なかった。
県道はすぐにきつい登り坂になった。1.5車線幅のそう広くない道でUターンできる幅はない。しかしこのまま走ればターゲットからどんどん遠ざかってしまう。

県道は駐車禁止になっていなかったので、やむなく路肩へ思い切り寄せて停めた。
帰りがけに撮影…後から思えばガードレールもない崖なのによくこんなに寄せたものだsweat


そもそもここに何があるかを確かめるために県道のこのルートを選んだので、チラ見しただけで通り過ぎるなんて選択肢はない。

幅の狭い県道だが交通量が殆どないから問題ないだろう…
橋の袂にはまださっきの車が停まっていた。


この場所にあったのは水圧鉄管に導かれた水力発電所ではなく、取水塔であった。
川の中に可動堰があってゲートの操作室が見えていることで分かった。


現地は国土地理院の地図で確認していただけで、水力発電所があるのかも…と思っていた。導水経路のある付近で等高線が混んでいるように表記されていたからだ。


取水用のゲートは現在自分がいる県道側にあり、川の水も県道の下をくぐって取り込まれているらしかった。


県道に面してゲート操作用の出入口があったが、当然ながら立入禁止になっていた。
水越ダム管理事務所で管理しているらしい。


ゲートの正面に立つ。ここからでもゲートの最上部にモニュメントが設置されているのが見えた。
しかし逆光になるせいで肉眼では分かってもカメラでは文字が読み取れない。


ズームしつつ明るさ調整してモニュメントを撮影。
朴取水口という名称だ。昭和42年3月完成というから意外に早くから造られていたことになる。


なお、朴取水口の「朴」は、国土地理院の地図でも振り仮名が記載されている通り「ほおのき」と読む。珍しい地名だ。
ではない…^^;

取水のされ方がちょっと変わっている。一般によく見かけるように堰を設けて水位を上げているところは同じだが、静かに導水隧道へ流れ込むのではなく、直角方向に設けられた堰から岸辺に向いて流れていた。


多分、足元の真下に取水口があるのだろう。ここからでは分からない。
川の水がもの凄く清澄だ。


県道に設置された門扉からは、樋門の上部への渡り廊下と河床へ直接降りる梯子に繋がっていた。


ここで撮影している間に橋の袂で停まっていた車は走り去った。
その場所に向かう。
黄色いガードレールの端に朴橋のプレートが貼られていた


最初にこの場所を車から眺めたときの位置。
古そうなコンクリート橋を渡った先に操作室のような建屋が見えたのでそっちへハンドルを切ろうかとも思ったのである。
殆ど通り過ぎた後だったので実際はそんな余裕はなかった


こんな山奥なのに漁業協同組合の告示板が設置されているのが興味深い。


できれば川面まで降りて水の冷たさを体感したかったが、道路からは結構な高低差がある上に雑草が繁茂していて降りられなかった。
とりわけ取水口の方は外部から侵入できないよう念入りにネットフェンスが設置されていた。


取水設備付近のフェンスは標準的タイプで網目も荒い。フェンス越しの撮影で対処できそうだ。


対岸にも施錠されたフェンス門扉の入口があった。
水利使用標識はその内側に設置されていた。


水利使用の目的として水越・徳山発電所となっている。
実際には発電を終えた水は工業用水として利用されているはずだ。


取水口の様子。
可動堰で水位を上昇させ、直角方向に水を流して取水口に向かわせている。このままでは金峰川の水が全て導水路側に流れ込んでしまうので、下流側のゲートを少し開いているのだろう。


ここまでの金峰川の水量は豊富だが、そのうちかなりの量を導水路側に流していることになる。


金峰取水路の造られたときの経緯は分からない。水利権や漁業資源に関する問題があったのではとも想像される。ここから取り込まれた水は、水越発電所を経由した分は再び錦川へ返される。しかし徳山導水路に回る分もあり、それは周南工業地域の工業用水として利用されるからだ。河川維持量が保障されなければ、下流域の灌漑だけでなく魚の生態にも影響を与えるだろう。
また、堰堤で金峰川を全部堰いているので鮎などの魚が遡行できるのだろうかというのも気になった。
取水条件や水量の増加によっては堰板が倒されるのだろう

取水口の前に設置されたスクリーンには意外に木の葉などがかかっていなかった。
吸い込み事故の起こる危険はないが、さすがに堰堤付近での水遊びは御法度だろう。


左岸側に設置された小屋はフェンスから離れている上に窓も汚れていて内部の様子は窺えなかった。恐らくゲート操作室だろう。基本的に水越ダム管理事務所からの遠隔操作で、このゲート室からも作動できるのだろう。

帰り際に再度橋の上から金峰川を撮影。


童心に返って膝下まで水に浸かって涼みたくなるような眺めだった。
もっとも今やそんな気持ちで金峰川を眺める子どもなど居そうにない気もする。


水利関係の施設はコンクリート壁や鋼製の堰堤、水色にペイントされたゲートなどどれもが自然の景観に反する要素をもっている。特に手つかずの自然を至上とする人たちにとっては、清澄な金峰川のイメージにそぐわないがっかりな構造物かも知れない。
他方、この種の設置物に見慣れた人々にとっては人間の叡智の結果と映る。山際を登っていく県道も当初はこのような状態ではなかった筈だ。自然の景観が人々の目を和ませるのと同様、自然から一部を借り受けて改変する形で設置された人工物もまた、人々を幸せにしている。

飲料用の原水に充分耐え得る程に清澄な金峰川の水が結構羨ましかった。

アジトから遙か遠くこれほど山深い場所でもあり、恐らく再度訪れることはないだろう。
その間も朴取水口からは日々黙々と水越逆調整池へ金峰川の水を運んでいるのであった。

再び車の元へ戻り、県道を進んで水越ダムに向かった。
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