長門峡発電所・榎谷取入口【1】

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現地踏査日:2011/11/13
記事公開日:2011/11/15
我ながら自省しているが、現地を踏査してから記事になるまでの期間が長すぎだ…sweat
特にこの夏開催された”ダム・森と湖に親しむ旬間”では、昼間の仕事が多忙な合間を縫ってダム・発電所見学を集中的にこなしたために未だに記事化が追い付いていない。

記事が増えるのはいいとして、この遅れ現象は私にも読者にも全くマイナスだ。読者はシーズンも過ぎた頃に今更的な記事を読むことになるし、私としてもあまりに時間が経ち過ぎると現地で起きた細かなことを忘れてしまう。詳細さが失われれば、どうしても写真の羅列とお座なりな解説となってしまい臨場感に欠ける。釣り上げたネタは生きの良いうちに料理すべしだ。

そういう訳で、今回は敢えて遅れている見学会関連をさておいて、最近訪問した一連の物件の記事化を先行させた。その理由はこの種のネタを好む人々の共感を得られるか自信がないが、個人的にはインパクトが大きく、いち早く記事化したい物件だっただからだ。

7月に阿武川ダムおよび新阿武川発電所の見学を終えた後、帰路で全く偶然に長門峡発電所を見つけて立ち寄り写真を撮った。
記事では長門峡発電所【2】において、阿武川から取水され生雲ダムを経由していると概略触れただけで、具体的な取水地や導水経路については追及しなかった。

このあたりの全体像は、次に示す特大サイズの国土地理院地図で明らかになる。
通常のブラウザ画面では表示しきれないので適宜マウスで操作して欲しい


地図には東西に伸びる水色の点線が描かれている。周知の通り、国土地理院では水色の点線は導水路水が流れる地下トンネルを示すことになっている。
その点線は長門峡発電所の山腹で水色の実線に変わっており、これが水圧鉄管であることを示している。

水色の点線を逆に辿ると生雲ダムの堰堤に到達する。そこから更に遡れば、導水路は山中で一箇所の折れ点を経てJR山口線渡川駅より500m程度上流の阿武川から取水していることが分かる。
地表から見えない導水路の表記は国土地理院の地図と言えどもかなり粗い…導水路の始点・終点は概ね正しいが途中の経路は殆どアテにならない

関連する設備群と一連の経路を眺めるために、阿武川の取水口および生雲ダムを訪れる計画をたてた。
なお、今回も実際の到達プロセスを序章、現地での撮影を第一章以下としている。取水口に到達したい方は、このリンクから第一章へ直行することができる。

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時期は11月中旬、踏査に向かうのは長門峡方面。そうなれば時期的にも場所的にも当然、紅葉見物が意識される。長門峡は県内でも有数の紅葉スポットとして知られる。

今回は取水口と生雲ダムを必須訪問地とし、時間があれば再度長門峡発電所を訪れようとも思っていた。しかしこの方面へ車で来ることなど滅多にないし、長門峡まで行きながら紅葉を観ないというのも勿体ない話だ。いくらテーマ踏査とは言っても近くに観たい名所があれば立ち寄るし、欲しいものがあれば買い物もする。
それで長門峡に立ち寄って紅葉の写真を撮る腹づもりで早めにアジトを出発していた。

ところが予想された通り、道の駅長門峡は駐車場満車の表示が出ていて乗り入れられなかった。それどころか付近は国道9号沿いの空き地の至る所に車が停まっていて、道を歩く人々は一路道の駅の方へ向かっていた。こんな状態では、車の置き場所を探すだけで大変な時間ロスだ。
私の知っている人の少なくとも2人がこの日に長門峡へ紅葉を観に行っていた…ただし時期が早く見頃はもう少し先になるらしい

遺憾ながら道の駅の前を通り過ぎ、一路取水口へ向かうことになった。

何処にあるのかあらかじめ地図で確認はできていた。

Yahoo!の地図でも”長門峡発電所”と表記されている。これは関連する設備を示すものであり、もちろん発電所自体ではない。
更に地図を航空映像モードに切り替えて拡大すると、川面に井堰のようなものが横断しており、取水口らしき一部も確認できる。航空映像のお陰で、一度も行ったことがない場所ながら、そこに在るものを想像しつつ現地へ向かうことができる。
こうしたツールの活用によってテーマ踏査が新しい種の娯楽になり得るという好例である

