錦川第一発電所・取水口【1】

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現地踏査日:2012/7/25
記事公開日:2013/8/22
時系列では「向道ダム・初回踏査」の続きとなる。(但し現時点ではまだ記事化されていない

生活半径の小さい自分にとって周南市はそう頻繁に行ける地域ではない。森と湖に親しむ旬間で開催される見学会がなければこの方面に来るあてはない。それで可能な限り近隣区域にある物件を訪れるために効率的なルートを考えていた。

向道ダムの次の候補地は、国土地理院の地図で導水路の取水口と思われるこの場所だった。


ここから山の方へ伸びる水色の破線を辿ると、菅野ダムの下流にある錦川第一発電所に到達する。その発電所は国道からも対岸に見えるので早くから知っていた。
取水口は向道ダムによって堰き止められた向道湖の上流側を辿り、最初に湖上を横切る橋のところである。
幸いこの場所は航空映像の拡大モードで閲覧できる。


橋の左岸に建屋が3棟見えているし、橋そのものにも何かの付属設備があるらしい。この日の踏査ルートですぐ前の国道315号を通るので立ち寄ってみなければなるまい…

記事化が一年も遅れてしまった上に期待外れの結果となりそうなので早めに予防線を張っておくと、ターゲットである取水関連の設備はそれほど興奮を呼ぶものではなかった。むしろ取水塔に付随する構造物の方が興味深いかも知れない。

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さて、橋に向かう国道からの分岐箇所である。


こう書けばスンナリ事が運んだように思えるが、実際ここへ差し掛かったときは運転しつつ瞬時の判断を求められた。航空映像で分かるのは橋の位置だけで、車で渡れる橋かどうかが現地を見るまで分からなかったからだ。

最初にこの場所へ差し掛かったとき、車では入れないとみて一旦通り過ぎた。この分岐路の手前に車を停め置けそうな場所を見つけていたので、そこへ戻って歩こうと思った。
ところが国道315号のこの近辺は意外に交通量がある上に後続車をやり過ごせる場所がなく、かなり先まで走らされることになった。
安全に転回できる場所で路肩に寄って後続車をやり過ごし、Uターンしここへ戻ってきた。

分岐路は軽四ならどうにかなりそうな幅である。侵入禁止などの標示板も出ていなかった。
橋の袂に水利関連施設にはお馴染みのものが見えている。


何という花だろうか…失念したが薄ピンク色のあまり見かけない花が美しい。
反対側からも入れる道があったが歩行者限定の通路だった。


この場所で間違いないと確信できる水利使用標識。
中国電力が発電目的で取水していることが分かる。


さて、国道からも見えていた橋なのだが…
何ともけったいな橋だった。


異様に狭い!


外側は鋼製のトラス橋でありながら歩く部分は木製である。橋の上部には道路標識みたいなものが一応設置されている。しかし数字も読み取りづらいほど日焼けしていて今も有効なんだろうか…と思えてくる。普通車でこの橋を渡れるか否か…「そんなの見りゃ分かるだろ」状態だから国道側に規制標識が出ていなかったのだろう。
この分岐路へハンドルを切らなくて良かった。一旦入り込んだら転回しようもなくバックで国道まで出なければならないところだった…

橋に欄干はない。トラス部分だけでは隙間だらけで心許ないので横方向に数本細長い鋼板を架けている。
足元は木製の板を横に並べて同様に鋼板で繋ぎ止めた構造だ。


トラスの1スパン分は木の板を並べて橋脚のある部分はコンクリート製だ。 木材、鋼板、コンクリート…3種混合の橋である。
そんなのアリ?市街地住まいの自分には軽いカルチャーショックを覚えた。


さて、橋に見とれてしまったが肝心の取水塔は…
やはり航空映像でも見えていた通りだった。


ちょっと身を乗り出して写してみた。
この狭い橋の途中に渡り廊下の分岐があって取水塔に繋がっている。


あの黄色く見えるものが沈んでいるところに取水口があるのだろうか…
壁面に可動ゲートがあるらしくガイドに沿って動くレールが見える。しかし水の動きは観察できなかった。


取水塔に接近することは…できないだろう。渡り廊下に向かう前から分かっていた。


取水塔の手前から有刺鉄線付きのネットフェンスが設置されている。門扉には立入禁止の札も出ていた。


「錦川第一(発)」の文字が見える。間違いなくここが錦川第一発電所の取水塔と確認できた。


門扉の内側を写そうと頑張ったのだが、フェンスの網目はなかなか細かく思うような撮影アングルを設定できなかった。
もっとも網目越しに見えるのも外からは何も分からないただの塔だった。


渡り廊下部分も橋本体と同じ木材を敷き詰めた造りだった。


この造りからして、橋の成り立ちが何となく想像された。
元々は中電が取水塔の管理用に架けた橋で、
一般人も通れるようにしているのでは…
橋自体は中電のものと思う。何故なら取水塔への渡り廊下と本体が同じ造りだからだ。市や県が架橋したなら、もう少し安全でしっかりした造りの橋にするだろう。
橋を渡ってここに来るまでの間、歩行者の通行禁止などの制限はいっさいなかった。元々は中電の橋だが、取水塔への立ち入りだけは厳重に防いだ上で、一般人に開放しているのだろう。実際、この橋が渡れなければ約3km上流にある二俣橋まで遠回りしなければならない。生雲ダムの堰堤上を一般人が通行可能にしているのと同じ状況と思う。

この渡り廊下部分を少し過ぎるとダム湖の水が及ばない陸地になっていた。
進行方向右側、即ち下流の向道ダム側に奇妙な構造物があった。


これは一体何だろう?
直径1mちょっとのコンクリート柱の上に座布団のような何かが蓋をしている。橋の下でもちろん到達不可能な場所だ。
この下を導水管が通っているのでは…


対岸へ着くあたりから振り返って取水塔を撮影している。
こちら側にも取水口があり、スクリーンが露出している。


ゴミの流入防止の網場の隙間からダム湖の水が流れ込んでいるのが見えた。
この取水塔に吸い込まれた水がどういう経路を取るものか想像がつかない。


取水塔は明らかに向道湖の中に建っている。この位置から取水して導水路に送るなら、導水管は向道湖の底より低い場所を通す以外ない。その分だけ送水高度を損失することになる。岸辺に取水口を設置しなかったのは、用地取得の制約があったからだろうか…

この造りなら、対岸にも何か関連設備があるだろう。網場とスクリーンで仕切られているだけで、細かなゴミならすり抜けてしまうからだ。
まずは橋を渡り切って対岸にあるものを調べようと思った。

(「錦川第一発電所・取水口【2】」へ続く)

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