一の坂ダム【5】

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(「一の坂ダム【4】」の続き)

見学会が終了した後もすぐには帰らず、当初から予定していた通り右岸まで車を移動させてみた。
見学会では担当者と共に移動するので、いくら写真目当てと言っても好き勝手なところへ行くことはできない。追加で撮影しておきたいものが若干あった。


右岸から撮影したダム背面の様子。拡大対象画像です。
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中央の四角い排出口からダム水が流下しているのが分かるだろう。


駐車場からも見えた、錦鶏湖の右岸寄りにある籠のようなもの。
選択取水設備塔というもので、水位に応じて取水口の高さを調節できる設備だ。
この建屋の内部は今回の見学会では対象外だった…怖いけどあの階段を降りてみたい


右岸にも同様の扁額がある。
その構えを撮影しようとしていると、対岸から萩往還ウォーカーだろうか…そんな出で立ちの方が歩いてきた。


ダムと言えば山奥にある構造物というイメージを持つものだろう。そうでありながら町名表示板が貼り付けてあるのが何とも奇妙だ。
山口市内は割と町名表示板が整備されている感じがした…分かりやすくて良いと思う


ウォーカーはやはり私に何か御用がおありのようだった。
さて…何か尋ねられても私がこの近辺で知っていることなど皆無に等しいのだが…
「(右岸の階段を指さして)この下から歩いて上がって来れますか?」
ああ、そのことなら私が一番良く知っているよ…さっき上がって来たばかりなんだから…という状況だ。
ダムの上にいてこの質問をなさる訳だから、これから歩いて萩往還を辿れるだろうかということだろう。
「今ダムの見学会をやってまして…私は今さっき管理所の人と上がって来たところです。鍵を開けてもらえるかも知れないのでダム管理事務所でお尋ねになってみては?」
その方はいたく感謝され再びダム管理事務所の方に歩いて行かれた。これから山口の街並みに向かって歩いて行かれるようだ。もしかすると待機する職員に仕事を作ってしまったかなと思いつつ…^^;

ダム右岸に設置された記念碑。
先ほどはこの奥にある階段から上がって来たのだった。


竣工の記念碑。山口県知事の銘が入っている。
今後は県知事の記名入り石碑は造られないのではなかろうか。


右岸から撮影したダム堰堤部。
恐らく山口市道になっているのだろう。


これにてダム関連の「真面目な」ネタは一通り採取完了した。
さて、見学会ではお行儀が悪いので自重しておいた例の物件の撮影をしておかなければならない。

この扉の内側に何があるか…という好奇心への回答を得る作業だ。読者だって知りたいだろう。


しかしアルミ扉はきっちり閉まっていて隙間がない。内部を覗き込めるとすれば、ドア上部にある細かな網目越しくらいのものだ。
アルミ扉にはなるべく触りたくなかった。もうドア一面コケまみれのカビだらけ…ナメクジやカタツムリでさえ這い回らない放置プレーぶりだ。

思い切り伸び上がり、菱形の細い網目にカメラのレンズを押しつけて人差し指でシャッターを押した。もちろんファインダーを覗き込むことはできない。

最初、暗がりにフラッシュが反応した。フラッシュを焚くとアルミ格子に反射してしまってまともな画像を結ばなかった。それでフラッシュオフに設定し再度トライした。
そうして得られたのがこの映像である。


なるべく外からの明かりが入るようにカメラを構えてもう一度やってみた。
こちらの方がちょっと写りが良いようだ。


僅かな光に反応し、意外に鮮明な映像を採取してきてくれた。
上部が半円形のトンネルで、天井部分には蛍光灯とコードが設置されている。内部には何も置かれている様子はなく、延々と続くトンネルが映し出されていた。もっともダム構造図で示された通りなら、50m先で行き止まりになっているのは確実だ。
暗闇の一部に黄色い点が散在しているのは画像透過処理の仕様…原典画像にはない

グラウトトンネルはダムが完成すればもう出番は殆どない。ダムに何か問題が起きたとき再度資料採取に立ち入られることはあるかも知れないが、それはダムの非常事態だ。ダムが安泰に機能している限り、私やあなたがこの奥に立ち入れる可能性は基本的にない。恐らくダム関係者とて用事がない故に入らないだろう。天井に吊された電灯はもしかすると外されていて機能しないのではなかろうか。

殆ど誰からも顧みられることなく一年中暗闇だけが支配している廃トンネルのような存在と言えるだろう。

既にもう身体はチリチリだ。車に乗り込むと速攻でエアコンを全開にしてペットボトルのお茶を呷った。エアコンONにすると動きの鈍る車を転回して再びダム堰堤を渡った。

来た道を戻ろうと右折しかけたとき、先ほど話をした萩往還ウォーカーが案内して頂いた担当者に導かれて事務所から出てくるのを見かけた。私はそのまま走り去ったので分からなかったが多分監査廊に降りる階段とフェンスの鍵を持って同行されたのだろう。

駐在する担当者も暑い最中をご苦労様だけど、まあその位はサービスしてあげてもいいのではなかろうか。ダムが一の坂川とその下流域に住まう人々にもたらした恩恵は計り知れないが、歴史ある萩往還の一部を湖底に沈める定めとなったのだから…

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