さて、この近辺は阿武川を渡る大きな橋が少なく、三谷まで国道9号を突っ走ると延々引き返さなければならなくなる。渡川の駅に向かう道に橋があるようだが、今回はそのずっと手前から阿武川沿いを走る県道311号を通ることにした。
後で生雲ダムを訪れるときも途中まで同じ県道を通るからだ。

さて、国道9号を左折して県道311号に入ってきたところである。
アジトを出てノンストップでここまで走ってきた…ちょっと一休みも兼ねている
上の地図では A地点になる。


県道311号が実直に阿武川の蛇行に沿って伸びているのに対し、国道9号とJR山口線は小さな峠を越えることによって蛇行部分をバイパスしている。

国道9号と県道との分岐点を振り返って撮影。
信号のないT字路だが、山口方面から来たとき道の駅長門峡を過ぎて左へ曲がるこれほどの分岐はないから迷うことはないだろう。
国道9号を渡川方面から走ると右折して県道に入るのが大変かも…


県道は阿武川に沿って走り、やがて一気に高度を上げた場所に三叉路がある。(B地点
県道311号はここで右折する。
いずれレポートされる生雲ダムへ行くにはここを直進することになる


車を停めて撮影するだけでなく、ちょっと降りてみた。

ここまで走ってきた道。
国道9号と袂を分かつと、阿武川に沿って急に山へ入ってきた感じがする。


阿武川へ近づいてみた。
道路から河川敷までこれだけの高低差がある。
ご覧のように山の木々はまだ紅葉というにはちょっと早い…


この分岐を過ぎると、県道は再び高度を下げて阿武川沿いに走る。
道幅は狭いが、離合にそう困難はない。もっとも通る車も殆ど無かった。


実はここC地点付近を通過するとき、山側へ向かう道を注意して見ていた。
先の地図では栃谷川と書かれている。この沢を遡行して車でも通れそうな道があれば寄ってみようかとも考えていた。

導水路は生雲ダムへ向かう途中2本の川の下を横断する。このうち栃谷川が削り取っている沢は比較的深く、これから向かう取水口付近の標高とあまり違わない…ということは、栃谷川との交点部分に導水路が地表部へ現れる部分があるのではと思われたからだ。

しかし結論的に言って杣道ならともかく、軽四でも進入できそうな道は見当たらなかった。
この近辺の地形がよく分からない…民家は川を避けて高台部分に集まっている…川沿いに車の通れそうな道があるものの何故か何処からも車が入れそうな道がない…

断定はできないが、恐らく普通に川の下を隧道で通っていて交差場所の特定すらできない公算が大きいだろう。
自転車隊だったら無理してでも交点近くを踏査していることだろう…

やがて視界が開け、のどかな田園地帯に出てくる。写真だけを見れば何だか全く別の場所を走っているような気がするだろう。(D地点
遠くに国道9号が見えている。


JR山口線の渡川第3踏切を渡り、県道は阿武川と山口線の間を走るようになる。(E地点


踏切を渡ってほどなくして、一目見てそれだと確信できるものが阿武川の河川敷に見え始める。岩だらけの自然な岸辺が目立つ阿武川にあって、コンクリートで塗り固められた構造物だからまず見逃すことはない。拡大対象画像です。
画像にマウスをかざすと拡大、ダブルクリックで最大化します。
クリックすれば元のサイズに戻ります。


目的の物件を前にして、県道に「水路をなおしています」の工事看板を見つけた。
写真には入れていないが、路肩に営業用の車が停まっていて現場監督員らしき人の姿も見えたので、私はてっきり今から踏査しようとする”水路”が改修工事中なのでは…と思った。


幸い工事中の水路とは、県道の雨水排水用側溝のことだった。その工事現場を過ぎた先に、今回のターゲットが県道の右手に見えた。
県道は対面交通で路肩にも充分に余裕があり、駐車禁止にもなっていないから車を置いて離れても大丈夫だ。(F地点


さて、現地に到達するのは全く簡単だったが、自分だけ観るならともかく記事を書くためにも分かりやすい形でデータ(写真や動画)を持ち帰る作業が必要だ。
それには意外な困難が控えていた。

(「長門峡発電所・榎谷取入口【2】」へ続く)

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