宇部興産常盤用水・赤岸

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現地撮影日:2009/5/24
記事編集日:2016/2/25
多くの読者は「宇部興産常盤用水【2】」から寄り道して来られたと思う。
この部分だけ別枠で記事を拵えたのは、本工業用水の経路でとても目立つ場所だし、子どもの頃からこの場所を知っているにもかかわらず何故ここが”奇妙な構造”になっているか分からないからだ。
前述の記事からではなく一覧から読みに来られた方があるかも知れないので、ざっと概説しておこう。

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場所は国道190号の則貞付近で、下り線の歩道側にそれは存在する。
この場所を地図で示している。


歩道を歩き、山口銀行則貞支店の前を過ぎると、一段低いところを用水路(岬明神川)が流れているこの場所に出会う。自転車程度なら通れる細い道(市道岬赤岸線)が並走しており、国道はこの上をボックスカルバートで跨ぎ越している。この用水路に接し、国道よりも一段低い敷地にスーパーアルク恩田店が存在する。
さて、カメラを向けているターゲットがお分かりになっただろうか。


用水路に沿う通路にはブロック塀が連なっているが、国道に到達する前で切れている。この切れた部分に用水路の痕跡のような暗渠が口を開けているのが見えるだろう。これが今回話題にする物件だ。

しかし暗渠にしては様子がおかしい。この用水路に繋がっていないし高さも合っていない。何よりもその半分程度は歩道からの法面コンクリートで中途半端に塞がれている。

この暗渠らしきものの上はスーパーの出入口になっている。そこへ立って写してみた。
この場所は部外者には立ち入って欲しくない場所らしく、用水路に沿った通路からは入れないように鉄パイプで柵が組まれており、立入禁止の札には宇部興産(株)工業用水管路敷の文字が見える。


前編の記事をお読みになった方なら分かるように、この下には宇部興産(株)所有の工業用水管が通されている。
管路敷の上は民家の敷地や店の駐車場などになっているものの、一部では今なお利用されることなく社有地として残っており、この場所は経路の中で最も目立つ部分だ。

幼少期をこの近辺で過ごしたお陰で、私はこの場所が数十年前にどんな感じだったかを覚えている。その頃からこの暗渠らしきものが奇妙に思えてならなかった。
当時がどんな様子だったかは後で述べるとして、今の現地の様子を観察しよう。


暗渠らしき場所の開口部分に近づいてみた。
どういう訳かこの暗渠は中途半端に埋められているようで、スーパーの出入口はこの開渠を跨ぐ橋のようになっている。
この歩道は子どもの登下校路であり、中に入り込むと危ないからという配慮だろう。この暗渠部分にも鉄パイプが組み上げられていた。


未だこれほど巨大なコンクリート二次製品が一般的でなかった時代に造られたのだろう…現場コンクリート打ちのボックスを拵えたようだ。それも見たところ酷く大雑把で、八角形の上半分の形にしては歪んだ感じだ。


内部はどうなっているのだろう…
侵入することはできないので、カメラだけ送り込んでみた。

お世辞にも丁寧な施工とは言えない造りである。カメラは極力水平に構えているのだが、スラブが傾いているししかも場所によって微妙に捩れている。取りあえず暗渠の形は保っておきたかったらしい。


しかし現在では暗渠にしておく意味も殆どないらしい。反対側に歩道から伸びる法面コンクリートが半分近く塞いでいた。

暗渠の上は車の乗り入れのためにアスファルトが被せられていて両端の腰壁部分が僅かに見えるだけだ。


歩道に沿って進む。
歩道からの法面コンクリートが開渠部分の半分を埋めていた。
後で示すようにこの部分は最近の施工である


法面コンクリートの端から先は真砂土で埋められており、スーパーの駐車場にも歩道にも属さない社有地になっている。


ここには簡素な柱とトラロープが張られており、社名が記載された立て札があった。歩道沿いの空き地の宿命で、ゴミの投げ捨てがあるようだ。


この帯状領域の一角にコンクリート製の桝蓋があった。
桝蓋はグレーチングか縞鋼板が一般的な中、取っ手も付かないコンクリート蓋である。元から蓋を開閉する用途を想定していなかったようだ。


この帯状領域は、スーパーのもう一つの出入口の手前で寸断されていた。
写真の右下、歩道側に鉄骨を切断したような跡が見えているが…


そろそろ、この場所が数十年前にはどんな感じだったかを述べておこう。
かつて、ここに果物屋があった。
まあ、そのこと自体は本物件とは大きく関わりはない。前面は歩道に接し、背面は現在の駐車場の一部までかかっていただろうか。買い物をしたことはないが、この場所にあったことは確かな記憶として遺っている。
即ち果物屋さんは工業用水管路敷の上に建っていた。写真に見える鉄骨跡は、恐らくその建物の柱および基礎と思われる。

更に現在は真砂土が充填されているこの長方形領域の部分についても述べておくと…


果物屋のすぐ横から開渠になっていた。
今でこそ真砂土が充填され平地になっているが、かつては先の法面コンクリートがある場所までずっと深い開渠になっていた。 開渠とは言っても元々雨水などを流すためのものではなく、何処にも繋がっていない溝状領域だった。そのため溜まり水になりがちで、ゴミなどが投げ込まれ汚い場所だった記憶がある。

