荒谷ダム【1】

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現地踏査日:2011/11/03
記事公開日:2011/11/23
荒谷(あらたに)ダムは山口市の宮野上にある治水・利水ダムで、近年開発された宮野温泉を過ぎて椹野川の本流を遡行した先に位置する。
発電は行っておらず、湛水量などからしても中規模レベルだが、ダム本体を含めて自然と人工が織りなすダイナミズムを感じさせる景観がそこにはあった。
高所恐怖症の方にはちょっと厳しいかも知れないと思えるほど

現地へのアクセスは、国道262号の旧道で現在は県道に降格された宮野上佐々並線が唯一の経路となる。今回は並行して県道レポートを記事化しているので、荒谷ダムへの足取りとして参考にして欲しい。
派生記事: 県道196号宮野上佐々並線

さて、いきなり現地へ飛んでみよう。

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県道の荒谷ダム入口である。
同じ写真を県道レポート側に掲載している
ここからもう300mほど先だ。


ダムに向かう枝道は林道荒谷線と呼ばれている。
先の方に高いアーチ橋が見えかけている。


ガードレールの端まで寄ってみたが、ここから谷底は見えない。


林道はカーブしてそのアーチ橋に向かっていた。
橋の手前で車を停め、降りて眺めることに。


長大アーチ橋の名称はそのまんま荒谷橋だった。


橋はこの深い谷を斜めに横切っており、その中央から荒谷ダムを正面に眺めることができる。
逆光気味なのが惜しまれるが、ここからがダムのベストアングルだ。拡大対象画像です。
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再び車に乗り込み、橋を渡った。
林道は荒谷橋を経て一旦右岸に移るものの、ダム事務所は県道と同じ左岸にある。ダム堰堤の入口部分に説明版らしきものが並んでいたが、帰りに寄るとしてまずは堰堤上を渡ってダム事務所に向かった。その辺りにじっくり眺めてみたいものが集中していたからだ。

ダム事務所の前に車数台分の駐車場スペースがあった。初めて来たダムながら、あちこち見どころがありそうだ。

今しがた渡ってきたダム堰堤。
右側がダム事務所である。もっとも事務所とは言っても当然無人だ。


ダム堰堤の端にダムの標準断面図があったのだが、詳細な画像は採取できなかった。
強化プラスチック板にどうしても自分が映り込んでしまうのだ。


事務所の玄関部分。
”山口土木建築事務所”の文字が見える。県管理のダムだ。しかし荒谷ダムは規模が小さいせいか、この夏に開催された一般見学会の対象ダムとはなっていなかった。
多分新規に追加見学対象となることはないのでは…


ダム事務所の横から奥へ向かう通路があり、割と大きめの建て屋があった。


多分、作業用ボートの格納庫だろう。さっきダム堰堤を通ったとき、この建て屋からダム湖へ向かう斜路が見えていたからだ。
何処のダムでも管理者がダム湖にボートを繰り出すための設備を持っているようだ。ダム湖面に夾雑物防止の網を設置したりするとき必要なのだろう。

建て屋の右横が空いていたのでちょっと踏み込んでみたが、ゴミ焼却炉らしき設備とダム湖に続く鉄管(何のためのものか分からない…残念ながら写真を撮っていない)があって、当然その先は降りる場所がなかった。

この建て屋前から見たダム事務所。
断崖絶壁の上に建てられている。ダム湖の水が下側を隠しているからそう見えないだけだ。


ここから動画を回してみた。

[再生時間: 29秒]


事務所の裏側は使われなくなった事務椅子や物干し台が放置されていた。かつては職員が常駐するだけでなくここで寝泊まりもしていたのではなかろうか。
片方が外れ落ちた物干し竿とツタの絡まった物干し台が何とも侘びしい。


雑草だらけの裏庭へ入ってダム湖の手摺りに近づいてみた。

ダム裏の映像である。
何処のダムでも共通するのだが、表から見るダムの姿は優雅でダイナミックでも裏側は物静かで不気味な感じがする。拡大対象画像です。
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鏡のような湖面、黒々とした水、きっぱりとはねつけるような垂直壁。
いくらダム湖の水で隠されていてもその深さは容易に想像がつく。こういうアングルで撮影するとダム裏の怖さがひしひしと感じられる。
垂直壁には手がかりなど一切なく転落したら本当にどうしようもない…拡大対象画像です。
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来客車用駐車場の横には倉庫らしき建て屋があり、その脇にダム下へ降りる扉があった。
扉といっても駐車場の手摺りの延長のような簡素なものだ。


手摺りにもたれかかってダム下側を撮影。
かなり長い階段でダム下まで続いている。有刺鉄線やフェンスなどはなく、立入禁止の標示板も出ていない。


階段を降りれば一応谷底までは行けそうだ。
しかし…もの凄い高低差だ。行くなら自己責任は当然として、かなりの労力が要りそうだ。


扉には鍵が掛かっておらず、簡素なラッチが取り付けてあるだけだった。
行ってもいいものならちょっと…


あれ?
二枚扉の隙間が狭いため、扉の厚みが災いしてキチンと開けない。
これじゃ開けられんやん…
設計ミスか?

いや、そうじゃなくて…
開けるのなら左側のラッチも引き上げなければならないってことだ。
こうして手摺りから外側の世界へ…
別に背徳感はない。確かに常識的な来訪者なら普通入ろうとしない場所だろうが、ここから降りればダム下からの眺めが得られる。扉は施錠されておらず侵入禁止とも明示されていないなら、他の場所と同様、自己責任で行って良い場所の筈だ。
そもそも最初はダム下から訪れようとしたが県道の何処から分岐しているのか道が分からなかった

もっともダム管理者からすれば、一般の来訪者には入って欲しくない場所だろう。不用意に踏み込んで大怪我などされたら、決まって管理責任云々という話になるからだ。
だから私は現地の情報を提供するものの積極的に勧めはしないし、むしろ早めに言っておこうと思うのだが、

注意自分の身に降り掛かる危険に関して全責任を負えない人は、同じ行動を取らないことを強くお勧めします。

ここに限らず、ダムは無鉄砲な行動をとれば容易に命の危険に晒される場所である。この点、一般の観光地や遊園地とは訳が違う。特に子ども連れの親は、自分の子どもの行動を監視下に置く自信がないなら、何処のダムだろうが連れて行かないことをお勧めする。子ども連れに限らず、危険の予知能力や経験が浅い大人でも同様である。
そういう場所で事故を起こしたら身も心が痛むだろうがダム管理者も管理責任を問われる…そうして立入禁止区域が増えれば私たち見学者にも不利益になる

振り返って今降りてきた階段を撮影した。


階段を降りたすぐ横、駐車場の真下あたりになると思う。そこにポンプ室か何かの扉を見つけた。
その正体を調べようとして、私自身全く予想もしなかった危険に晒されることになった。

(「荒谷ダム【2】」へ続く)

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