厚東川ダム・左岸堰堤接近計画【4】

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現地踏査日:2012/2/12
記事公開日:2012/2/19
(「厚東川ダム・左岸堰堤接近計画【3】」の続き)

注意自分の身に降り掛かる危険に関して全責任を負えない人は、同じ行動を取らないことを強くお勧めします。

いきなり脅し文句で始まるようだが、前もってかなり本気でお断りしておきたい。全編にわたって怪我を負いかねない場所が相当あるし、踏査の後半部分でには誤って転落すれば脱出不可能、そのまま人生終わり…となりかねない危険な場所がある。
殆どの読者はこの記事と写真を眺めて愉しまれるだけど思うが、たまさか現地へ踏査なさろうとする方は充分に注意されたい。

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機は熟した。
今日こそ必ず攻略させていただく。
連休の初日となる11日は演出力のないど素人の私自身が仕掛けたローカルSNSの周年イベントで半日過ごし、司会を務めてテンションが上がりきっていた。
翌日の12日も前日に引き続いて快晴。風も殆どない。休みの日が2連続で快晴というのは間違いなく今年初めてだ。それほど年が明けて好天に恵まれなかったわけで、このチャンスを生かさなければそれこそ「お天道様の罰があたる」。

ターゲットはあの場所しかない。
いや…ここだけじゃなく本当は「あらて」の再踏査も考えていたのだが…^^;

午前中は洗濯や布団干しなど家のことを片付けた。午後ちょっと遅い時間にスタートする代わりに、今日立ち寄るのは追加の写真撮影をすると決めていた「善和橋」だけで、その後は最終ターゲットだけとガチで勝負する。それで今回はハイブリッド方式ではなく車に頼った。

国道2号の車地交差点の手前にある二俣瀬橋を渡りすぐ左折した。初回にハイブリッド方式で訪れ、自転車のタイヤに優しくない砂利敷きの道にうんざりさせられたあのルートだ。

甲山川が厚東川へ注ぐ場所。車に乗ったまま撮影している。
第一次計画では自転車でこの橋を渡った。


左岸計画関連で何度も紹介された場所だ。
初代自転車で撮影し、二代目自転車でも訪れ、そして今は車の運転席から撮影している。


遠くにダムが見えてきた。
雲一つない晴天。開放感があるし写真映りも良い。ベストコンディションだ。
踏査と言っても非日常体験を愉しむのは旅行と同じだ。晴天の方が良いに決まっている。
もうやる気満々、絶対に今回は仕留めてみせる…と意気込んでいた。
前方を横切っている送電鉄塔が前回自分の位置の参考にした山口幹線である


コンクリート床版を斜めに渡る場所。
初めて訪れたときここは車では通らない方が良いだろう…と思ったのだが、意外に轍がある。軽四だからそう苦労はあるまい…とそのまま進入した。


そして悪名高い”泥のじゅうたん地帯”である。
無理することはない。ここに車を留め置いて歩くことにした。距離があるとは言っても前回の一ノ坂ルートほど歩かない。


同じ失敗をしてはならない。
バッテリーの充電は午前中にやっておいたし、予備のバッテリーは間違いなくカバンの中に入れた。同じく車を離れるときも持ち物チェックを入念に行った。
ジャンパーを羽織り、すぐ撮影できるようにデジカメだけ右手に持った。当面使わない替えのバッテリーや携帯はジャンパーのポケットへ入れてファスナーを閉めた。
今回は経路メモは持ち歩かない。前回体力の限界を感じて引き返したあの水路から強引に斜面を登る以外あり得ず、メモを取るに値しない。

泥のじゅうたん地帯は相変わらず車が絶対ハマる程に水はけが悪い。しかし自転車を連れて行かない純粋な徒歩なら藪に近い場所を歩けるのでそれほど問題はなかった。


左岸を訪れるのはこれで3度目になる。
発電所は稼働しておらず、代わりに排砂孔からかなりの水が放出されていた。


このまま真っ直ぐ進みダム堰堤真下まで到達できるなら何も悩むことはない。ターゲットを下から眺めつつ斜面を登ることができる。それが不可能なことは最初ここを訪れたときから知っていた。
途中に足元さえも全く見えないほどきつい藪があって進行を阻んでいるからだ。

