宇部興産常盤工業用水

インデックスに戻る

記事編集日:2016/2/25
情報この記事および後続記事は企業の現役物件を扱っており、一定の機密保持が求められています。このため容易に知り得る一般公開可能な内容に限定し記述されています。

常盤工業用水は宇部興産(株)が管理する工業用導水路の一つで、常盤池の東にある本土手樋門より取水し、管渠により宇部東部の工場地帯に給水している。
《 成り立ち 》
石炭の賜物であった宇部市は、採炭事業により飛躍的な発展を遂げて工業化が進んだ。工場用地は石炭掘削により生じたボタを海へ押し広げることで南方へ拡大された。
こうした埋め立て地のうち西部は水量の豊富な厚東川が近いために比較的容易に工業用水の確保ができた。しかし東部には主立った河川がなく工業用水の確保に苦しんだ。初期には海水も流用されていたが、塩分による部材腐食の問題があり[1]、工業用水源として常盤池が着目されたのは必然であった。

常盤池もまた流入する主な河川がなく、築堤期以来幾度も干ばつの危機に見舞われた。灌漑用水の安定供給すらままならない状況で常盤池の水を工業用水向けにも使いたいという意向が容易に受け入れられなかったことは想像に難くない。
水確保問題に対する最初の取り組みは、常盤池の荒手より塚穴川へ流していた余剰水を堰き止め、新たな池を造って用水を無駄なく利用する手法であった。この過程で誕生したのが夫婦池であり、成立も大正時代まで遡る。沖の山炭鉱は夫婦池の築堤に資金提供する引き替えに工業用水の水利権を得ている。詳しくは夫婦池の項目を参照。
派生記事: 夫婦池
しかし夫婦池の築堤後も用水確保を自然降雨に頼る図式は変わらず、一連の問題解決は県営事業として厚東川の水を導く常盤用水路の完成まで待たなければならなかった。
同時期に東見初炭鉱は常盤池の水利権を取得し、東部工業地帯への給水を目的に本土手より流下する独自の導水路を布設した。このため厚東川から取水し、常盤池に貯留して導水管により市東部に給水する一連の経路を指して常盤用水と呼ばれる場合もある。[2]

当初は主に東見初炭鉱の子会社である宇部曹達工業への給水が目的であったが、その後宇部曹達工業は宇部興産系列を離れてセントラル硝子(株)となった。[3]このため導水路はセントラル硝子の工場群へ伸びており、独立系会社となった後も給水を続けていた。現在は東部にある宇部興産系列の工場群向けに給水している。
《 仕様 》
確認されている区間において導水路はすべて地下埋設管であり開渠部分はない。県営の常盤用水路が隧道およびサイフォン以外の殆どが開渠であることとは対象的である。管渠はコンクリート管で随所に点検用の人孔が設置されている。人孔には宇部興産(株)管理の工業用水であることを示す銘入りの鋳鉄蓋が掛かっており、歩道用と車道用が存在する。また、随所に空気弁を格納した一回り小さい長方形の鋳鉄蓋がある。

常盤池の水面はEL=20m程度あるので、着水先のセントラル硝子工場前までは自然流下可能である。途中で赤岸および長沢で沢地を流れる2箇所の排水路の下をくぐっている。この場所はサイフォン構造になっているかも知れないが詳細は不明である。
《 経路 》
本土手樋門を経た用水は暗渠により灌漑用の常盤水路(下小場)のすぐ近くに導かれる。
ただし常盤水路が隧道のポータルより吐き出され開渠となるのに対し、常盤工業用水は開渠と夫婦池の間を管渠で通されている。ポータルの横には空気弁の格納庫があり、続いて夫婦池に排出するためと思われる排泥バルブを格納したコンクリート桝が存在する。


蓋のない角桝で深さは2m程度。放置物件ではなく現在も宇部興産により管理されている。[4]


この位置を拡大地図でポイントしている。


更に国道190号常盤公園分岐路付近で国道を横断するまでは常盤水路と夫婦池の土手の間を管渠で進む。国道横断時に常盤水路と位置関係が入れ替わるが、正確にどのあたりかは分かっていない。

