位置を地図で確認しよう。
広域地図では、隣接する敷地に中国電力火力発電技術センターという表示が見える。しかし当然あると思える宇部火力発電所という表示は(拡大表示にしても同様だが)地図中に見あたらない。
実は記事を書き進めるにあたって、この辺りの情報を集めて再確認する作業が必要だった。変電所に隣接する埋め立て地には巨大な建物や煙突があり、中国電力所有の火力発電所があるだろうと考えるのが自然だからだ。
まず、かつて存在していた火力発電所として新宇部発電所という項目が見つかった。1990年に老朽化に伴い廃止されたとある。
「Wikipedia - 新宇部発電所」
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%AE%87%E9%83%A8%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80)
地図に表示されるので技術センターという施設は今も存続しているが、少なくとも中国電力直営の火力発電所は存在しないことになる。その代わりになると思われるのが宇部興産(株)によるユービーイーパワーセンター発電所で、2004年より営業運転を開始している。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%AE%87%E9%83%A8%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80)
「Wikipedia - ユービーイーパワーセンター発電所」
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80)
宇部興産が電力事業に参入し、自前の火力発電所を造るという話は聞いたことがあった。しかし広大な埋め立て地に造られたあの設備の規模からして、中国電力の設備を買い取って直営で電力卸供給を行っていると思っていた。上記の項目には「発電所は宇部ケミカル工場内に建設されている」とあるので、同じ設備を継承して使っているわけではなさそうだ。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80)
(あるいは西沖の山もケミカル工場の一角になるのだろうか…)
かつてはここにあった火力発電所で造られた電力を大口需要家に供給していたのだろうが、現在では逆に宇部興産の工場群から厚東川を渡ってここ西沖の山へ送電し、西宇部変電所を介して各方面に供給しているのかも知れない。
いずれにしろ本記事および後続の記事では、西宇部変電所と明示されている設備と周辺から容易に観察できる物件しか訪れていない。言うまでもなく部外者は旧火力発電所の建屋には接近できないので、潜入レポートめいたものを期待しないで欲しい^^;
今まで訪れた他の変電所と異なり、西宇部変電所は公道に面しておらず、最も近い市道馬渡橋西割線の起点から暫く企業群の所有管理する通路を進んだ奥にある。それらの経路中に見えるものも含めて、今回実際に通った湾岸線からの眺めも含めて序章とし、現地での撮影を第一章に割り当てた。前振りを飛ばして西宇部変電所だけを観たい方は、「西宇部変電所【1】」からお読み頂きたい。
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かつての火力発電所関連の施設は、去年通れるようになった湾岸道路の厚東川新橋から見える。
宇部湾岸道路は自転車では西中町から入ることはできないが、市道厚東川東通り線を経由して厚東川新橋からなら渡ることができる。
厚東川の東岸にはケミカル工場群が見える。厚東川を挟んで対峙する紅白鉄塔は、確かに航空映像には見つからずここ最近建てられたものらしい。
横断鉄塔は1スパンが離れているので、通常の鉄塔より高く頑丈に造られている。
奥に見えるのが恐らくかつての火力発電所建屋で、厚東川に沿って別の送電経路が伸びている。
これから訪れる西宇部変電所はあの鉄塔群の集う場所にある。
地図で示される通り、直線距離ではここから近いのだが、厚東川の右岸に沿って海側に向かう道(市道馬渡橋小島東割線)を進んでも馬渡橋まで迂回しなければならずあまり近道にならない。そこで今回も湾岸線を直進し、市道馬渡橋西割線を経由することにした。
