湯免ダム【3】

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(「湯免ダム【2】」の続き)

ダム管理所職員を伴った見学会は引き続いているが、監査廊を出てダムの左岸上に来ている。
ここは管理区域外で見学会でなくとも随時観に来ることができるので一般公開記事としている。

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左岸から見たダムの様子。
見学会では監査廊を出てここに上がって来ることを予想していた。それ故に見学会が始まる前から周囲を撮影はしていても単独ではここまで歩いて来ていなかった。


担当者が監査廊出入口の門扉を施錠している間、周囲を眺めていて奇妙というか不自然なものの存在に気付いた。
読者はそれが何であるか気付いただろうか。

「こちら側にはダム名のプレートがありませんね?」
写真を観ても分かるように、本来プレートがあるべき位置にモルタルのようなものが塗り込められている。通常この位置には両岸にダム名と竣工年月を記したプレートが設置される。ダム管理事務所のある右岸側には間違いなくあった。
居合わせた担当者も状況は把握していたようだった。
「確か盗難に遭ったと記憶しています。事務所に戻ったとき調べてお答えします。」
ダム下の眺め。
嶮岨な谷という印象はなくかなり幅の広い谷地を制御された細い川が流れている感じだ。
手前に見える奇妙な形状のアスファルト路の意味を尋ねるのを忘れていた…ホタルを模している?


また奇妙なものを見つけた。
選択取水塔の端に滑車があり、ウェイトをぶら下げて釣り合わせている。


ワイヤは取水塔の端に開けられた穴を通して湖中に伸びていた。


取水口の樋門を制御するものなら選択取水塔の内部にあるだろう。これは塔の外側に取り付けられていた。
水質や水温のデータを採取するセンサーが吊り下げられている?

選択取水塔に付属しているものはどのダムでも概ね一定のようだ。
一の坂ダムでも観たのと同じ湖面すれすれに置かれた足場と鉄蓋を見つけた。


巨大な鉄蓋が付属している。点検用の人孔だそうだ。
湖中に没したときも水圧に耐えられるよう頑丈に造られているように見える。


側面に取り付けられていた銘板。
開閉速度が毎分30cmとなっている。ゲートの動作が遅いのは水撃作用を緩和するためだが、非常時はもう少し早く動作する場合もあるという。


一の坂ダムでは往復型の階段だったが湯免ダムではらせん階段だ。


階段を下りることはもちろん選択取水塔の内部も観ることはできなかった。

流木防止用の浮き。
どのダムにも必ず備わっているこの器具は網場(あば)と呼ばれるものだそうだ。
古風な和語であることに驚いた…フローティングワイヤーなどと呼ぶかと思ったのだが^^;


堰堤からでも「みすみ湖」の看板文字が読めるようになっている。


最初に立ち寄った駐車場から見えたこの桟橋も流木などを取り除くボートの発着場だった。


ダム管理事務所へ戻り、先ほど左岸のプレートがなくなっている件について回答があった。
やはり盗難が原因であることに変わりはないが、盗まれたのは左岸のではなく県道がある右岸側のものだったという。
「このダムができる頃は銅など鉄鋼関連の資材価格が急騰した時期でして…市内でも盗難がありました。被害届を出して犯人も捕まりましたが、プレートは既に鋳潰されたらしく戻りませんでした。
「あれを外して売りさばくとか…そんなお金になるんですか?」
「しっかり固定されていますから、外す労力の方が大きかったはずです。大した金にもならず犯人は地団駄踏んだんじゃないでしょうか(苦笑)
ダム一番の顔となるべき正面のプレートが無いでは済まされない。それでやむを得ずあまり人目につかない左岸側のプレートを外してダム管理事務所側に移設したわけである。職員のお一方がプレートを外した跡が目立つので現在のようにモルタルを詰めて処理したと答えた。
歌野川ダムのダム管理事務所前のプレートも同様の被害に遭ったと思われる

見学会の終了後、例によってアンケートの記入を求められた。アンケート用紙はどのダムも同じなので書くことは同じにならざるを得なかったのだが…
「見学できるダムを増やして欲しい!」などと我が儘なことを書いていたりする^^;

あと、一般公開のこの記事で書いて良いかちょっと迷うが…ダム管理事務所に戻ったとき同年代と思しき女性が冷たいお茶を出してくれた。恐らく見学会で担当者が出払っている間に次の見学希望者が来たときの対応要員だろう。見学会で女性職員の応対を受けたのは初めてだった。
もっと増やしても良いと思う…女性の担当者とダムの濃い話をしてみたい^^;

ダム下が親水公園になっているようなので、それほど遠くないなら立ち寄ってみようと思った。
「親水公園にはどう行けば良いですか?」
「この県道を三隅の方へ下るとダム下へ案内する看板があります。川を遡る道がありまして基本的にはどれを通っても行けるんですが…枝道がありましたら県道に近い側の道を辿ってください。」
車に戻ると、ペットボトルのお茶がホットティー状態になっていた。それでもないよりはマシとばかりに一気に飲み干し、まずは県道を下った。
看板を見落とす心配はまったくなかった。むしろその若干手前で沢へ降りる小道を見つけたが、下り勾配が急なように思えたので看板のところで曲がった。それから教えられた通りなるべく県道から離れない枝道を辿った。

近くに民家などは一軒もなく、川に沿って畑が広がっている。しかしダム上から観ていた通り幅が広い谷地なので暗いイメージはまったくない。


駐車場の端に車を停めて撮影しに歩く。
見学会のときには見えていた人の姿はもうなかった。


橋を渡って左岸側に移る。
河床に敷き詰められた減勢工部分がまだ新しく感じられた。


流出部分を撮影する。
副ダムの隆起部分と例の「数百年に一度のコンクリート壁」に遮られて一枚では入りきらなかった。



数十分前まで担当者と共に身を置いていた場所。
さっきはあの真上に立っていた。


下流の様子。
景観重視のせいかあまり高い木は植えられていない。


左岸側はジョギングコースのような散策路が設置されていて、そこよりダム側は一段高く盛土されていた。階段はなかったが立ち入りできない場所でもなく、ちょっと接近してみた。

上から眺めていた溝状領域を造るコンクリート壁が聳えていた。


ダム左岸から降りてくる階段の近くまで行けそうで、もしかすると入り込めてしまうのでは…とも思われた。

(「湯免ダム【4】」へ続く)

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