国道190号に到達後は概ね歩道ないしは道路敷外の民地の地下に埋設されている。
本土手樋門を出た直後でも常盤工業用水は20m近い高度を保っており、国道は東に向かうにつれて緩やかに下っている。このため途中で動力の介添えを受けることなく自然流下している。
赤岸と恩田長沢付近でやや深い沢を横断する。このうち赤岸では管渠を埋設したときに生じたと思われる工事跡が2014年頃まで遺っていた。恩田長沢付近では国道を通す際に沢を埋める形で盛土されており、管渠は嵩上げされた歩道の下を通っている。

恩田小学校南門を過ぎた箇所からは国道を離れ、芝中方面に向かう。芝中第1踏切と交わるまでの区間は現在も舗装されない農道のようになっており、管渠を埋設した上を一般向けの通路として開放している。この部分は元々農道であった区間の下に管を埋設したのか、宇部興産が独自に管を埋設した後で上を管理道としたのかは分かっていない。
恐らく前者と思われる

踏切横断後、市道五反田笹山線に沿って更に東へ向かう。この過程で市道名切笹山線との交点付近にかつて関連すると思われるポンプ小屋のような設備があった。コンクリート製のこの小屋は詳細が分からないまま撤去され、現在は浄化槽を思わせるような屋外式の構造物に変わっている。[5]


市道五反田笹山線の起点へ到達すると、市道東海岸通り線を横断し西村鉄工所構内を通過している。この先は社有地であるため詳細な調査は行っていない。しかしその先はセントラル硝子工場付近で、芝の中ポンプ所という銘板のある設備が存在することから、工業用水はここに着水しているものと思われる。


全経路をルートラボで示す。


芝の中ポンプ場を経由しているかどうかは分からないが、東海岸通りに沿って窒素工場方面へ伸びる経路が知られている。この区間も含めて常盤工業用水と呼ばれているかは分からない。本編では外している。
《 その他 》
・常盤池の本土手樋門は白鳥湖から近い位置にある。ハクチョウが飼育されていた時代は排泄物の影響が避けられず、定期的に浚渫が行われていたとは言え水質は通常の工業用水としては劣っていたと考えられる。国道に沿って埋設されている導水管は、定期的な漏水調査や点検補修の他、内部の清掃業務も行われていた。[6]

・点検用の竪坑にかけられた鋳鉄蓋には歩道などの一般用と車道など荷重がかかる場所の耐荷重用がある。そのすべてに最近白ペイントで管理番号が記載された。


管理番号は以前から記されていたものを再度ペイントし直したものかも知れない。
《 近年の変化 》
・恩田小学校の南側にある通用門から宇部線芝中第1踏切にかけての農道部分に沿って宅地開発が行われ景観が大きく変わっている。特に踏切に近い側の農道は新興住宅地の地元管理道および側溝に接するようになった。
踏切近くにある錆び付いた標識柱らしきものは撤去されず現在も存置されている。

・市道五反田笹山線と市道名切笹山線の交点部分にある建屋は常盤工業用水の加圧ポンプ室と思われていたが、実際は誤りで市上下水道部の管理する笹山ポンプ所だったことが判明した。このことは後に現地に設置されたポンプ所の工事看板によって判明した。[7]
本土手直下に存在する空気弁室から追跡可能な範囲で導水路を辿った初回レポート。全3巻。
派生記事: 宇部興産(株)常盤工業用水路【1】
出典および編集追記:

1.「宇部の水道」市水道局監修 p.33

2. 当サイトでは説明の便宜上厚東川から常盤池まで県営で布設された経路を常盤用水路、常盤池より東部工場地帯へ給水する経路を常盤工業用水、本土手樋門より供給される灌漑用水向けの水路を常盤用水と表記している。実際に常盤(工業)用水路とした場合、県営の常盤用水路と宇部興産所有の常盤工業用水の双方を含む場合がある。

3.「Wikipedia - セントラル硝子」を参照。

4. いたずら防止でバルブには南京錠が設置されている。その錠前が最近新しいものに交換されていた。

5. この設備は2013年の夏頃解体され、上部をコンクリートで覆った簡素なものに改修された。時期的には宇部興産(株)特別高圧線の撤去とほぼ同じである。

6. 関係者聞き取りと幼少期における自身の見聞による。国道190号の歩道の一角をバリケードで囲い、人孔に作業員が出入りするのを目撃したことがある。少なくとも平成初期までは人力による漏水補修・清掃・点検作業が行われていた。

7.「FB|宇部興産常盤工業用水とは無関係だったポンプ室(2016/2/22)(要ログイン)

ホームに戻る