見初変電所【1】

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現地踏査日:2012/5/9
記事公開日:2012/5/24
見初(みぞめ)変電所は恩田地区の市道恩田八王子線沿いにある中国電力の変圧設備である。
桃山にある宇部変電所に対して下位の変電所で大口需要家向けの2経路の高圧線と一般家庭向けの降圧された経路の出発点となっている。

地図で変電所の位置を示している。


変電所は南北に伸びる対面交通の市道恩田八王子線に接しており、この道を挟んで東側が恩田町、西側が笹山町になる。しかし変電所の名前は「見初」という現在の地図上には現れない地名が冠されている。
すぐ後でその理由を知ることになる

5月の上旬と中旬のこと、幼少期の想い出が随所に詰まっている市道恩田八王子線の走破に併せて見初変電所にも立ち寄って市道側からの写真を撮ってきた。
青空の広がっているのが上旬、曇り気味なのが中旬の撮影である
自分としては見初変電所は裏側からの遠景に馴染みがある。かつて住んでいた家が変電所の裏手に位置していたからだ。詳しいことは後半部分で写真と共に言及することにしよう。

恩田交差点より市道を走っていると、通常の電信柱よりも太くてごつい鉄骨が見えてくる。


変電所の建屋が分かるように市道の反対側から撮影している。


後で説明板でも解説されている通り、見初変電所も他の変電所と同様無人であり、善和にある集中監視所より遠隔制御されている。
建屋には市道側に窓がいくつかあるが、締め切られていて中は何も見えない。
かつては市道から橙色のランプが点灯した薄緑色の機器が窓越しに見えていた

恩田交差点寄りに通用門があり、その横のフェンスに変電所の説明板が設置されていた。


この説明板は割と最近(とは言っても何年も経っているかも知れない)設置されたものの筈だ。今回訪れて初めて気づいた。


変電所には白いケヤリムシのような巨大な碍子や、灰色にペイントされた変圧器が並んでいる。それは一種独特な形状で、特に変圧器は四六時中独特の電気音を放っている。馴染みがないだけならともかく薄気味悪いとか電磁波の影響が怖いというイメージを持たれがちだ。このような変電所が家の近くに存在すること自体を忌避する人もいる。
後から設置された「見初変電所について」の概要板は、一見分かりづらい変電所の持つ役割を私たち門外漢にも示し理解を求めるためのイメージアップ対策だろう。

変電所の変遷もだが、これとは別に興味深い説明書きがあった。
見初変電所という地名に現れる「見初」の由来に関する記述である。


説明板に示される通り、見初変電所はかつて東見初炭坑や周辺工場向けの電力を供給するために建設されたらしい。時代が下り、炭坑時代以降に今の場所に造られたなら恩田変電所という名称に落ち着いていただろう。
東見初炭坑は明治期に創業し、昭和31年には重工業需要に応えて坑道を拡大している。これには見初変電所のお陰を受けていたのではと想像される。そして昭和41年には閉山されながらも変電所は見初という当時の歴史ある名前を引き継いだまま現在も稼働している。[1]

恩田地区周辺をはじめとする一般家庭向けの給電のほか、現在も大口需要家向けに2系列の鉄塔で電気を送っている。手前の1回線鉄塔は東芝中にある鉄工所に、奥の2回線鉄塔はJR宇部線向けの宇部岬変電所に向かっている。


見初変電所を出て最初に建つ2回線鉄塔は、つい最近何らかの保守工事が施されたようだ。
これは現在の鉄塔である。碍子部分に金具らしきものが取り付けられているのだろうか…碍子に鳥が留まっているように見える。


これは2週間前に撮影された同じ鉄塔だ。
全体に飛散防止ネットが被せられていることから、送電を停めて作業していたらしい。


「碍子に鳥が留まっているように見える外観の金具」は、恐らくそのままズバリで鳥が留まることによって起きるショートなどの事故を防ぐためのものではなかろうか。
周辺の腕金も鳥が留まりづらいようにトゲが目立つ形状になっている


さて、見初変電所の構内に目を移すと…
変電所の周囲は今ではすっかり民家やアパートの駐車場などに包囲され、容易に近づけない。


市道に面して作業用車両の出入口がある。
当然施錠されているが、門扉の前までは行くことができる。
手前を横切っている溝部分に一般家庭向けの電力線が通っている


門扉の上部には有刺鉄線が張り巡らされ、門扉自体は非常に細かな網目で出来ていた。


フェンスの網目の細かさは、これまで訪れた変電所にはない特別仕様だった。このためカメラのレンズを押し当てても巧く撮影できない。
先ほど見えていた駐車場に立ち入れば粗いネットフェンス越しに撮影はできるだろう。しかしどう見ても私有地の匂いプンプンな駐車場へ入るわけにはいかなかった。

このフェンスが直接的な理由ではないが、幼少期この近くに住んでいながら、この場所から変電所を眺めた記憶が殆どない。特にカメラを構えたのは今回が初めてだ。
幼少期から鉄塔や変電所などの設備に興味はあった。しかし変電所の前を自転車で通ること自体そう多くなかったし、立ち止まってじっと眺めていれば侵入を企てている悪ガキに思われそうな気がしていたからだ。

このごつい鉄骨の塔には記憶がある。昔からこの場所に建っていた。
周囲が狭くワンショットでは全体像を収めきれない。


下部構造を撮影。自転車に対してこの程度の大きさである。
もちろん接近できないようにフェンスで囲まれていた。


変電所の敷地内から伸びるケーブルはこの鉄骨の真下まで地下溝に格納されており、ここから引き上げているようだ。
上部を覆う蓋が木製の板というレトロさが面白い


この通用口を横切る形で地下溝が設置されて、フェンスの内側まで伸びていた。


変電所内部の精密な写真が一枚もないというのも様にならないので、駐車場の端の粗いネットフェンス越しに撮影してみた。
敷地内の変圧器まで伸びる地下溝が見えている。拡大対象画像です。
画像にマウスをかざすと拡大、ダブルクリックで最大化します。
クリックすれば元のサイズに戻ります。


建屋の裏側まではフェンスの網目に自由なアングルを邪魔されて巧く撮影できなかった。


ここまで撮影した後、市道の先にあるもう一つの通用門まで自転車を押し歩きした。

(「見初変電所【2】」へ続く)
出典および編集追記:

1.「Wikipedia - 東見初炭坑

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