厚東川ダム・右岸曝気循環設備棟【1】

ダムインデックスに戻る

現地踏査日:2009/6/13
記事公開日:2011/12/14
注意この記事の中ほどに蛇(シマヘビ)の写真が掲載されています。
爬虫類が苦手な方は縦スクロールする時にご注意ください。

車に乗り込み、更に細い県道小野木田線を北に走った。小野湖のダム上流部に宇部丸山ダム向けの取水口があることを手元のパンフレットによって知っていたからである。
それは小野湖の入江状になっている場所にあることが分かっていたので、進行方向右手を注視しつつ車を走らせていた。しかしその手前で助手席側に何やら建て屋のようなものを見つけた。アッと思ったが通り過ぎてしまった。

交通量は殆どないものの、場所によっては離合も困難な狭い県道である。一旦そのまま走り過ぎ、転回できる広い場所を探していた。その途中で偶然、関連があるかよく分からない施設を小野湖側に見つけた。
そこは若干広くなっていたので、車を転回する前にちょっと調べてみることにした。

県道とダム湖の間に倉庫らしきものが2棟と焼却炉が見えた。いずれも有刺鉄線付きのフェンスに囲障されていた。


多分、中には入れないだろうと思いフェンスの網目越しに内部を覗いてみた。
敷地内はコンクリート張りである。


正面に見える建屋らしきものをズームしてみた。
山口県厚東川ダム 右岸曝気循環設備棟


どうやらそれは探していた丸山ダムへの取水口とは直接関係がない設備らしかった。
それは現役で今も稼働しているらしく、時折異なったモーター音らしきものが聞こえてくる。その割には殆ど敷地内へ立ち入られることもないようで、雑草が至るところ生えていた。
近づいて詳しく調べてみたいと思い、どこかフェンスの切れ目がないか探してみた。

意外にも、フェンスはダム湖の近くで切れていて容易に敷地内へ入ることができそうだ。
進攻に何の困難もなかったものの、むしろ私を一瞬怖じ気づかせたのは、コンクリート斜面の階段に居座る一匹のシマヘビだった。


かなり接近してから気付いたので、さすがにドキッとした。

私はヘビは嫌いではない。突然、目の前に現れるし日頃は見慣れない生き物だからびっくりするのであって、彼らも早くから人の存在に気付けば退散する。よほど至近距離まで踏み込まない限り、積極的に攻撃してこない。
その意味では彼らは人間様の生活空間へ勝手に侵入しては危害を加える蚊やムカデよりずっと愛すべき存在である。彼らにとっては、生活空間である野山に踏み込む私たち人間こそ迷惑な存在であって、追い立てたりいじめたりするなど論外である。

シマヘビは私がそのしなやかな色艶と身体の模様をしげしげ観察する間もなく、階段をのそのそと昇り始めた。
あまり人が訪れる場所でもないらしく、コンクリート斜路まで草が生えていた。
階段の一番上を登ろうとしているシマヘビ君が見えている


私はシマヘビが退散する間、周囲の状況を動画撮影してみた。
[再生時間: 32秒]


シマヘビが草むらに消えた後を追うように、私も階段を昇り敷地内へ足を踏み入れた。

正面にあるのは器具倉庫だろうか。太いワイヤーがドアの下からのぞいている。しかし浚渫船はおろかボートすら収納されているとは思えないサイズである。


この小さな器具倉庫と正対するように、中で唸りをあげている建て屋があった。


それは通常ウィーンという電気音をたてているが、時折その音がゴゴゴ…という音に変わった。名前の通りダム湖の水を空気と攪拌しているのだろうか。

何のためにその必要があるのかは定かではない。ダム湖の水の酸素濃度が極端に低下しないように攪拌しているのではと想像される。
私たちが必要なのはダムの水だけであってそこに何が住まうかは問題ではないのだが、かと言って水生生物も死滅するほど酸素不足な水では、恐らく嫌気性の微生物ばかり増えて水質悪化に繋がるのだろう。
もっともこれほど広い小野湖に対してこの程度の規模の設備で効果があるのかよく分からない

ボートを湖面に下ろすためのコンクリート斜路は先へ進むほど急斜面でダム湖へ落ち込んでいて、スロープを湖に向かって歩くのはちょっとしたスリルだった。
大して意味もないこの映像を載せておこう。
編集者注:昔は無謀なことをしていたものだ…決して同じことをやらないように
[再生時間: 16秒]


他に特別観るべきものはなく、戻ることにした。

スロープ横の階段を降りたところから振り返って撮影。
中央のころがある溝部分に小さな灌木が居座ってしまっている。どうもこの斜路を使ってボートや浚渫船などを降ろすのもそう頻繁ではなさそうだ。


ここを立ち去る前に、階段の一番下まで降りてダム湖の汀にしゃがんで小野湖を写してみた。
これは長雨が続いた以前に撮影したものなので現在はもっと水位が上がっていると思う


元々、そう透明度も高くないダム湖なのでコンクリート斜面がどこまで続いているか目視はできなかった。
しっかりした足場があり、水面下が見えないから出来る芸当であって、足を滑らした先が十数メートルもの深さをもつ湖面であることは充分考えられるから、ほんの少しも無用に動き回らなかった。

最後にこの設備棟の位置を地図で示しておこう。


この設備の前で車を転回させた後、私は先ほど見過ごしてしまった建て屋まで戻った。

(「厚東川ダム取水口【1】」に続く)

---

【追記】(2/26, 22:30)

最近、この方面の物件を踏査した折りにこの場所および近接物件の写真を撮影し直した。
特に新しく知られた内容はないが、続編としてお届けする。

(「厚東川ダム・右岸曝気循環設備棟【2】」に続く)


ホームに戻る