宇部丸山ダム・取水口

宇部丸山ダムインデックスに戻る

現地踏査日:2010/3/7
      2012/8/31
記事公開日:2012/9/24
丸山ダムは純粋に工業用水を含めた水資源確保のためのダムなので、関連する設備がダム湖周囲に観られる。このうちダム上を訪れて湖上に最も目立つ構造物は、堰堤の西側に見える塔であろう。

ダム上左岸側には舗装された駐車場があり、そこから桟橋のついた塔と筏のようなものが見える。


これは丸山ダムの取水口とされている設備で、ダム湖に貯留された水はここからいくつかのサイフォンや無圧隧道を経て山陽小野田市の有帆に送られている。

取水塔の位置を地図に示す。


ダム堰堤からズーム撮影している。
地図では既に記事で紹介した注水口と同様に描かれているだけだが、構造はかなり異なっている。柱の部分が円筒形をしており、上に乗っている建屋もかなり大きい。


なお、取水塔の近くに黒いものが見えるが、これは太陽光発電用のパネルが載せられた筏である。

別の日に撮影した写真から取水塔付近だけを切り出してみた。
円筒形の太い柱の上に巨大な灰色の豆腐(何)が載っかっているイメージだ。


塔にはダム湖に面して明かり採り用の窓と換気扇が見える。屋上には柱に取り付けられた風向計が回っている。夾雑物の吸い込み防止で取水塔の周辺は網場が設置されている。あと、写真からは外れてしまったが桟橋の陸地接続部付近にはボートが係留されている。

丸山ダム注水口の塔と同様、全体像が見渡せる近い場所は堰堤付近以外ない。現地へ行くことは容易でも取水塔の桟橋入口までしか接近できないからだ。

桟橋入口から先へは進めないのを承知で取水塔まで行ってみた。

ダム堰堤上を通って右岸側に移り、管理道を進むと取水塔への分岐に出会う。ここで管理道は大きく左へ曲がり、分岐点に百葉箱があるのですぐ分かる。
主に一昨年撮影した写真を元に解説している


管理道はカーブの部分でコブ状に膨らんでおり、そこを利用すれば離合は可能だ。しかし直線部分は狭いし車だと留め置く場所探しにも苦労する。取水塔のある入口はカーブの外側なので、桟橋入口に突っ込む形で車を停めた。

フェンス門扉には有刺鉄線が張られていて赤字に目立つ文字で立入禁止と明示されている。
桟橋は軽トラ一台程度通れる幅があり、ダム湖上に突き出た「灰色の豆腐」につながっていた。


取水塔は山陽小野田市の工業用水および水道向け原水を送る重要な設備なので、部外者侵入阻止の本気度は極めて高い。門扉の外側にもネズミ返しが張り出している。


恐らく丸山ダム湖の水は、この取水塔から流れ出る分が一番多いと思われる。山陽小野田市の工業地帯における水需要や水道水を賄っているからだ。
100%ではなく厚狭川系や平原配水槽経由の送水もある

テロリストと間違われるのも心外だ。中へ入る意図などまったくなく、フェンスの網目越しに撮影するだけだ。それなら別に何も問題ないだろう。
フェンスにもたれかかり、網目の中にデジカメのレンズを押し込んで撮影アングルを模索しているそのとき、背後で車のエンジン音が…
えっ?ダム管理者が定期パトロールに来るの?
…って一瞬、ビビリかけたけど通過したのはただの軽トラだった…^^;


うぅむ…驚かせおって…sweat
こんな管理道なんて通る車もないと決めつけていたので、車のエンジン音が聞こえたときには心底びっくりした。

写真にはないが、私がぱっと振り返ったとき軽トラのオジサンも不思議そうな顔をしてコチラを見つめていた。
まあ…そりゃあ不思議に見えるだろう。何か素晴らしい景色が目の前に拡がっているならまだしも、フェンス越しに水利関係の施設を撮影しているとは考えないだろう。
車を停めて撮影していたのでダム管理者って思われたかも…

改めてフェンスの網目にカメラのレンズを押し込み構えた。
たまに作業車が入ることもあるらしくタイヤ痕が割と新しい。派手で目を惹くのが水色のガードレールとシャッターだ。


