宇部丸山ダム・太陽光発電設備

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現地踏査日:2010/2/27
      2012/8/31
記事公開日:2012/9/26
丸山ダムの左岸上にある駐車場に車を停めて湖面を眺めると、取水塔の近くに筏のようなものが見えている。


これは太陽光発電用のパネルを載せた筏である。湖上に浮かべられているので近くで見る術はないが、実際は縦10m×横30mもある巨大な筏だ。


取水塔の桟橋横からズーム撮影した太陽光発電パネルの写真。
2基の筏に2枚ずつ載せられている。


このパネルについては、ダム上の管理道で最高地点にある説明板にも明記されている。
太陽光発電について明記された説明板を立てていることから、丸山ダムが造られた当初から計画されていた設備と言える。


ダムにマイクロ水力発電機能を追加するなど、新エネルギー源確保の動きが最近活発だが、広い湖面に太陽電池の筏を浮かべて太陽光発電を行う取り組みは、県内でも宇部丸山ダムだけである。
「山口県|企業局総務課|宇部丸山ダム太陽光モデルプラント」
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a40100/topic/taiyo.html
上記サイトによると設備の見学にも応じると書かれている…太陽光パネルを観てみたいものだが恐らく見学は研究者および有識者に限られるのだろう…

県内で特に丸山ダムが選ばれたのは、太陽光発電の時流に乗っていた時期にできたダムということの他に、周囲に高く聳える山がなく長時間の日照が確保できる点も加味されたのだろう。
雪が酷い日には除雪しなければ筏ごと沈没するのでは…

以下は4年前、まだ電光掲示パネルが稼働していたときの写真である。
丸山ダムの概要を示す説明板の横にこのようなパネルが設置され、リアルタイムで発電量が表示されていた。


太陽電池で造られた電力利用の流れ。交流変換してダム湖の水質浄化装置駆動用の電源として働き、余った分は中国電力に売電されている。
天候不順で発電量が足りない場合は負荷側になる


丸山ダムを訪れたときにはかならずこのパネルの前を通るので、何か変わったことがあれば常に記録していた。

これが一昨年の写真である。
表示システムに不具合が生じたのか、「故障中」の貼り紙が貼られて不完全な表示状態になった。


その後いつ訪れても電光表示が消えていることが殆どになった。

そしてこれが記事をかく現在のパネルの状況である。発電量を示すデジタル表示が取り外され、企業局アピールの貼り紙に差し替えられてしまった。


もっとも表示を取り止めただけで、太陽発電は恐らく継続して行われているだろう。巨大な筏は以前と同じ位置に浮かんでいる。

一連の動作には太陽電池パネルからの送電ケーブル、交流に変換するためのインバータ室、水質浄化装置への給電ケーブルが必要である。天候によっては電力が過剰になったり不足したりするので、一連の収支を記録する電力メータも要るだろう。
湖上・湖中にあって接近できない太陽光発電パネルと水質浄化装置を除いて、いずれも管理道近くにあり外からであれば観察できる。

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インバータ室と思われる建屋がダム堰堤を渡って最初のカーブの内側にみられる。
管理道はこの場所で広くなっており、車を停めて観察することができる。
管理道は意外に通る車がある…向こうからやって来るのは無関係な車


この建屋の位置を地図で示す。


管理道に面して裏口がある。
このすぐ先に丸山溜め池由来の石碑と水神社がある。


反対側から眺めたところ。
メインの出入口はダム湖側に面している。メインと言ってももちろん施錠されており関係者以外は建屋には入れない。
管理道の周辺は人目を逃れられるせいか、建屋の壁をマーキング族がキャンバスにした形跡がみられる。
この管理道沿線には極めてマーキングが多い…治安の悪さを感じる


正面に回り込んだ。
鉄棒の入った窓枠が2つにアルミ扉という構成だ。アルミ扉の出入口の両横に二列の側溝が据えられている。
なぜか使い古しの長靴が側溝蓋の上へ無造作に脱ぎ捨てられていた


外観は普通の側溝と排水桝だが、この中にケーブルが格納されている。そのことは縞鋼板の蓋を開けなくても想像がついた。


桝の先端部分を辿ると、斜面の途中からスパイラル管が数本現れ湖面に伸びていたからである。


今の時期まだできることなら藪は漕ぎたくないが、水面がやや低く下のコンクリート部分までは下りられそうなので辿ってみた。

コンクリート護岸を4段分ほど下ってきたところ。
スパイラル管は特に固定されることなくそのまま護岸の上を這わされていた。


三条に束ねられたスパイラル管が湖中に消えていた。


どちらかが太陽電池からの発電分で、他方が水質浄化装置向けの給電用だろう。
太いスパイラル管の側が発電分だろうか…


それほどの高圧電流とも思えないとは言っても、生きた電線がスパイラル管の中を通っているわけである。絶縁されているとは言えちょっと気持ち悪くて触る気はしなかった。もっともスパイラル管は水の浸食防止のための保護管で、内部は充分に被覆された電気コードが格納されているから特に支持されず他のものが触れていても大丈夫なのだろう。
また、スパイラル管はダム湖中では湖底に沈められているかおもりが付属しているらしく、どのルートを通っているかは目視できなかった。

建物自体は窓も扉も完全に閉まっていてまったく中を窺うことはできなかった。
車に戻り、更に先へ進んだ。

水神社の前を通り過ぎ、再び管理道が狭くなって最初の右カーブに出会う先に計測用のメータ室がある。[1]


この建物だ。
先の建屋より大きく高さもある。代わりに出入口は管理道の反対側に一箇所だけだ。


この建屋には窓がなく、裏側には排気ダクトが設置されているだけだった。

反対側に扉があり、その横には「発電用室」のような文字が描かれている。
褪色していて読み取れなかった
入口の右側にメータ機器がある。


これがかなり明白な証拠だ。
買電用と売電用のメータ表示があることから、ここで収支を記録しているのだろう。


ダム湖中では常時水質浄化装置が駆動しているらしく、至る所から水が円形状に沸き上がるのを観ることができる。太陽電池の発電分がどの程度貢献できているか不明だが、恐らく補助的な程度だろう。夜間は太陽電池からの供給分がゼロになる筈なので、トータルでは電力持ち出しになるのではなかろうか…

宇部丸山ダムでは現在、発電所の新設が計画段階にある。単純にダム水の位置エネルギーを取り出す形のマイクロ水力発電ではないかと思われるが、もしかすると太陽電池を搭載した筏方式を拡張し、有効な日照を得られそうな湖面全体を活用して筏で埋め尽くす…などということはないだろうか。
太陽電池パネルの単価が充分安ければ、マイクロ水力発電と併用も可能である。今後、丸山ダムが更に多機能なダムに進化する可能性に期待できそうだ。
出典および編集追記:

1. 壁面の計器は電力管理のものだが、この直方体の建屋自体は計測用の設備ではなく取水塔の非常用電源確保向けの燃料庫である。停電などで取水塔の機器操作ができなくなったときここで発動機を稼働させて電力を供給するための設備である。(2016/7/23)
ダム管理事務所に併設されているものと同じ

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