湯の原ダム・初回踏査【1】

ダムインデックスに戻る

現地踏査日:2010/06/24
記事編集日:2013/8/5
湯の原ダムを訪ねてみようという動機は2つあった。一つは我が市にある厚東川ダムや工業用水への興味が高まり始めた中、湯の原ダムもそこを起点とする木屋川送水路なる工業用水の取水口があり、厚東川系の工業用水道と比べてみたかったこと、もう一つはこの当時、毎週必ず埴生方面に出向く用事があり、アジトを早めに出れば平日の昼間に訪れることができる点にあった。
平日の昼間にダムを訪れたかった理由が後になって分かる

6月下旬の金曜日、私は埴生方面へのいつもの時間より2時間程度早くアジトを出て湯の原ダムを目指した。

---

山陽側から湯の原ダムを訪れるのは、下関市小月から北上する道がもっとも分かりやすい。道中で最初は国道491号を走り、菊川の街並みから先は県道34号下関長門線に入る。
しかし山陽小野田市方面から向かうなら、やや複雑だがいくつかの県道を伝って近道することができる。今思えばそう難しい経路ではないのだが、初めて通る道ばかりで無駄な遠回りを重ねてかなり時間をロスしてしまった。

菊川町の街並みを後にする頃、今回写真は撮っていないが、西部利水事務所(旧木屋川利水事務所)への案内看板に出会う。前の仕事時代には何度も目にして通り過ぎていた。看板通りに曲がるのは今回が初めてだ。

ほどなくしてダム堰堤と、独特なゲート室の並びが見えてきた。
道を挟んで山側に来訪者用の駐車場があり、木屋川に面して西部利水事務所がある。


初めて湯の原ダムを観て感じた印象がいくつもあった。
・新しい!
・ゲート室がデカい!
・低いけど幅が広い!
新しいのも尤もで、平成時代に入るまでここにダムはなかった。それまで木屋川にあったのは治水と発電目的の木屋川ダムだけだった。
かつてはこの場所の若干上流側に取水堰堤だけがあり、木屋川ダムで発電を終えて放流された水を取り込み、工業用水として送っていた。増え続ける水需要に応え、木屋川中流域の護岸が堅牢なこの地にダムを造り、治水を行うとともに木屋川の水を一定量貯留し、安定した工業用水の確保に努めている。

嶮岨な山間ではなく、木屋川のかなり中流域以下に位置するので周囲は開けている。川幅が広いのでダム堰堤は長い代わりに目も眩むほどの高さはない。それ故に開放的なダムといった印象がある。

帰りに西部利水事務所へ立ち寄るとして、さっそくデジカメだけを持ってダム堰堤に向かった。

ダム堰堤入口の横にダム名のモニュメントがある。
単純にダム名のみ刻まれていて、昭和期の記念碑には付きものだった山口県知事の名入れなどは見られない。如何にも平成時代らしきモニュメントだ。


このモニュメントからダムの斜路が見える。
滑り台みたいな角度で、高さはそれほどない。


ゲート室が湖上に張り出す形で完全に独立しているので、ダム堰堤の上は自由に通行できる。車線には側帯がペイントされていて歩道も完備しており、安心して歩けそうだ。


ダム湖側の様子。遠方にボートの格納庫らしきものが見える。
形の上ではダム湖になるのだが特に名前は付けられていない


道路側の垂直壁に水深標が貼り付けてあった。天端付近は27mという表示がある。
まさかそれだけの深さがあるとも思えないので、絶対高度だろう。ダムとしてはかなり低い数値である。


しかしダムである以上、相応な高さはある。
その高さが如実に実感できる場所がすぐそこにあった。

同じ場所から下流側を撮影している。
ここの部分だけ広く深い堀のようになっていて、全面をコンクリートで覆われていた。対象物が遠いので分かりづらいが、駐車場に停められた車のサイズからすれば、この垂直壁がどれだけ高いか想像がつくだろう。


この部分がどういう役目を持っているのかは分からない。先の航空映像で観ると、木屋川はここまではダム堰堤と同程度の幅を持っているのに対し、下流側は半分以下になっている。
増水したときはゲートを開けるのだろうが、そのとき少しでも効率的に水を排出できるように造られたのだろうか。
転落したら全身打撲でかなりエラいことに…ちょっと危険かも

ゲート室の様子。
小さめの支柱に直方体の建て屋が載っかった感じだ。さすがは平成時代に入って造られたダムだけあって外観からして新しい。


ゲート室の奥、左岸に水色の鉄格子を伴った設備が見えてくる。
木屋川送水路の取水口だ。

ダム堰堤の左岸接続部には、堰堤を挟んだ両側のかなり広い敷地が工業用水関連の施設で占められていた。
隣接して公園が造られており、河川に突き出た一角に東屋が見えている。


詳細は以下の記事に書いた。
派生記事: 湯の原ダム取水口
左岸まで歩いてきた。ここで振り返って撮影している。
ここにもダム名が陰刻されたモニュメントが据えられていた。


左岸には木屋川沿いに並走する市道があって、時折一般の車も往来していた。
市道に沿って歩く。暫くネットフェンスに囲まれた工業用水関連の設備群があり、その端に公園に向かう入口があった。


東屋の手前からダムの裏側が見え始めた。


東屋までやってきた。
公園を造る位だからさすがにここからの眺めは良好だ。ダム堰堤の裏側がすべて見渡せた。
平成3年完成なのでさすがに新しい。そこには古いダム特有な苔まみれの姿ではなく近代的なダムが在った。


ゲート室のみズームする。


フェンスで仕切られていて接近はできなかったが、ここに木屋川送水路の取水口があった。


工業用水関連の設備もダムに並んで興味の対象だった。そこで公園を出て再び左岸接続部付近に戻りながら写真を撮っていたのだが…
不覚にもバッテリー切れに…
替えのバッテリーなら持ってきている。まさかそんなに早く減らないだろうと思って車の中へカバンと共に残してきていたのだ。撮影を続けるなら一旦車まで戻らなければならない。何と手際の悪い…sweat

そう頻繁に来れるほど近い場所にあるダムでもないのだが、意外に固執せずアッサリと撮影を切り上げ、車に戻ることにした。

まあ、また来ればいいや…

当初の予定では、取水口だけでなく時間をかけて少し下流側まで追っていく積もりだった。この後には次のスケジュール(遊びなので少々遅れても大したことはないのだが)が控えていたし、そもそも道に迷ってタイムロスした時点で全部は無理だと感じていた。

車に戻ってバッテリーを入れ替えると、もうダム堰堤は渡らず周辺の題材だけ撮ることにした。何よりも利水事務所へ寄るべき重要な用事があったのだ。

(「湯の原ダム・初回踏査【2】」へ続く)

ホームに戻る