明文化されているとも思えないが、工業用水関連の設備は概ね水色のペンキで塗られるのがお約束だ。街中の水管橋や設備の扉がこの色をしているのをよく見かけるだろう。水→水色という単純な連想によるもので恐らく全国共通だろう。
それにしても桟橋のガードレールまで水色に塗られているのは初見である。少なくとも私は市内でここ以外見たことはない。特別に誂えたのだろうか…
それともシャッターを塗ったとき余ったペンキで塗ったとか…

ダム上の駐車場がここから見える。


ガードレールに昇降口のようなものが付属しているので、下に何かある筈だ。
伸び上がってカメラを差し出し下向きにしてみる。

ボートらしきものがゆらゆら動いているのが見えた。
この先にある太陽光発電の筏メンテナンス用だろうか。


上に乗っかっている灰色豆腐の建屋をズームする。
建屋の前まで車を付けられるようで、その先は水色のシャッターで隠されていた。シャッターが上がるときは付属する扉ごと上昇するのだろうか…


この扉の内側にあるものは…
想像するだけで実地に見学することはできないだろう。


宇部丸山ダムは企業局の管理するダムなので、一般人には殆ど無縁である。そのせいか公開されている情報が少ない。例えば通常のダムならありがちなダム堰堤に関する諸元や構造図を記載した一般向けの説明板はない。まして注水塔・取水塔の構造などはまったく不明である。

「灰色の豆腐」建屋の内部に電源線が引き込まれていることから、取水ゲートを昇降させる設備が必ず格納されているだろう。数年に一度の導水路点検では送水を停め、内部を調査することがある筈からだ。
湖面下に隠れて見えないが、円筒柱の正面にスクリーンが設置され、そこからダム水が取り込まれているだろう。
塔がどの程度の高さであるかさえ分からない…しかし湖上に出ているのと同等以上が水面下にあるはず

取水塔から取り込まれたダム水は、ここから無圧隧道で西に向かう。これがいわゆる厚東川2期導水路の有帆ルートと呼ばれる区間になる。
その経路は国土地理院の地図には記載されておらず、企業局の作成した資料によってのみ知ることができる。

ここから先は工業用水カテゴリの話題になるのだが、厚東川1期導水路が民家の裏手など地被りの浅い経路を通され、随所に点検用の桝がみられるのに対し、2期導水路では地表部にみられる桝はサイフォン部分に限られ、一般には鋳鉄蓋となっている。特に下岡の国道2号横断部から先は有帆まで一本の無圧隧道で到達している。
取水塔を経たダム水が最初に通ると思われる鋳鉄蓋がこの近くに観られる。

以下は以下は別の日に自転車(ハイブリッド方式)で来たときの写真である。
位置関係が分かりやすくなるよう百葉箱から離して自転車を停めている。


この場所に関連あると思われる鋳鉄蓋があった。


山口県および工業用水の表示があり、下側には「計装用」と陽刻されている。
厚東川2期導水路では専らこの種の鋳鉄蓋が設置されており、経路を調べるには基本的にこの鋳鉄蓋をトレースすることになる。


人孔とは書かれていないので、ここから導水路内部へ点検に降りられるわけではない。恐らく流量や流速を計測する機器類が格納されているだけだ。しかしこの付近に枝線となる導水経路は存在しない筈なので、この真下に無圧隧道が通っているのはかなり確からしいと言える。
絶対とは言い切れない…堰堤周辺にも計装用の鋳鉄蓋がいくつか存在する

厚東川2期導水路(有帆ルート)をトレースするのは1期導水路に次いで古くから取り組んでいたミッションであり、こうした形で地表部に現れる鋳鉄蓋や桝を確認することにより半分程度の経路を追跡・同定できている。一連の記事に関しては、先々で工業用水カテゴリに掲載する予定である。
《 近年の変化 》
・2016年4月よりこの取水塔内部に設置された宇部丸山発電所が稼働開始した。同年7月の「森と湖に親しむ旬間」では見学対象発電所にリストアップされ期間限定で内部を見学できるようになった。したがって本編の記述に反して現在では取水塔の内部の構造は殆ど把握できている。
《 Google ストリートビュー 》
宇部丸山ダムの管理道を周回し採取しているため桟橋の手前正面からの映像が採取されている。


ただし現在では管理道沿いの不法投棄防止のため四輪での進行ができなくなっている。
丸山ダムの貯水率低下に乗じて、普通では湖水に満たされ接近できない入り江に降り立つことで取水塔の鮮明な映像を採取することができた。
そこでこの記事を本編として2部構成程度の続編を案内する。

(「宇部丸山ダム・取水口【1】」へ続く)

ホームに戻る