佐々並川発電所・第二次踏査【2】

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(「佐々並川発電所【1】」の続き)

そこへ到達できるかどうか…まずはカメラのズーム機能を駆使して水圧鉄管の周囲を探った。
生憎逆光なので白く霞みがかったようになって見えづらい。


橋の上から窺う限り、水圧鉄管は中ほどにジョイントの基礎で連結されていた。最上部も見えているので少なくとも間上発電所の水圧鉄管みたいに延々と高いところまで果てしなく続いているという心配はない。

ジョイント基礎部分を更にズームしてみる。
水圧鉄管を跨ぐ鋼製足場のようなものが見える。左側にある線路のようなものは輸送用の索道だろう。間上発電所にも同じようなものがあった。


それでなくても霞みがかっているところに、距離の遠い最上部はズームしても鮮明には写らなかった。
一番上は緩衝池の水槽だろうか…その下は空気抜きらしいバルブが見えている。


両側が深い樹に覆われているせいで階段部分は見えなかった。しかし水圧鉄管の両側を行き来する鋼製足場があるから、階段は付属しているだろう。そうでなければ作業員もメンテナンスに困る筈だ。

あの真下まで行けるかどうかで勝負が決まる。
有刺鉄線付きフェンスだったり立入禁止の札が出ていれば潔く諦めるとして、まずはそこまで行く方法を考えた。


発電建屋から独立して敷地内に建つ平屋。
何のためのものかはもちろん分からない。見かけは学校の校舎のようだが、まったく窓がないのが如何にも怪しい雰囲気だ。


まずは県道を上流に向かって歩いた。もし管理道が完全に敷地内から伸びているのでなければ、この建屋の背面に入り込む枝道が県道から出ている筈だ。
なかなかに暑い。歩道を進んだ先には個人商店があり、今しがた自販機で買い物しようとする車が停まった。素人目にも大した被写体もない場所でカメラを構えつつうろうろするのはさすがに周囲の視線が気になった。

その商店を背にして発電建屋の方を振り返ってみると…
左側に少しずつ山の方へ入っていく道と言うか踏み跡が見えはしないだろうか。これはかなり怪しいと思う。


右の敷地へ至る通路ではない。そこには個人の敷地であることに気付いていた。その更に左側にある草まみれの部分である。


山道であることに違いはない。草が生えているだけであって平場が見えている。しかし…
どう見ても踏み込もうという意欲を萎えさせるに足りる荒れようだ。


この中をザクザクと踏み込んで行くものだろうか…
少し考え込んだものの、自分としては否定的に反応せざるを得なかった。手前に見えている雑草だけでも自分の腰より高い。足元が見えないから不意にヘビの尻尾でも踏み付けたらまず攻撃されるだろう。そこまでリスクを取ったとして、この道とも言えないシロモノが水圧鉄管の真下まで続いているという保証もない。
極端な話山道ですらないのかも知れない

なお未練がましく敷地越しに山道らしきものの続く先を偵察してみた。
敷地に置かれた物置や小屋の後ろには、少しずつ登っていく緩い道路の痕跡らしきものが見える。やはり水圧鉄管に向かう管理道なのだろうか…それにしても大部距離があるようだ。


元々、無人化された発電所だから、水圧鉄管のように一度設置すれば殆どメンテナンスの手もかからない工作物はもっと訪れられる頻度が低い。必要なら敷地内の発電建屋に向かう水圧鉄管に沿って管理道を造るものである。外部からわざわざそこへ至る道を造るとは考え難い。昔はあったとしても殆ど利用されないなら、荒廃して廃道のようになってしまうことは有り得るだろう。

敷地の端に建つ謎の平屋をぐるっと囲むようにフェンスとコンクリート壁が伸びている。
せめてあの藪道歩きをショートカット出来ればと思ったのだが、その隙間に道らしきものは何もなかった。


取りあえず、上流側から攻めるルートは諦めた。

仕方なく正面へ戻ってきた。
一応、追加の写真を撮ろうと玄関部分に向かう。


黄色いチェーンが張られているのは一昨年と同じである。
ここには立入禁止の札は出ていない。車の誤侵入防止のためだけだろう。


入口横にあるプレートを発電建屋と共に撮影しようとして、前回踏査での見落としに初めて気づいた。


プレートの貼られた塀越しに水圧鉄管が見えていたのである。


一昨年の来訪も同時期だったから、如何に草木が生い茂っていたとしても見落としようがない。


前回踏査時の写真をざっと調べたところ同じアングルでのショットが一枚もなかった。どうやら当初から見えないものと考えてしまっていたようである。
短時間の訪問で丹念には調べていなかったのも理由だろう

水圧鉄管の傾斜角は分からない。溝状に掘った中へ布設しているように見える。
左側に見えるジグザグの階段が管理道だろう…撮影後に気付いた


正面門扉越しに中を撮影していなかった。
前回と異なり発電中のせいか水の音が聞こえている。


音の発生源はこの辺りだ。
タービンを回した水が排出される場所なのだろう。


さて、まだこれだけで諦めはしない。一昨年も辿ったコンクリート階段である。
前回は水圧鉄管に接近するのではなく、敷地内を俯瞰するために少しだけ辿っていた。もう少し丹念に探せば、水圧鉄管に近づける経路が見つかるかも知れない。


階段と言ってもきちんとしたものではなく、コンクリートの床を拵えて段の部分に栗石を並べただけだ。
コンクリートの上に転がっている石で何度も転びそうになった。


きつい…sweat
日差しがあるところは容赦なく照りつけるし、日陰に入ればヤブ蚊が飛んで来る。まだ今日のメインディッシュは先の方にあるわけで、早々に決着をつけたいと思った。

(「佐々並川発電所【3】」へ続く)

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