錦川第一発電所・取水口【2】

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(「錦川第一発電所・取水口【1】」の続き)

航空映像の通り、対岸には数軒の平屋があった。しかしそれらは取水口関連の施設ではなく一般の民家らしかった。


左岸から見た橋。
そう言えば親柱などは何もなく橋の名前や竣功年は不明である。


こちら側は標識が樹木に隠れておらずよく見える。
指示事項の多いこと…重量は2t以下、幅1.7m以下、高さ2.1m以下、そして滑りやすいから気を付けろと…


取水塔そのものに接近できず大した成果が得られない中、如何にもけったいなこの橋に興味が向いた。

特にこの一番右側の表示。「(車両は)滑りやすい」とはどういうことだろうか?


大体、歩行者か精々原付などの二輪が通る橋である。「滑りやすい」の表示を出す意義が感じられない。床面が板だから、冬場は凍結すると自転車などは確かに滑りやすく注意が必要だろうが…


何だか如何にも無意味な標識だ。標識板の日焼けようからして、遙か昔に中電が任意で橋の上部に取り付けてそのままなのだろう…

…などと一人勝手に思っていた。

=== その直後のこと... ===


先にみた民家の前を通って一台の軽四がこちらに向かってきた。このとき私は左岸から取水塔を撮影できるアングルを探そうと橋から離れた位置に立っていた。
私はこのまま車が左岸を伝って向道ダムがある方へ進むものとばかり思っていた。

ところが…

嘘だろっ!!


私の車に似ているが、撮影のためにこの場所へ停めたのではない。中にはちゃんと運転手の姿も見える。
その車は全く何の躊躇もなくここで右に曲がり、あの狭苦しい橋に向かって行ったのである。
ええっ?
ホントにここ車が通るの?
…って言うか、通れるの?


その車は別に恐る恐る橋を渡っている風ではなかった。あたかも日常茶飯事であるかのように適度な緩速走行で鉄カゴの如き橋の中を進んでいた。

唖然として見送りつつもついカメラを向けてしまう私…
ナンバーが分からないよう充分に離れた後で撮影…特別出演ありがとうございました


この光景は、私にとって取水塔の観察と同程度にスリリングだった。どの程度の通行頻度があるかは分からないものの、中電が取水塔管理用に架けたと思われるこの奇妙な狭い橋は、地元住民の車も通る重要な橋になっていたのだった。

あの軽四が通れたのだから自分の車でも間違いなくクリアできる。しかし…とても試してみる度胸はない。狭いだけならまだしも両側は鉄柵状態だ。ちょっとでもハンドル操作がブレたら絶対ドアを擦る。ドアを開けられない幅だから橋に入ってしまえばとにかく前を向いて走る以外ない。万が一、橋の真ん中あたりで向こうから同様の軽四と鉢合わせになってしまった暁には…想像するもおぞましいsweat
まぁそうなる前に渡って来そうな車の気配を見た上で進攻するだろう…

肝心の取水塔は影が薄くなってしまった。
あちこち移動したものの左岸の岸辺下に茂っている低木が眺めを遮っていた。


藪をかき分けるようにズーム撮影。
スクリーンの向こうには隧道のポータルを思わせる取水口が微かに確認できた。


導水方向は現在いる左岸側なので、取水塔に吸い込まれた水は反転してダム湖の底を通ってこちらへ向かっている筈である。一体どの経路を辿るのだろう…

上流側に怪しい建屋がある。ここを通っていそうな気がする。


一段高いところにスレートの平屋が見える。
フェンスで囲まれていることから関連設備に違いない。


向道ダム方面への左岸の道はチェーンが張られ通行止めになっていた。
なるほど…ここまで来た車は否応なく橋を渡る以外ないわけだ。


接近は可能だが…多くを期待できなさそうな気がした。


古めかしいコンクリート階段の先は有刺鉄線付きのフェンス門扉。窓にはブラインドのような目隠しが下ろされている。
外から眺めるしかない。


門扉には第二取水塔という標示がされていた。


第二取水塔とあるので、建屋の下にゲートがあると想像された。
しかし資材置き場になっているだけで取水口らしき設備は見当たらない。


隣接して奥にもう一つ同様の建屋があった。取水設備があるのは奥の方かも知れない。
フェンスに沿った土手は草まみれで進攻意欲が萎えた。


建屋はダムの方へ向かう道より4mくらい高い敷地にあった。
複数ある窓もすべて目隠しされていて内部は窺えそうにない。


車両が通れないだけで歩いて先へ進むことはできた。
しかし今まで見てきた状況から得られるものがないとみなして進入しなかった。


この建屋は単なるコントロール室か何かだろう。取水量の変更などの操作は中央制御室と現地の双方で行えるようになっているからだ。
国土地理院の地図では、取水口は橋よりダム側の岸辺に記載されている。


岸辺に面して取水口があるのかも知れないが、直接降りることはできず確認できなかった。

地図によれば、この取水塔を経て導水路は一旦長い隧道に入る。それから菅野湖に沿って進み、途中はいくつもの沢を横断するような経路を取っている。しかしここから直接車で行ける近道はなく、今回の予定にも入っていなかった。この日は他にいくつもの踏査予定地が控えていたので、これ以上現地で得られそうな情報がないと見て引き返した。

次回ここを再訪することがもしあるなら、そのときは…
あのギリギリな橋にチャレンジしてみようか…
多分無理だ…度胸がない^^;

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時系列ではこの後「金峰取水路・朴取水口」へ続く。
書き上がり次第リンクで案内する

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