総括

《 はじめに 》
ここでは私の居住する宇部市あるいはその近辺において、一度でも耳にしたことがあるものから現在も普通に使われている方言およびそれに類する言葉を収録している。

方言に関する興味は昔から持っていたようで、この記事群は初期のホームページで公開されていたものをベースに編集追記されている。現在でも方言の収録が主体だが、中には一般語でありながら現在では全国的にあまり耳にしなくなったために方言であるかのように扱われている言葉もある。

何をもって方言と決めるのかは、基準を作らなければ難しい。まったく独自の語で辞書にもまるっきり収録されていないながら現地の人々で普通に使われているものは認定が容易だが、同音異義語の如く一般的な言葉が意味を転じて使われているものが結構ある。
例えば「えらい」という語は一般には
(1) 大変な。「えらいことになったぞ。」
(2) 偉大な。「あの方は大変えらい人だ。」
といった意味で使われる。しかし私の居住区周辺では「疲労した」という意味でまったく一般的に使われる。
(3) 疲れた。「もうえろうて(えらくて)歩けん。」
といった用法は辞書には収録されていない。

読者の中には、我が居住地域の宇部市外はもちろん、県外および中国地方以外からこのページを見ておられる方もあるだろう。標準語化が進むことで方言が徐々に失われつつあることを反省し、近年は地方独特の方言の温かみが見直されテレビでも割と頻繁に取り上げられるようになってきている。それでも私たち山口県人(あるいはその周辺地域の方を含めて)が、ごく日常的に上の(3) のような使い方をしていることは他の地域の方には極めて奇特に映ることだろう。

実際、この「えらい」という語は21世紀に至る現在でも老若男女問わず普通に使われている。原形だけでなく「えろうてやれん」のように、他の標準語と同様な活用形を伴って話される。このとき話者の頭にあるのは「えらい」という標準形だけで、この方言をご存じない方なら連想されるであろう「エロい」は全く頭にない。指摘されれば「そう言えば似ている」と気付く位に関連づけていない。

私たちが普通に口にする「えろうてやれん」を耳にすれば、県外の方などは話者が卑猥な気持ちになっている等と誤解してしまうかも知れない。そのような隔たりを埋めることと古くは話されていた土着の言葉を記録するために、次の基準を満たすものを我が地域の方言として掲載することにした。
(a) 一般の辞書にはその意味は載せられていない
(b) その語を使う、または意味を理解できる人が相当数いる
(c) 現在は殆ど使われていないが、用例が存在する
私自身がその意味を理解し、親しい間柄では今も普通に使うものをはじめ、随分と昔に年配の方が使われるのを聞いたり、幼少期によく耳にしていた標準的でない言葉(方言というよりは幼児語)も含まれる。まずは大雑把に品詞での分類を試みた。かなりの部分を網羅していると思われるがが、抜けているものは随時追加していく。

《 記号の意味 》
方言一つとっても、かつては間違いなく使われていながら今や理解する人も僅少で死語に近い種のものから、現在も日常生活で全く普通に登場し、標準語と思っていたという人が多数居るようなものまで、使用頻度は様々である。

英和辞典に収録された単語が重要度に応じて ** や * マークが付されているのに倣って、この方言リストも使用頻度に応じて以下のように取り決めた。
記号重要度
**現在も日常会話で一般的に使われている語。
*親しい仲などでは今も普通に使われる語。
---あまり使われなくなっているが年配者には概ね通じる語。
かつて聞いたことがあるが現在では殆ど使われない語。
近年になって郷土史などで見聞した語。
幼少時代の見聞や誤用と思われる語。
上記の分類は個人的な経験によるもので絶対的なものではない。例えば幼児や学童の会話や作文に頻出する語でありながら一般人でも時に口にするような言葉もある。詳細は各項目に設定されたリンクを参照されたい。
宇部まつり開催時に新天町アーケードで豊言倶楽部の掲示したパネルを題材とした談話。
外部サイト: FB|2015/11/3のタイムライン