県道交点に至るまでも火力発電所が見える。
市街部に送電する経路は西宇部変電所で昇圧され厚東川に沿って伸びている。
馬渡川を横断する一基の鉄塔だけ鉄骨が箱形で、碍子も2個で1本のワイヤを支持するいわゆる「V吊り型」となっている。
(中国西幹線では普通に見られるが市内の単独鉄塔では恐らくこの一基だけと思う)
この経路は湾岸道路を横断し…
まるでパソコンで作成しコピー&ペーストしたかのような同一の耐張型鉄塔が北へ伸びている。
(一連の鉄塔群は最初すべて箱形構造だったはず…平成期に嵩上げされ建て替えられた)
これだけ3年前に撮影した画像である。
湾岸線が新中川橋を渡って県道に接続する付近で、正面に小島新樋門が見える。
さて、途中を省略するが市道馬渡橋西割線へ到達したところで左折し道なりに進む。最後に馬渡橋を渡って西沖の山側に到達する。
この過程で馬渡橋に立ち寄り、詳細な写真を追加撮影しておいた。
派生記事: 馬渡橋
馬渡橋レポートの時系列ではここからスタートとなる。
市道馬渡橋西割線の起点はここにあり、橋を渡って右側は宇部興産(株)の作業用通路となっていて一般の通行は不可、左側は通行禁止ではないものの認定市道ではなく、恐らく利用する企業の管理になっている。したがって一般人がこの方面へ来る用事はまずない。
私自身がここを訪れたのは初めてではなく3年前に一度通ったことがある。2度目に馬渡橋を訪れたときのことだ。
変電所とは無関係だがちょっと変わったことがあった。
道路に沿って朱色の鋼管が延々連なっており、この道の下をくぐって埋め立て地の高台に伸びている。
横に立つ工事看板の説明によれば、この鋼管は港湾内の浚渫土を圧送しているものらしい。大きな船が接近できるようするための浚渫で、国土交通省および宇部港湾発注の工事となっていた。
この辺り馬渡橋の護岸は高く、海は直接見えない。対岸に湾岸道路からも眺められたV吊り型の鉄塔が見える。
道に沿ってフランジ管が延々と伸びている。
(所々ボルト締めではなくジョイントがゴムになっているのが興味深い)
3年前、初めて訪れたときの写真である。
このときもV吊り型鉄塔が気になったらしい…殆ど同じ場所から撮影している。
この道は大きくカーブし、やがて2系列の鉄塔が見えてくる。
旧火力発電所の建屋が見えてきた。その手前に地図では二等辺三角形に整形された溜め池がある。
これも3年前の写真だ。
3年前訪れたのは秋口だったが、溜め池土手の藪化が酷くまったく近づく気がしなかった。そもそも何処から汀が始まっているかすら分からない。
一年を通じてもっとも藪の勢いが増す時期ながら、溜め池の土手は背の低い枯れ草しか見あたらない。割と最近刈り取ったか除草剤を散布したようだ。
ここを訪れる前から地図で眺めても整った三角形に見える溜め池が気になっていた。現地では体感されないが、航空映像で眺めてもかなり大きな三角形溜め池である。
恐らくこの形状に深い意味はないと思う。埋め立てを進めていく過程で残土不足で取り残されたか、淡水域を確保する目的で意図的に残したのだろう。
(居能駅裏付近にもかつて同様に取り残された遊水池があった)
いずれにしろ足下が見える状況なら接近にそれほど不安はない。
汀に近づいてみた。
梅雨の長雨が続いた後のせいか、航空映像で見たよりも広範囲に水が溜まっている。
(航空映像では広範囲が湿原となっているように見える)
何か杭のようなものが水上に顔を出している。
古い鉄塔の基礎跡だろうか。杭が見えるくらいだから水深は浅いらしい。
この溜め池は海とは繋がっていないらしく、淡水生の植物が目立つ。野鳥が憩う場にもなっているようで、私が汀へ接近したとき草むらに隠れていた鳥たちが一斉に羽ばたいたのでかなり驚かされた。
3系列6回線が馬渡川を横切る方向に出発している。一番奥の1回線だけは敷地内にある超高い鉄塔に引き揚げられ厚東川を渡っている。
この溜め池の末端まで来れば、そこが西宇部変電所の入口である。
今や変電所は無人化が常識だから常駐する人は居らず、したがって案内標識などの類はない。
進入路の中ほどに通用門がある。ネットフェンスに掲げられた西宇部変電所という表示板だけが稀な来訪者にその存在を教えているようだ。
さて、じっくり観察させて頂こうか。
ここで自転車を降り、所望の被写体を探しながら押し歩きした。
(「西宇部変電所【1】」へ続く)