しかし私はこのショットを撮影した時点で、既に大きなヒントを得ていた。
ここに写っているものから分かるだろう。


この水路だ。
一部は壊れていて苔にまみれてかなり古い。前回見た砂礫が詰まっているあの用水路に違いないと思った。


前回、枝道の多さに辟易し、最後には体力的に限界を感じて引き返した場所に向かうなら、恐らくこの用水路を辿れば行けるだろう…
およそ推測は立っていながらいざ実行するとなると容易ではなかった。

付近には道がなく、水路は酷い藪の中を通っていて、しかももの凄い急勾配の三拍子揃っている。直接水路の上を歩いて進むのは藪の薄い今の時期でもさすがに無理。


それで用水路を見失わない程度に距離をおき、少しでも藪の薄い場所を見極めつつ突撃開始した。
こんな強行手段が取れるのも今の時期限定だ。夏場はまず接近不可能だろう。
初回に左岸計画で訪れたときからこの水路の存在は分かっていた…時期柄当時は接近しようという考えすら萎えさせるほどの藪だった

用水路は途中から更にきつい急勾配に変わっていた。しかし先方には藪に混じって青空の一部も見えているからそれほど長く続く感じはない。


垂直高で10m程度登ってきただろうか。勾配変わりの場所に蓋のない桝を見つけた。


以前はこの沢の上流部分に田畑があり、前回踏査時にもその痕跡が窺えた。耕作されなくなって数十年経つらしく、用水路も荒れ放題だ。


この桝を境に勾配が緩くなり、水路に沿って歩ける程度に両側の藪が退いた。元は往来できる道があったのだろう。
同時に足元が土ばかりの地山から砂礫に変わった。


ここは見覚えがある。砂礫や木の葉で埋め尽くされ、コンクリート擁壁のように見えたあの水路だ。


用水路は沢の低い部分を避け、一段高い場所を通されていた。
殆ど痕跡も消えかけているほど砂礫に埋まっている。


沢がこの用水路の高さに追いつき、斜面に変わる場所があった。
ここがキーポイントだと感じた。


もちろん道はない。分かり切っている。
だが立ち木は疎らで進行するのに困難はない。何よりも沢から尾根に変わる部分なら、垂直方向に進むならここが最も登り勾配が緩い筈だ。

水路を離れて直角方向に斜面を登り始める。雑木は疎らで勾配も先に辿った水路部分よりは緩く困難はなかった。

先の水路より更に5m程度高い場所に到達した。足元は良くないが砂礫の足掛かりはよく、滑り落ちるような場所ではない。


周囲を見回す。
そこは道の痕跡かどうか分からない程度の平場ができていた。
周囲は至る所礫石だらけ。まるで廃線跡を歩いているようだ。


下の水路もだったが、何故かこの周辺はこういった礫石が異常に多い。それも奇妙なほど粒ぞろいと言うか大きさが揃っているのである。自然のままの山がこんな地形をもつことがあり得るのだろうか…あたかもふとん籠の中の栗石が流出してしまったかのようだ。

奇妙なことにその平場は自分の立つ場所より下にも観察された。まるで雛壇のようになっていて自然の地形とは思われない。遙か昔、ダム堰堤工事を行うにあたって整備されたそのままなのだろうか。
私が立っている経路の一つも大体高さが同じになるような通路を形成していた。


これを道と呼ぶにはあまりにも幅が狭いし、踏み跡も淡すぎる。たまたま直線上に木が生えていなかっただけのようにも思われた。

滑りそうな足元の木の葉に注意して先を進むと…

あれは何だ?


正面に立ちはだかるのは紛れもなくダム堰堤だ。
その中腹にそれらしく見えている黒々とした坑口…
やはりそうだったのか…
かねてから念頭にあった仮説が証明された瞬間だった。

しかし…
あの場所まで行けるのだろうか?

(「厚東川ダム・左岸堰堤接近計画【5】」へ続く)

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