宇部丸山ダム・左岸監査廊入口

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現地撮影日:2012/8/31
記事公開日:2012/9/11
宇部丸山ダムの左岸監査廊入口はダム下の公園区画内にあり、もちろん内部に潜入することはできないが入口までは自由に近づける状態になっている。


元から殆ど誰も来ない公園はダム堰堤に接している。この一般人が誰でも立ち入れる場所に左岸監査廊の入口が露出しているのだった。


今やこれが監査廊と知っているからそれほどの恐怖はない。しかし何も知らずに公園内を散歩し、興味本位にここへ近づいたなら恐怖と驚愕を覚えるかも知れない。

ダムに対して垂直方向にトンネルのような入口が見える。
水色の扉は当然施錠されているが、上部はかなり隙間が空いていて中を覗き込める。


暗闇の奥からはチョロチョロと水の音が聞こえている。場合によっては周囲よりやや冷たい感じの空気が噴き出ているかも知れない。

初めてこの場所を知り、中を覗き込んだときの驚きは今も忘れられない。

何ともおどろおどろしい斜坑になっていた!


もの凄い急角度だ。内側は45度くらいの傾斜の階段になっている。
扉がある以上ここから人が降りて行くこともあるのだろうが、最低地点まではかなり深く暗い。

何枚かフラッシュ撮影した中で最も鮮明に写っている映像だ。拡大対象画像です。
画像にマウスをかざすと拡大、ダブルクリックで最大化します。
クリックすれば元のサイズに戻ります。


目測で高低差は6mくらい。足元は階段だが上部は半円形で断面はトンネルそのものである。
何よりも異様さを感じさせるのは、天井部分のジョイントから吹き出している石灰分を含んだ水の流れ跡だ。
内壁を垂れる間に石灰分だけが分離して少しずつ沈着している。いわゆる「コンクリート鍾乳石」と呼ばれるもので、実際鍾乳石が成長するのと同じ原理だ。

両側の壁にはアルミパイプの手すりが設置されており、一番下の廊下部分は左右に伸びているようだ。

右側の壁に沿ってアングルを変えて写してみた。
光の届く範囲は湧水が流れた跡にコケも生えていた。


扉の外から内部までカメラを移動しつつ動画撮影してみた。

[再生時間: 30秒]


真っ直ぐ階段を下った先に通路があり、それは降りた場所から左右に伸びているようだ。その先がどうなっているか、何処に繋がっているかはもちろん分からない。

廊下部分がどうなっているか詳細に撮れないものかと思いズームを試みた。
ダメだ…巧く撮れない。
そのまま内部を撮影したときの画像は闇夜のカラス状態だ。


手持ちのカメラの仕様で、光量が足りない環境でズームすると確かに被写体を引き寄せることができるものの、ファインダーから見える映像も撮影された被写体も真っ黒になってしまう。フラッシュを焚けばある程度光は回るが、著しく画質が落ちるのである。

上の写真に明るさ補正をかけてみた。
うっすらと階段や通路の状態が写っているのが分かる。


粗い扉のお陰でカメラ撮影は容易だった。しかし粗いと言ってもネコの子一匹通れないサイズで、潜入は元よりこの先を知る方法はまったくなかった。
なまじ腕を伸ばしてカメラを操作していてうっかり落としたら回収不能になるだろう。
もっとも企業局に連絡すれば鍵を開けてもらえるだろうが…かなり恥ずかしい

このたび久しぶりにここを訪れてみた。
季節柄雑草の繁茂が目立つ以外、何も変わったことはなかった。


適度に日が当たるせいでイバラ類も目立つ。
それで今回は内部の撮影もだが接近すらしなかった。


企業局の担当者なら扉の鍵を持っている筈である。しかし担当者でさえもここ左岸側から監査廊内部の点検に入ることは殆どないのではと思う。扉にはイバラ系の雑草が絡みついており、最近出入りした形跡が窺えないからだ。
天井に通常設置されている蛍光灯を外した跡が見えるのも理由の一つ

穿った見方だろうが、この公園を積極的に案内はしない理由の一つではないかとも思える。施錠されているので侵入は阻止できるにしても、公園の一角にこんな洞穴があったら子どもは怯えるだろうし、扉の上部構造が隙間だらけなので悪ガキにゴミを投げ込まれる心配もある。
斜坑なので空き缶やボールを放り込まれたら一番下まで転がり落ちてしまう

流水路との位置関係。
当然、右岸側にも同様の設備がある筈だ。


右岸には工業用水関連の設備が並ぶ一角なので、監査廊への出入りは設備群の点検と合わせて右岸側から行っているのではなかろうか。
錠前が扉の外側に付いているので内側からでは開けられない

左岸監査廊入口の位置を航空映像で示した。


入口の天井部分が平らになっているので航空映像でも視認できる。
そして注意深く上の航空映像をドラッグすると、右岸側にも似たような監査廊入口らしき構造物が見えかけているのである。

ダム見学会の対象外なので、監査廊内部を見学できる可能性は限りなく低い。
些か「酸っぱいブドウ」的放言だが、観られないとは言っても内部は恐らく他のダムにある標準的な監査廊とそう違いはないだろう。即ち流水路の真下にバルブ室があり、緊急および点検用の操作ができるようになっていて、漏水を排除するポンプも設置されている筈だ。
左岸監査廊の斜坑を降りてダム中心とは反対側に伸びる通路らしきものは恐らくグラウトトンネルだろう。この2つ以外に監査廊出入口があるとは思えない。

残念ながらこれ以上のことは何も分からない。いつの日か見学会対象ダムとなって内部を観られるときが来るのだろうか…
東部・西部利水事務所に比べて厚東工水って情報開示にあまり積極的でないような気が…
《 近年の変化 》
現地撮影日:2016/7/22
記事作成日:2016/8/11
時期は不明だが、この監査廊の入口門扉に立入禁止の札が架けられ、鉄格子の隙間に金網が張られた


金網は鶏小屋などに用いられる六角形の目の細かなもので、扉の内側からぴっちりと張られている。


立入禁止の札を貼らなくとも鉄格子は堅牢で隙間も狭いので子どもですらくぐって入ることはできない。しかし手を通すことは可能な程度の隙間だったので、扉の隙間から異物を投げ込むイタズラが多発していたのかも知れない。
いずれにしろこの金網が設置されたので上記のような動画や写真撮影はできなくなった。
それでも何年かすれば網に綻びが出来て元と同じことになるのでは…

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