一の坂ダム【序】

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現地踏査日:2012/7/21
記事公開日:2011/7/24
一の坂と言えば、宇部市に拠点を構える我が身にとっては小野区にある一の坂の方を先に連想してしまう。厚東川ダムの第二次左岸堰堤接近計画の舞台となった場所だ。しかし市内および県内の読者なら一の坂で何を連想するかと問われれば、大抵の方はホタルの舞う山口市の川と答えるだろう。

一の坂ダムは、山口市を流れるゲンジボタルで有名な一の坂川の上流に造られたダムである。「ダムなんか造ると自然が失われホタルも居なくなる」と眉を顰められそうだが、実際のところ一の坂川をダム整備せず自然に任せていれば今以上に荒れていたかも知れないと言われる。一の坂川は古い街並みを流れており、街の景観を守るために安易で無骨なコンクリート護岸を高く築く河川改修ができない背景があった。古い街並みを水害から守り、ホタルが住み着くのに必要な水量や水質を保つには豪雨や渇水に対して緩衝的に働くダムの存在が必要だったのである。
これらの経緯は県のホームページにも記載されている。
「山口県|河川課|一の坂ダム」
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a18600/dam/ichinosaka.html
このことに呼応し、一の坂ダムは当初から治水を主な目的として設置された。しかし貯留した水は河川維持をはじめ灌漑用水に利用されているし、とりわけ治水ダムでありながら小規模発電を行っていることは注目に値する。後付けであれば例えば企業局が厚東川ダムへ設置したマイクロ発電所のようなケースがあるが、当初から関連設備を設置した事例は県管理のダムは一の坂ダムだけである。

一の坂ダムの位置図を示す。


萩側から訪れるなら国道262号から県道62号山口旭線に入り、”21世紀の森キャンプ場”を過ぎて峠越えすることになる。(21世紀の森施設自体は平成23年度末に廃止されている
山口市側から訪れるには、山口バイパスの上竪小路交差点から県道62号に入れば良い。
以下、今回私がダム見学会に合わせて訪れた道中の一部を紹介する。途中で見つけたダムとは無関係な小ネタも訪れている。これらの途中経過を飛ばしていきなりダムから読み始めたい方は「一の坂ダム【1】」のリンクより直行されたい。

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国道9号の上竪小路交差点には地名板が出ているのでまず見落とす心配はない。県道62号山口旭線は主要地方道だが道幅はそう広くなく、センターラインのない対面交通である。しかしそれなりに交通量があるので、一時停止して途中の写真撮影を…というわけにはいかなかった。

街並みを抜けて前方に山が見え始める頃、県道は直角右カーブで一の坂川を渡る。ここは主要な場所であり、ダムを離れてちょっと確認しておきたい題材があったので、少し広い場所に車を停めて行動開始した。

今、車で通ったばかりの場所である。
萩方面は右折して40kmという案内が出ている。その下側、白地に青い文字で遠慮がちに一の坂ダムも同方向と案内されていた。


反対側から撮影。
萩側から来れば橋を渡ってすぐ左へ折れる形になる。


さて、これから向かう一の坂ダムとはまるっきり無関係なのだが、地図を眺めていたときから気になるものがここにあった。


上の写真には既に答えが写り込んでいる。私の嗜好性癖をご存じな方なら想像がつくかも知れない。

ヒント的に提示するのだが、この場所の核心部分を拡大表示させた地図である。


上の地図では、山の斜面に対して直角に降りていく水路と言うか川のような記述が見えている。これは自然の川ではないだろう。この近辺の山はかなり傾斜がきついことが詰んだ等高線からも窺い知れるからだ。
そうとなれば…
発電所の水圧鉄管か排水路では?

という想像が頭を過ぎっていた。
冒頭で述べた通り、一の坂ダムでは小水力発電も行っていることを聞いていた。水力発電所は通常ダム直下に設置するものだが、ダム下が狭隘な場合、水圧鉄管で離れた場所まで導水した上で発電するケースもある。
佐波川発電所がその例である

しかし…答えは既に出ていた。
橋の向こうに見えている部分をズーム撮影。
これが答えだ。


観たところかなりの急傾斜で、発電用水路の排出口のように見えなくもない。
しかしこれはただの竪排水路だろう。発電関係だったら危険度が高いから、フェンスは有刺鉄線を巻くだろうし当局の立て札の一つくらいあるものだ。

念のため近くまで行ってみた。
ネットフェンスには有刺鉄線が伴わず、急勾配ながら何の加工もされていない開渠だ。鳥獣保護区の標識と共に、急傾斜地区域指定の看板が出ていた。


かつて水圧鉄管があって直下に発電所があった…というのなら結構面白いのだが、その可能性もない。今日は市外までダム見学を主な目当てで遠征しているので、時間的余裕もそんなにない。それ以上頓着せずサッと引き返した。
もし水圧鉄管だったら当然辿る…また間上発電所みたいなことになっていただろう^^;

車に戻りながら要りそうになるかも知れない写真だけは丹念に撮っておいた。

直角曲がり部分を上流側から眺めている。県道山口旭線はここで一の坂川を渡り左岸へ移る。現在いる場所は恐らく山口市道だろう。
後で分かったことだがダム下まで続くこの道はかつての萩往還という


しょっちゅう来れる場所でもないので橋に関しても撮影しておいた。


橋の名前は天花橋
この近辺の地名に由来している。


天花橋と書いて「てんげはし」
似た読みの地名はうちの近くには存在せず、何か特別な由来がありそうだ。


車に乗り込み、カメラをダッシュボード固定に据え替える。

県道は一の坂川左岸を一定勾配で登っていく。途中安全に車を停められる場所はないし左下の川面の眺めも殆ど効かなかった。


薄汚れた県道標識に出会う。
かなり人里離れた山地まで走ってきていながら、この近辺はまだ天花3丁目という住居表示を持っている。


やや大きな沢を横切る橋(新虹橋というらしい)を渡るとダム堰堤が見えてくる。

意外に人気のあるダムなのだろうか…
一般の駐車場には車が4〜5台停まっていた。


運転席から既に見えていたので、恐らく職員専用と思われるダム管理事務所敷地内の駐車場へ勝手に停めた^^;
恐らく事務所に近い側の駐車場を来客者用に空けておく配慮だったらしい

ダム管理事務所は2階建てで、2階の部屋には電灯が点いていた。
先客の来訪者が見えたようなので敢えてアングルから外している


見学会の期間限定で掲げられる幟。
毎年倉庫から出してきては立てかけているのだろうか…


県道に出てダム管理事務所を撮影していたら、職員と思しき方が事務所へ戻るのを目撃した。


呼び止められるかとも思ったが、そのまま玄関へ入って行かれた。まあ私としてもその方が都合がいい。 見学会が始まると自分のペースで好き勝手には撮影できない。まあ、終わってからゆっくり撮ってもいいのだが、見学会を済ませた来訪者が居残って他の場所をパシパシ撮影しているってのも変な話で、先に常時見学可能な場所を撮っておきたいからだ。

管理所の全景。もちろん普段は無人だ。


通用門を塞ぐ形で看板が出ていた。あらかじめ調べておいた通り、監査廊や発電所などの見学は10時から1時間毎となっていた。


手元の時計(と言うか腕時計を使わない習慣なので手元のケータイで確認したのだが…^^;)では11時まであと15分程度あった。それで先にダムの写真を撮っておくことにした。

以上、ここまでが序盤導入編。
それではいざ本編へ…

(「一の坂ダム【1】」へ続く)

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