今でこそロープが張られ立て札も出ているが、当時は防護柵も何もなく、開渠の斜面は普通の土手だったと思う。


当時を再現するものではないが、幸いいくらか近い状態のときに撮ったデジカメ画像があった。次の2枚は2009年5月に訪れたときのものである。


現在よりも開渠部分が深い。しかしかつてはこれより更に数十センチは深かった。土砂で埋めたのだろう。
これは歩道拡幅工事前のもので、まだ法面部分のコンクリートが打ち継がれていない。


さて、現地の状況は写真でお分かりになったことだろう。
幼少期の自分はどういう訳か、周囲の用水路や溝に注意を払っていた。そんなに興味を持っていたとも思えないものの、何処にどんな形態の水路や溝があるか覚えていた。この場所は自分の家からの行動半径内に入っていたので、どうして何処にも繋がらず流れもしない溝があるのか気になっていた。

当時から歩道沿いに宇部興産(株)の工業用水が通っていることは知っていた。しかしそのこととこの溝の存在理由を結びつけて考えることはなかった。さすがに子どもだったのである。

充分に大人となった今でも、この場所がどういう構造になっているのか今でも断定的なことは分からない。しかし幼少期よりはいくらか推測を働かせることができる。

まず、すぐに考えつきそうな存在理由 - かつてはこの区間で工業用水が開渠となって流れていた - は否定されると思う。この記事の冒頭に貼られた写真を見れば分かるだろう。国道より5mくらい低い位置に用水路があるので、工業用水は用水路の底より更に低い位置をくぐっていなければならない。もしこの開渠をそのまま流れていたとすれば、用水路の前後に逆サイフォンの呑口・吐口が必要だが、そういうものは当初から存在していなかった。

管路が現役の設備なら、関係部署に尋ねれば必ず正解に辿り着けるだろう。しかし恐らくはこれだろうという推測を得ている。
自然流下できるようにこの区間だけ
管が深く埋設されているのでは?
この区間を国土地理院の地図に書き入れてみた。
青の太線で示している区間がかつて開渠跡の遺っていた部分である。


10m単位の等高線しか提示しない国土地理院の地図ではわかりにくいが、それでも薄茶色で描かれている等高線を頼りにある程度想像することができるだろう。
今や国道沿いに店舗が並んでいるのでイメージは困難なものの、それらを全部脳内消去して元々の地形がどうだったかを考えれば、かなり回答に肉薄できる。

即ち山口銀行を過ぎて最初の用水路を横切るところから、次に別の用水路を横切るまでの間は標高がかなり低い。ここで大きな沢を横断しているのである。
注意すればスーパーアルクの敷地だけが周囲より低いことに気づく

工業用水は自然流下なので、高低差のみで流れていく。常盤池の本土手にある樋門からここまでは国道の縦断勾配と工業用水の勾配がほぼ一致し、無理なく流れていく。
そしてこの場所で大きな沢を渡るため、そのまま管路を布設すると地表部に露出してしまう。
周囲が何もない荒れ地で今後も土地利用のあてがないなら、地表部に管路を露出したまま通すこともあるだろう。
市道居能駅厚東川線の近くに見られる工業用水管路は地表部に現れている

現在スーパーアルクがある場所は、かつてはボウリング場とスケート場が併設される市内きってのアミューズメントスペースだった。早くから低い敷地に大きな建物が立ち、人や車の出入りが多かった場所だった。工業用水管路が設置されたのは恐らくそれより早いと思うが、普通に管路を設置すれば車の出入りに支障する。まして国道沿いの場所だから、邪魔にならないよう埋設したのだろう。

工業用水の元々の流下レベルがどの程度の高さかは分からない。恐らく歩道より数メートル低い程度だろう。そして管路が地表部へ露出しないようにこの区間だけ更に深く埋設し、逆サイフォンを造っているのではないかと推測されるのである。

そして溝状に遺されたあの部分は、管を埋設したときの施工跡ではないかと思う。完全に埋設されなかったのは、意図的に地被りの薄い場所を遺して内部の点検を容易にするため(竪坑の深さを軽減する)か、将来的に布設替えする際の工事量を少なくするためなど、いろいろと推測できる。

この区間で逆サイフォンになっていないとしたら、最初に用水路の下をくぐるときは殆ど水路の底に管天が接する程度だろうし、用水路に差し掛かる手前までは点検用の人孔はかなり怖いほど深い竪坑になっている筈だ。
実際のところはどうか分からない。先に見たコンクリート桝はサイフォン部に滞留する土砂を取り除くための排泥桝かも知れない。また、逆サイフォンの前後では勾配が変わるので、通常呑口・吐口の桝が設置される。しかし現地ではそれらしきものは見つからなかった。

現在のところこれは推測に過ぎないが、関係者は答えを持っている筈だ。詳細が分かり次第追記することとしよう。
《 記事公開後の変化 》
・写真にみえているアルク恩田店は昭和40年代に建てられた第2宇部ボウル及びアイススタジアム時代の建物を流用していた。建物の老朽化が目立つため、2014年1月に一旦閉鎖され全面改装された。この折りに敷地全体を数十センチ嵩上げし出入口のスロープなども更新されたため、現場打ちの暗渠などは消滅している。

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