階段を降りると、そこには監査廊入口と思われる扉があった。
そこに全く予想外の危険が潜んでいた。
スズメバチの巣だ!!
もっとも季節柄、蜂たちは一匹も居ないようだった。姿は見えないし特有のブンブン音が聞こえない。
ここで巣を撮影しようとして二重の過ちを犯してしまった。
フラッシュが勝手に作動しやがった。
思わず舌打ちした。何で暗くもないのにフラッシュ動作するんだよ?
余計な刺激を与えて蜂が一斉に出てきたらひとたまりもないじゃないか。
幸い、本当に巣は空っぽのようだった。余計な刺激を与えて蜂が一斉に出てきたらひとたまりもないじゃないか。
改めてフラッシュオフを確認してズーム撮影した。
(明るさ不足と判定されるらしく若干ピントが甘くなっている)
子どもの頃、野山の屋根で遊んでいてスズメバチの大群に頭を刺され危ない目に遭っている。蜂に刺されて本当に危ないのは2度目以降と聞いている。だからどんな種の蜂でも飛んでくると思わず身をかわしてしまう。
帰りにまたあの前を通ることになるが、今は気にせずどんどん下っていく。
ダム堰堤の側面が見え始めた。
物凄い迫力だ。
ここまで降りてきた。
階段はダム堰堤に沿って6段降り、踊り場で下流方向に6段下り、再び堰堤に沿って6段下り…を延々繰り返している。
これから下る先。
まだ半分も降りてきていない。足腰に自信がない人は、再びこれを上がって来なければならない事実を知るまでもなく怖じ気づいて引き返すだろう。
階段の途中から荒谷橋が見え始めた。
これは美しい…本当に絵になる。
谷底の木々が紅葉したら最高の景色になるだろう。
ダムの余水吐から流れ落ちる水も見えるようになった。
白い筋が秀麗だ。
階段を下りきると、何だかイベント広場のような雰囲気の場所に出てきた。
意匠を凝らした四角いタイルが十字型に敷き詰められていて、サーチライトも設置されている。この場所もかつては一般開放されていて、夜間はライトアップされていたのかも知れない。
流れ落ちる白い水の筋。
シャーッという音がここまでも聞こえている。側壁は高さがなく、怖くて身を乗り出せない。
そこから更に下ったところにサイコロ形の建て屋が見える。その先にフェンス門扉があり、黄色いガードレールが見えているので、ダム下からあの場所までは到達する道があるのだろう。
(県道を走るときその道を注意して観ていたのだが入口が分からなかった)
この場所から荒谷橋や河床、ダムを含めてパノラマ動画撮影しておいた。
[再生時間: 45秒]
サイコロ形の建て屋はトイレではなく、給水ポンプ室だった。
(イベント会場風の場所に思えたのでトイレかと思っていた)
ダム湖の水を導いて処理しているのだろうか。
ダム下から来ると思われる道のフェンスの裏側に出てきた。
門扉は閉ざされているが、フェンスの丈は標準のものよりかなり低い。
目を惹くものが見当たらなかったので、フェンス門扉の外には出なかった。
護岸の上部には割と最近、草刈りをしたような形跡があった。
放水部分を撮影する。生憎の逆光だ。
副ダムには2箇所正方形の排水孔があって、その大きさは1m角くらいだ。まして副ダム自身は5m近くあってその内側のエプロン部は見えなかった。
言うまでもなく降りられる場所などない。
側壁が邪魔して流下する水の筋全体は撮影できなかった。若干身を乗り出し、両手でカメラを差し出せば撮れるのだろうが、これ以上は絶対にムリ。バランスを崩して転落する。
今ですら山の湧水が洗い流しているコンクリート版の端に踏ん張って撮影している状態なのだ。
(高低差が分かりづらいが河床まで5m以上)
再びイベント広場らしき場所まで戻る。
ここのダム堰堤に面して階段の横に監査廊の入口があった。
左岸の監査廊入口。もちろん施錠されている。
荒谷ダムは県が主催する見学会の対象外だから一般人がこの内側へ入る機会は当面ないだろう。
最後に余水吐からエプロンに流れ落ちる映像を撮りたいと思った。まだエプロン部の写真を撮っていなかった。
そのためにはどうしてもカメラを構えてこの場所から下を覗き込まなければならない。
怖い…
高い場所から下を観るのがダメなのだ。吸い込まれそうになる。イベント会場風の場でありながら側壁は高さが20cm位しかなく、手摺りは一切ない。この縁から身を乗り出して撮影している最中メマイでも起こせば、本当にエプロンまで「吸い込まれて」しまう…
(その危険性故に下からの道がフェンス門扉で締め切られたのかも知れない)
動画を回してみた。
最後の方にちょびっとだけエプロン部が写されている。私としてはこれが限界だ。
(右岸側はエプロン下まで降りる階段があるようにも思われる…)
[再生時間: 15秒]
この広場から荒谷橋を見上げる。
物凄く高い。一体どうやって架けたのだろうか…
さて、
当たり前だが、降りてきたからには登り直さなければならない。見るからにウンザリする階段だ。
(もっとも先が見えない間上発電所の急階段よりはマシか…^^;)
それでもわざわざここまで降りて来ただけの甲斐はあった。
近くから観るダム堰堤は迫力があったし、エプロン部はカメラを向けるのが怖いほどの高低差があった。そしてダム下から見上げる荒谷橋は、非日常的な感覚を満喫するに充分なほどの高さと壮大さがあった。
充分に満足して、私は目の前の階段をこなしにかかった。
(「荒谷ダム【3】」へ続く)