さて、現地に到着して観たいものはいろいろあったが、まず全体像を撮影しようと思った。
そこで戸惑うことになった。
取水口らしさを物語る外観に欠けること、全体が撮影できるアングルがないのである。
取水設備の敷地は県道に対してやや高くなっており、道路からだと内部が殆ど見えない。しかも見えるのは特徴のない直方体の建て屋とゲート室くらい…取水口は川の方にあるので当然と言えば当然だ。
せめて若干離れて少し高いとろこから俯瞰しなければ内部の様子がさっぱり分からない。
県道のすぐ裏手が斜面になっていて、少し高い位置をJR山口線が通っていた。あの斜面に上がれば取水口あたりまで見えるかも知れない。
その方へ歩こうとした矢先…
唐突だけど、ここでちょっと肩の力を抜いて おまけ動画♪
ちょびっとばかり鉄分を補充してください^^;
(斜面に向かおうとした矢先のタイミングだったので…)
[撮影時間: 13秒]
線路敷の斜面に立ってパノラマ撮影してみた。道路から直接眺めるよりはいくらかよく見える。

合わせてパノラマ動画撮影も行っておいた。
[撮影時間: 25秒]
車を停めている場所に正門がある。
その横に導水路へ向かう開渠があるらしく、2本足のゲート室が聳え立っている。河川側にあるのが取水堰と思われるが、ここからでは上部しか見えない。
敷地はすべて有刺鉄線付きのネットフェンスで囲まれている。しかし下流側の半分くらいは使われておらず、元からあったのか侵入したのか、雑草に混じって松の木が育っていた。
まずはこの設備の正門らしき場所へ向かう。
当然、無人化されている。
中国電力の設備には標準的なのだが、ネットフェンスに有刺鉄線が施されており護りは極めて堅い。
このような設備にはお約束な水利使用標識。
純粋に発電目的だけで取水している。
(管轄が山口土木ではなく防府土木建築事務所になるというのが面白い…)
ここからは見えないけど取水口と井堰の構造部が掲示されていた。
門扉に設置された銘板。
ここで初めて長門峡発電所という文字が出てきた。
榎谷取入口 という名称らしい。取水口ではなく取入口という表現が何だか馴染みのないものに聞こえる。
で、肝心の取水口…ではなく取入口の様子なのだが、フェンス下のコンクリート基礎が高くてよく見えない。
伸び上がってフェンスの網目にレンズをグリグリ押し込み、制限されたアングルで被写体を捉えればこの程度がやっとなのだ。
車通りの少ない県道とは言え、あまり妙な振る舞いをやっていると不審者扱いされかねない。もっとも敷地の中へ侵入してやろうなんてやんちゃ心は微塵も持ち合わせないので、これは自分は元より他の読者にも楽しんで頂くための取材なのだ…と自分を正当化して次のアクションを…
数枚前のパノラマ写真からも分かる通り、敷地は道路面より数十センチ高い練積みコンクリートで囲まれており、その上に基礎コンクリートがあってネットフェンスという構造になっている。更に中を覗き込むなら、基礎コンクリートに足掛かりを求める必要があった。
ネットの網目に手がかりを求めて基礎コンクリートの上に登る。ネットフェンスの上部は有刺鉄線の忍び返しが外側に突き出ているので、不用意に伸び上がると頭を引っ掻かれそうだ。
こうして撮影したのが次の映像である。

ゲートに向かう水の流れを撮ろうと、更に伸び上がってカメラを高く掲げた。
(落っことすとカメラが回収不能になるので当然ストラップを手首に掛けている)
スクリーン部分は管理橋を兼ねているのだろうか。欄干は全面コンクリートで側面の意匠が時代を感じさせる。

そのままカメラを右へ振った。
しかし県道の下をくぐって闇の世界へ入っていく坑口部分は、どうしても観ることができなかった。

これ以上はどうやってもムリだ。
道路面へ降り、ゲート室の方へ移動した。
操作室からゲートを昇降させるワイヤーが伸びていた。
ゲート室は2本のコンクリート脚に支えられており、横に昇降用の階段があった。
脚部分に銘板が貼られているが、道路からでは文字は読み取れない。
いやはや…デジカメは有り難い。
肉眼ではどう頑張っても読み取れないのだが、ズームで撮影すればすべての文字が容易に判読できる。
榎谷取水口ゲートとあった。
(なんだ…やっぱり取水口でも良いのかw)
撮影直後はデジカメの小さなディスプレイ画面で眺めるだけだから、どれほど撮れているかは分からなかった。
昭和60年製作とあるから、ゲート自体は改修されたのだろう。コンクリート自体が先に観たスクリーン付近に観た欄干よりずっと新しい。
こんな感じで、設備の一部は一応観られるのだがどこか物足りない。
もっと近くで観られないの?
ゲート自体は観察できるが、阿武川に接続されている取水口自体はまるで見えない。何処か接近できそうな場所がないか、下流側に歩いた。
松が植わっているだけの敷地にもう一つの出入口があった。
言うまでもなくフェンス門扉はキッチリ閉まっていた。
フェンス門扉を回避して敷地の裏側にある塀伝いに行こう…なんて考えは見透かされているようだ。
塀の外側にはトゲが露出した鼠返しがある。ここを通ってはいけないという暗黙のサインである。
河川敷へ降りれば話は早いが、この場所では絶対に無理だ。
一面が雑草の海。足元がどうなっているかまるで分からない上に、背丈以上の高低差があって登り直しも利かない絶望的な状況なのだ。
いや、至近距離まで行けなくても良いんだけど、せめてもう少し近くで撮りたいのだ。この物件の撮影目的で来た訳だし、何度も容易に来られる場所ではない。
(対岸へ移動することはもちろん考えた…しかしそれは今居る場所で可能なことを試した後と決めていた)
今度は上流側に歩いてみた。
正門の横に予備の発電機室があった。大して危険性はなさそうだが、フェンスだけは厳重である。
フェンスは発電機室までで終わっていたが、藪が続いていて踏み込める場所がない。
かなり歩いた先に漸く阿武川の方へ曲がる小道があった。
これを辿れば川面に降りられるかも知れない…
歩く距離がちょっと長くなりそうだが、偵察してくることにした。
(「長門峡発電所・榎谷取入口【3】」へ続く)