ダムカードの配布ルールなどが明記されたポスターの横には、全く残念なお知らせが掲載されていた。
ダム見学会中止。
今年の初夏から夏場にかけて起きた豪雨と洪水の被害が頭にあったので予想外の出来事でもなく、やっぱりそうなったか…という想像はついた。
取りあえずインターホンのボタンを押し、ダムカードの件について話した。暫くして担当者が玄関まで出てきた。
湯の原ダムのときと同様、台帳への記入と引き換えにダムカードを渡された。当然、カードをもらってすぐ帰るという筈もなく、中止された見学会の話になった。
想像通り、ダム見学会の中止は豪雨が中止の遠因となっていたようだ。木屋川ダムだけでなく、見学会の開催が予定されていたすべての施設で中止になっていた。災害復旧などで業務多忙なのだろう。
(ダムの緊急放流によって冠水被害を受けた田畑も相当あった中で見学会を開催などできないという対外的な事情もあったのかも…)
木屋川ダムに限って言えば、一般開放で観ることが出来るのは、普段は立ち入れない堰堤部分とゲート操作室に限られるようだった。この部分は毎年、7月21日(子どもの夏休みが始まる期日前後)から7月末までは、一般開放期間として予約なしで見学できるという。
ただし、ダム直下にある木屋川ダム発電所は湯の原ダムで遠隔操作している都合上、湯の原ダム管理事務所で見学予約が必要になるようだった。
(担当者が湯の原ダム側から派遣されるらしい…)
それから、残念ながら監査廊は一般開放の対象外と言われた。施設が古く、昇降用の階段は粗雑で急な上に足掛かりの部分が欠けていたり幅が狭かったりで、見学者の安全が確保されないというのが最大の理由らしい。
現在のところ監査廊が見学できるダムは、平成になって完成した湯の原ダムくらいのもので、他のダムでも監査廊の一般見学は出来ないということだった。
この記事を書いている2011年末現在では監査廊が見学できるようになったダムが増えている。見学者の安全が確保されるよう手摺りなどを設置する追加工事を行ったためらしい。
本来なら、23日の今日は予約なしでゲート室を見学し、そこからダム湖や下流側を眺めることが出来た筈なのだ。はるばる市外から観に来たのに一般開放は中止になったし、ダム管理事務所からの眺めはイマイチだし…ぼやいていると、担当者がアドバイスしてくれた。
「ダムの下から観に行かれた方が眺めは良いですよ」
何処のダムでも大抵はダム堰堤とダム下の両方に道がついている。木屋川ダムにもダム下へ向かう道があるらしいことは地図で下調べしてあった。しかし車で安全に入れるのか自信がなかったのだ。
「ダム下まで車で行けますか?」
「発電所まで車で入れる管理道はありますが…お勧めはできませんね。転回する場所がなくバックで出なければなりませんし…」
それは困る。「発電所まで車で入れる管理道はありますが…お勧めはできませんね。転回する場所がなくバックで出なければなりませんし…」
「何処か車を停めて観に行くことができる場所とかありますかね?」
「管理道の脇にも停められないことはないでしょうけど…入口近くは民家になっていまして、そこに置くのはちょっと…」
山間部だから、距離を言わなければ車を停める場所にそう苦労することはない。しかしなるべく歩く距離は短くしたいと思った。この駐車場で立ち話していても汗が滲み出る暑さなのだ。「管理道の脇にも停められないことはないでしょうけど…入口近くは民家になっていまして、そこに置くのはちょっと…」
担当者はあまり大きな声では言えないのですが…と断った上で、裏技的な方法を指南してくれた。
「この駐車場を出て県道まで戻って…(略)…という方法もあります。」
「じゃあ、そうしてみることで…ありがとうございます。」
建物の影に入っていたお陰でそれほど熱されていない車に乗り込み、私はダム下から観るために所定の場所まで車を移動した。「じゃあ、そうしてみることで…ありがとうございます。」
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ダム下には木屋川発電所があり、県道からの分岐点には案内板が出ていた。
このあたりの詳細な事情については発電所エントリからの記事に書くことにして…
派生記事: 木屋川発電所【1】
その場所から木屋川発電所に向かう管理道を歩いた。
既にダムが見えていた。そう大した距離を歩くこともなさそうだ。
ダム本体が見えてきた。確かにダム事務所の駐車場付近から眺めるよりは全体像がよく見える。
護岸から身を乗り出して撮影してみた。
(前を横切る電線が邪魔)
左端にある開口部から排出されているのは、発電所で位置エネルギーを絞り取られた後の水で、周囲の水面を濁らせる原因となっていた。
厚東川ダムと同様、ダム下にエプロンは存在しない。
興味深いのは、この排砂孔の位置だ。左岸側の斜路のど真ん中に設置されている。
厚東川ダムにもある排出孔は右岸寄りに2ヶ所あり、いずれも斜路を避けた場所にある。
巨大な排砂管。直径1mくらいあるだろうか。
厚東川ダムにも同様のものがあるが、内部が鋼管で補強されている点が異なる。
施錠されたフェンス門扉があって発電所の敷地内には当然入れなかったが、山手側に階段があり、門扉よりも若干ダム側に近づくことができた。
その階段の上から河川敷を眺めている。
木屋川発電所の横から観たダムの全容。
再び排砂穴をズーム。先の写真よりは相対的に近い距離からの撮影になる。
排砂穴の下側のコンクリートが水流で削られていることから、侵食を避けるために後から鋼管を挿入したように思われる。
それにしてはダム躯体にぴったり合わせて誂えてあるのが不思議だ。
ゲート室の全容。
屋根や外側の壁や窓などの造りも厚東川ダムのものと同じだ。
管理道を引き返し歩きつつ、再度振り返ってダムの全容を撮影した。
電線を避けるように後ずさりし、撮影位置を工夫して電線の入らないアングルで撮影。
ダム下周辺もそうだったが、左岸側には下流に架かる橋のあたりからしてまったく道らしきものが見当たらない。
左岸のダム下への接近は、厚東川ダム以上に難しそうだ。
(行ったことのある人は居るのだろうか…という気持ちになる)
県道まで戻った後、ダム事務所から見えていたあの橋に行ってみた。もしかすると違う角度でダムを眺められるかも知れないと思ったので。
県道34号は木屋川発電所への分岐を過ぎてただちに木屋川を渡る。平日の午後でもあり、県道を通る車は殆どない。
なかなかに古めかしい橋で、欄干の意匠は木屋川ダムの袖壁に観たものに似ている。
同じ時期に造られたのかも知れない。
親柱には瀧橋という石版が取り付けてあった。
(築造年月を調べるのを失念していた)
さて、肝心なダムの眺めだが、残念ながら橋からはダムの姿は全く望めなかった。
木屋川はダム下で軽く屈曲しているためだ。
さて…
車を停めた場所まで戻ろうか。
ソロッと郵便局の駐車場に戻った。
車は炎天下で炙られまくっていたので蒸し風呂状態だったが仕方ない。アジトから持参して、車のホルダーに放置していたペットボトルのお茶もぬるくなっていた。
次は湯の原ダムだ。前回、時間切れで中断していた木屋川送水路を撮りに行こう…
来年こそは一般見学会に期待したいと思う。
終