錦川第一発電所【2】

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(「錦川第一発電所【1】」の続き)

車を停めた敷地まで戻ってきた。次は発電建屋の観察だ。
機器の搬入搬出口だろうか…シャッターの下りた出入口が2箇所あった。


出入口の前には何かの跡だったと思われる石材が配置されていた。
階段の跡ではないらしい。何だろうか…


そう言えば壁面から入口の上部まで施された装飾が時代を感じさせる。小さな部分だが凝っていてまるで銀行の入口のようだ。
今の時代ならまずこんな装飾など施さないだろう。


かつては技術者が常駐していたであろうこの建屋も、元から一般向けな建物ではない。少なくとも銀行のように一般庶民が出入りする場所ではないなら、機能一点張りな造りにしてコストダウンを計れただろう。しかし昭和期はそうではなかった。
人目につきづらく、現在ならどうでもいいと見なされがちな部分まで装飾を施すものだった。そこには昭和期のモノ造り師としての矜恃が感じられる。短期で機能一点張りな商用建物をサッと造り、一稼ぎできたから…と取り壊してしまうスクラップ・アンド・ビルドな平成の今の世には有り得ないことだろう…

隣接してもう一つの出入口と通用門らしき小さな扉があった。


老朽化したからか、さすがに扉は事務所にありがちなアルミ扉に置き換えられている。しかし庇部分に見られる古めかしい装飾は当初のものだろう。


当然ながら扉は施錠されていたし磨りガラスで中は見透せなかった。ガラス部分にはノイズ防止のため電源を入れた携帯を持ち込まないようにとの注意書きが貼られていた。

壁面に取り付けられたステンレス製フードは建屋内部からの温風を吐き出していた。
これも後付けの設備だろう。
吹き出し口には網がかかっていて中は覗けなかった


建物の横を歩いて水圧鉄管のある場所に向かう。
車でこの敷地に入ってくるときチラッと見えていた。


この水圧鉄管とは別に、車で進入するときには気が付かなかった奇妙な構造物を見つけた。
それも気になるが…後回しにするってことで、まずは水圧鉄管とご対面だ。


殆ど垂直落下に近い水圧鉄管!!


建屋の背面にあるコンクリートの台座からは二条の水圧鉄管が伸びていた。山の斜面を下っている鉄管は一条なので、この台座部分で分岐させている。建屋に発電タービンを2基備えているのだろう。
二条に分岐しているだけに水圧鉄管の径はやや細くなっている。そのせいか遠目には巨大なプラスチック製の雨樋が伸びているようにも見える。

有刺鉄線付きのネットフェンスには些かツッコミどころのあるお願い掲示が出ていた。


「長い棒を振り上げたり…」「タコ揚げをしたり…」というのは、いずれも高圧線が上空に通っている場所向けのものだ。更に決定的なのは「この変電所は無人変電所ですから…」のあたりとか…^^;
この柵のすぐ内側は変電所ではなくまさに電気を作っている場所である。立入禁止の意を伝えるために変電所向けの標示板を流用して貼り付けたのだろう。
今の時代子どもたちはタコ揚げなんてしない…それ以前に子どもがどれだけ住んでいるのだろうか…

発電建屋に引き込まれる直前だけ水圧鉄管が急勾配となっている。水が流れ込む勢いで発電と言うよりは、落下させているに等しい角度だ。
どんな塩梅で発電機が設置されているのだろうか…


フェンスの網目が細かいので撮影に苦労した。カメラで広範囲を写すことができない。
水圧鉄管が発電建屋に突き刺さっている部分がどうなっているか観たい…


網目にレンズを押し付け更に少し建屋側に動かす。
建屋の前に渡り廊下のような通路があり、水圧鉄管はそのずっと下の方まで潜り込んでいた。


水圧鉄管の接続部分をズーム撮影。
バルブのようなものが見える。あれを手動で操作することがあるのだろうかと思う。


フェンスの前で動画撮影した。
水圧鉄管を流下する水の音よりタービンの回転音の方が凄い。

[再生時間: 18秒]


発電建屋は3階建て相当で、最上階には排熱用のダクトが見える。
表からは見えない壁面すべてに同じ装飾が施されているのが興味深い。


それほど時代を物語る歴史的な建物でありながら如何にも勿体ないと思うのは、このデカデカとした企業イメージペイントだ。
建物全体をベージュ色でペイントし直し、道路から見える側面にイメージマークを描いている。


発電建屋の随所には造られた当時を偲ばせる装飾が観られる。それらの形状は失われてはいないのだが、重厚なイメージが軽々しいベージュ色のペイントで隠されてしまっている。当初は塗装されていなかった筈だ。
更にはEnergiaの文字と企業ロゴが痛い。もっともこの企業ペイントがあるからこそ国道側から目立つとも言えるのだが…

思えばターゲットを写すことばかりに熱中して周囲を記録していなかった。
この水圧鉄管の前からざっと周囲を眺めた景色だ。


この近辺には意外に民家が多い。川の両岸に数軒ずつ存在する。地方部の民家に特有な赤茶色の瓦が目立つ。
一段高い場所にある黄色のガードレールが国道434号だ。ここからガードレールが見えるので、国道からもこの建屋や水圧鉄管を一瞬観ることができる。


更に上流側へカメラを振っている。
黄色のガードレールが菅野発電所に向かう道、下は八坂神社とその奥の集落に向かう道である。


さて…
進入路を車で通ったときには見過ごしていた謎の物体を検証しなければならない。
このコンクリートの円筒柱である。


フェンスで囲まれているから、これも発電所に関連ある構造物であることは確からしい。しかし正体が何であるかは見当もつかなかった。

正体を推測できそうなものがないか、謎のコンクリート柱に近づいてみた。

(「錦川第一発電所【3】」へ続く)

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(状態:執筆中)

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