長門峡発電所・榎谷取入口【3】

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(「長門峡発電所・榎谷取入口【2】」の続き)

目的の取水口までは迷わず来れたものの、写真映えするアングルが得られず、もう少し近くで観られる場所を求めていた。特に取水口を眺めるために何処か河川敷へ降りられる場所がないか上流へ向かって歩いた。


ネットフェンスが切れた先も藪がずっと続いていて、降りる場所どころか見通しさえ利かない。

枝道を相当歩いてやっと降りられそうな場所を見つけた。
野焼きをした跡があり、近隣住民も訪れることがあるようだ。


河川敷へ降りることはできたものの、今まで歩いた距離の長さからどうも無理な気がしていた。
ここから汀に沿って相当戻らなければなるまい。

取水口がどのあたりにあるか確認しようとするも、西日に邪魔されてよく見えない。


ダメだ。遠すぎる。


取水口まで200m位離れている。いや、遠いのは別に問題ないのだが、護岸を伝って歩けるような状況ではない。

そもそも今カメラを構えている私がどんな場所に居るか…
足掛かりにしている岩の下はすぐ川面である。しかも高低差が数メートルあった。


歩いて接近できる余地まったくなし…
護岸は地山と言うよりは荒くれた岩肌だ。
この場所で阿武川がカーブしていて、川の水は気の遠くなるような年数をかけて護岸と河床を削ってきたようだ。
清澄な水ながら、川底が見えない位深い。取水口より上流側だから当然ではあるが、久し振りに底が見えない位に深く流れる自然の川を見た。
奥に見える古めかしい鉄格子付きの取水口は近隣田畑の灌漑用だろう


再びさっきの場所へ戻ってきた。
何処から行けるのか分からないが、遠回りでも対岸から接近するしかなさそうだ。


堰堤は露岩の目立つ場所でまで伸びていた。
対岸の斜面はなだらかな草地で、フェンスなどはない。到達さえできれば露岩を伝って堰堤上まで行けそうだ。


しかし、何処で川を渡れるの?
地図によれば、この近くで阿武川を横切る橋は最初通った県道、渡川駅付近、三谷駅付近くらいの筈だ。
迷わないように榎谷取入口周辺の簡易な地図を手帳にメモ書きしていた

いや…
地図では確認できないけど軽四くらいなら渡れる橋があるのかも知れない。
手帳のメモはYahoo!地図のものしか反映していなかった

さっき、上流に歩くとき道路にヒントがあったのだ。


偵察に歩いた枝道とは別にもう一つ右へ曲がる道があるようだ。
枝道ありの標識が出ているということは、車でも通れると考えて良いはずだ。


車に乗り込み、2つ目の「三叉路あり」の標識を信じて右に曲がってみた。

これは正解だった。
民家の間をすり抜けた先には車で渡れる橋があったのだ。


三谷まで遠回りせず川を渡れたのは我ながら良い読みだった。
それはいいとして…
せ、狭い…sweat


恐らく普通車でも通るとは思うが、本当に必要最小限な幅しかない。軽四でもかなり左右に気を遣った。
しかし地元の人たちは心得ているらしく、欄干やガードレールに擦った跡は見当たらないのは立派だ。

正面の道は国道9号である。
この橋を渡ってすぐ左岸に沿う農道があったので、国道には出ず行き止まりを覚悟で乗り込んだ。
農道は小高い丘に突き当たったところで左へ曲がり、結局国道9号に合流していた。

丘に遮られて取水口がどの辺りにあるかまるで分からない。ただ、それほど遠いとも思えないので農道の端の邪魔にならない場所へ車を停めた。


自分の現在位置を確かめようと、正面の丘を登った。
丘の上に広がる畑の端を通ってこんな場所に出てきた。


国道がこの丘を掘り割って分断していた。丘には畑と民家が広がり、中央に地区道が通っていた。川はこの丘を避けて蛇行しているようなので、地区道の端まで歩くことに。
踏査時のお約束だが地区道沿いにある民家の犬に吠えられた

そして漸くこの眺めを得た。
白い直方体の建て屋がゲート室だ。こんなに離れたところまで来ていたのか…


後から分析すれば、車を停めたのは概ね以下の地図の中心点付近である。


何とも苦戦したが、もう大丈夫だ。
左岸までは目の前のコンクリート坂を下ってまだまだ先だ。歩いて行くことはない。車を連れて来よう。
農道の変なところに車を停めていて邪魔にならないか気掛かりというのも理由にあった

地区道を引き返して歩き、跨道橋を渡る途中、しばし国道9号を眺めた。

本物件とは無関係なのだが、子どもの頃、正月に津和野の太鼓谷稲成神社参りで必ず通った道だ。殆どの人には何の脈絡もない国道の景色に過ぎないが、渡川のこの直線部分は子どもの頃から記憶に焼き付いていた。
大雪の年明けにこの区間で親父が前のノロい車を追い越した…反対から大型トラックがやって来ているのに路面が凍結していて元の車線に戻れない…という恐怖を味わったのもここだ
その道を今歩き、この場所から撮ることになろうとは…
右側の下っていく道が国道を横断して更に左側へ降りる道の先に車を停めていた拡大対象画像です。
画像にマウスをかざすと拡大、ダブルクリックで最大化します。
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車に戻り、この跨道橋へ乗り入れて先のコンクリート坂を下った。
農道は堰堤のかなり近いところまで伸びていた。


振り返ったところ。
実に長閑な田園地帯で、車が乗り込むなんて場違いもいいところな感じだ。
犬が吠えていたあの民家の方はどう思われたことだろう…


さて、ここから歩いてすぐなのだが…
何か最後の最後に厄介な難関がありそうな気がした。


鉄格子っぽい簡素な門扉だが、来訪者向けの表示板が取り付けられている。
いや…もう勘弁してよ。
やっぱりここって来てはいけない場所なのだろうか…
まさか護岸の農道が私有物ということもないだろう。川面には誰でも接近できるはずだ。

内心、密かにこんなことを唱えつつ接近していた。
ダメって言われても通るからね^^;
(「長門峡発電所・榎谷取入口【4】」へ続く)

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