湯の原ダム取水口

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現地踏査日:2010/06/24
記事公開日:2011/12/16
6月下旬の金曜日、私は東へ向いて走る用事に託けていつもより早めにアジトを出て湯の原ダムへ来ていた。
詳細な背景などは以下の寄り道記事を参照頂きたい
派生記事: 湯の原ダム・初回踏査【1】
湯の原ダムには、厚東川ダムと同様に工業用水向けの取水口がある。私が最初にその情報を得たのは、以下の国土地理院の地図からだ。


湯の原ダムの左岸から水色の点線が伸びている。国土地理院地図の水色の点線は地表部に現れない導水管や暗渠を示すことになっているから、この時点で工業用水関連の送水路だと気付いていた。実際、その点線は高度を保つよう山裾をなぞりながら自身の木屋川を渡っている。
地図には「工業用水送水管」の文字も見られる
我が市の擁する厚東川1期導水路の経路踏査については、まだ完全に終わったわけではない。しかし私はその完全攻略を待たずして、他市の工業用水道はどんなものなのか、とりわけ厚東川1期導水路と比べて何が同じで何が異なるのか視察したいと考えていた。

私は湯の原ダムの堰堤を歩いている最中、左岸に取水口と断定できる設備を見つけた。大きなスクリーンが目立つのですぐそれと分かった。


取水口らしき内側には可動ゲートや移動用クレーンらしき設備が見える。内部に引っかかったゴミなどを引き上げるためのものかも知れない。


更にズームする。
ダム湖の左岸に取水口らしき鋼鉄製のゲートが見える。少し離れたところに公園が造られているようで、東屋が見えた。敷地の内部には入れないだろうけど、東屋のある公園から取水口に接近できそうだ。


ダム堰堤を渡ったすぐ上流側は、取り入れた原水の前処理をする設備群が犇めいていた。
しかしおおよそ一般の人には用事のない設備である。須く周囲はネットフェンスが設置され、近づくことはできない。


あの東屋まで行けば少なくとも取水口には接近できるとみて、上流に向かって伸びる道(恐らく市道)を歩いた。
何基ものバルブ群に隣接して、ダムのゲート室とあまり変わらない位の巨大な樋門があった。もっともフェンスで仕切られている上に道ばたの植え込みや雑草が茂っていてフェンスに接近するのもままならない。


公園には自由に立ち入りできて、その最も河川敷に近くダムの眺めも望める場所に東屋が建っていた。

裏側から眺めるダム堰堤の写真を撮影後、取水口に近づいてみた。
フェンスからカメラを構えた両腕を伸ばし、撮影できるのはこれが限度である。
もちろんフェンスを越えて…などという無謀なことは御法度だ


この瞬間にも取水されているのだろうが、取水口付近は吸い込まれるような流れはもちろん、水面の微動だに確認できなかった。もっとも湯の原ダムに堰き止められたこの貯水量からすれば、取水口へ向かっていく水に目視されるほどの動きはないのは当然だろう。

厚東川1期導水路では、企業局の設置したマイクロ発電機のタービンを回し、まだ余力のある水が豪快に緩衝池へなだれこみ山腹の導水隧道へ飲み込まれていく様子が観察できる。
これに対して湯の原ダムでは発電を行っていないし、それが可能なほどの落差もない。取水口から吸い込まれ、工業用水としての役割を担わされて出発する場所は、あまりにも対照的で静かだった。

公園を出て来た道を引き返す。
結局、公園側からも取水設備を撮影できそうなアングルが見つからなかったのでフェンスの網目越しに撮影している。工業用水向けと河川維持の放流分があるのだろう。何基もの樋門が並んでいた。


取水口のある建屋の前には、お馴染みの標識があった。


水利の目的は工業用水で、カッコ書きで”一部上水道原水の供給を含む”とされていた。
厚東川ダムも同様なのだが工業用水と書かれているだけである


許可年月日などの表記が白く塗りつぶされていた。
恐らく現在書類申請中で許可証が交付された時点で書き込むのだろう。
”木屋川利水事務所長”の部分も書き換えられるはず

水利使用許可証の立っていた表示板の反対側にこれがあった。
来るとき一度は見ていた。可動クレーンのようだが何のために使われるのかは分からない。


その横に何故かガードレールで締め切られた空間があった。
その標示には…
ん?
何故にティッシュ?
取水口付近だから何を捨ててもダメと思うんだが…


スクリーンをくぐった工業用水はダム堰堤の下を通ってこの敷地へ出てくる。敷地内では幅広の開渠になっていて、その先では何故か半分以下の開渠幅になっている。拡大対象画像です。
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クリックすれば元のサイズに戻ります。


この敷地へ降りてくる管理道があり、送水路はその手前から再び暗渠になっているようだ。
また、開渠を流れる水は緩やかで量もさほど多いようには見えなかった。

これは同じ場所を航空映像で眺めたものである。漏斗型の開渠部分がそのまま見えている。
暗渠とは言ってもこの近辺は殆ど開削工法ではないかと思う


少しダム堰堤側へ進み、下流側を眺めている。
ダム堰堤のゲートからの直接流下は行っていない代わりに、河川維持分だけを工業用水の取水設備から放流しているらしい。狭い垂直壁の間からジャバジャバと水の音が聞こえていた。
敷地と河川敷を仕切る垂直壁の高さは10m以上ありそうだ


その部分をズーム撮影する。
排出口はかなり狭く小さい。もちろんここから観るだけで、河川敷に突き出ている細く高いコンクリート壁など接近は全く不可能だ。


排出口の水はこの敷地から出ていた。
広々とした敷地は全面アスファルトで舗装されている。特に危険そうな場所や設備はないのだが、一般人には無用な場所だからか敷地内へ入ることはできない。


この敷地から出て行った送水路が管理道の下をくぐる部分を撮影したいと思った。その上を通る管理道までは行けそうだと分かっていたので、ちょっと寄ってみようと思っていたのだが…
不覚にもここでバッテリー切れに…
替えのバッテリーなら持ってきているが、車に置いてきたカバンの中だ。走って取りに戻ってまたここへ撮影に来るほど時間的余裕がなかった。
それで送水路の撮影は次回送りにして、バッテリーを入れ替えるために再び堰堤を歩いて戻った次第だった。

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帰りにダム事務所へ立ち寄ってダムカードを頂いたとき担当者と工業用水の話になり、私が工業用水関連の施設に興味を持っていることを察して特別に工業用水の制御室を見せて頂けることになった。
制御室見学の様子は「湯の原ダム【2】」に紹介しているので、該当部分に飛ぶようリンクで案内しておこう。

(「湯の原ダム【2】|ダム事務所制御室」へ続く)

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