新厚東変電所【2】

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(「新厚東変電所【1】」の続き)

先を求めるかどうかは後回しにして、フェンスに貼り付いて奥を窺ってみた。

一段高くなっている奥の敷地は、手前のと同じくらいの広さがあった。
奥の方に見馴れない感じの機器が並んでいる。ここからは見えていないが、送電鉄塔が一番奥に立っていて、そこから切り返す形でこの設備に給電しているようだ。


フェンスの網目からズーム。
敷地の一番奥に直方体の建て屋があり、そこには気持ち悪い面々が隠れていた。
特にあの緑色のケヤリムシといい意味不明に曲がりくねったパイプといい…


結局、今回はここから先へ行くことは断念した。
側溝も跨がなかった

興味が湧かない訳ではないが、どうにもテンションが上がって来ない。男衆の声高にしゃべる会話、フェンス門扉の脇へ施錠もせず置き去りにした自転車、入口の白い車など…集中しようにも茶々を入れる要素が多すぎだ。
まあ、望むならまた日を改めて来ることもできるだろう。そんなに遠い場所ではないし…

今年は11月下旬近くまで暖かな日が多く、最近になって急に寒くなったせいか藪の勢いが殆ど衰えていないのもマイナス要因だった。
厚東川左岸堰堤計画のときに嫌と言うほど思い知らされた
それからこの日に限って言えば、自分が目で見て納得する分は良いにせよ、データをデジカメ写真として持ち帰るには、この曇天は落とし穴だった。

遠方をズーム撮影するとピントが甘くなる。
以下に何枚か載せている大判の画像を見ると分かる。近景はあまり目立たないが、遠くをズーム撮影した写真は被写体の輪郭が甘くなっている。撮影直後には必ず液晶画面で確認しているのだが、その段階では分からないピントの甘さなのだ。中には確認画面でもハッキリ分かるほどピントの合っていないものもあった。
それらは取り込みの段階ですべて削除してしまっている
原因は光量不足だ。冬場の曇天がちな踏査では、頭に入れておかなければならない注意点だと学習した。

引き返す代わりに、ここまで来るときは大雑把に眺めていた敷地内のモノを丁寧に観察した。

雛段上側の敷地の端には、2条線で構成されるガントリー鉄塔と変圧器があった。いくつもの変圧器が並んで設置されており、徐々に降圧しているのだろうか。


下側の敷地の端。サボテンをイメージさせる碍子柱の奥に、排気ダクトみたいな鋼板の柱が見えている。今まで訪れた変電所では観たことのないシロモノだ。拡大対象画像です。
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共通する機器もある。これは恐らく遮断器だろう。しかし取っ手の付いたボックスに取り付けられるタイプは初見だ。


キャップのついた碍子柱。
脇の電柱は作業員が昇降することがあるらしく、注意喚起の札が取り付けてあった。


若干離れていたせいであまり注意を払っておらず見逃していた奇妙な機器があった。
新山口変電所のときもそうだったけど変電所の碍子とかワイヤーの写真を縮小すると画像の劣化がとても目立つ…重いだろうがなるべく原典ファイルを載せよう


ズームで捉えた。
離れた”サボテン柱”を物干し竿のようなパイプで接続している。体操用の平行棒みたいだ。拡大対象画像です。
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離れた2ヶ所の碍子を剛直な棒で連結するケースを見るのも初めてだ。恐らく鉄棒ではなく伸縮率の小さい素材のパイプにワイヤを引き通しているか、碍子接続部分が緩めに取り付けてあるのだろう。

平行棒は途中で角度を変えていて、その間は奇妙に波打ったワイヤで接続されていた。拡大対象画像です。
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何だか頼りないひょろろ〜んっとした形をしている。これで何年も同じ形状を保っているのだから、ある程度剛性のあるワイヤなのだろう。
この状態で何十年も雨風に晒されて大丈夫とも思えず…定期的に交換されるのだろうか
拡大対象画像です。
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敷地の中で一番大きな音をたてていた機器。
背面に付けられたフィンらしきものは放熱板だろう。何とも言えない電気音を周囲に放っていた。機器は違えど、あの音だけは共通のようだ。
下向きに伸びているパイプは何だろうか。拡大対象画像です。
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これも初めて目にするわけの分からない変なもの。
直方体のユニットハウスみたいなものに高圧線が接続されている。それもユニットハウスから垂直に突き出す形で碍子が取り付けられている。
まるで壁から白いキノコが生えているみたいだ。
あのユニットハウスみたいな小屋の中がどうなっているかも気になる…拡大対象画像です。
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そして変電所に最も近い位置に建っていたガントリー鉄塔。
ここからもう一対の鉄塔を介して新幹線の架線に給電している。


梁の部分に「東京下り」の文字が見えた。
その横にあるTやFが何を意味するか分からない…位相の符号だろうか


再び変電所前の門扉まで戻ってきた。
自転車は持ち主の帰りを待っていたし、新幹線の向こう側から聞こえていた談笑の声もしなくなっていた。

敷地の奥に見残したものが気になるが、まあ慌てることはない…無くなったり改変されたりする設備ではないから、再訪するならもう少し天気が良く写真映りの良い日を選ぼう。
あと、こんな感じで周囲がガタガタと騒がしくないときも選んで…

諦めが悪いが、最後にもう一度峠山トンネルのポータルが見えないかチャレンジしてみた。
西側坑口はどうにか撮影できたのに東側は全く撮影できていない…
フェンスに密着すると網目模様に遮られて何も見えなくなる。少し離れて斜めに見ると網目から先が見透かせるが、そこに坑口は視認できない。
そもそも、目視でもフェンス越しで坑口らしき部分が分かるか否か…といった状況なのだ。


どうだろうか。
びっしり詰まったネットフェンスの網目を越して、トンネル坑口の円形らしき遠景(何)が想像できただろうか…


さて、撤収しようか。
もっとも撤収する前にちょっと重い課題がロープの前に待ち構えていそうな気がした。なおも白い車はあの位置を占有しているのが見えたのだ。


撤収すると宣言して、もしかすると何となく肩透かしを喰らった気持ちになった読者があるかも知れない。
その気持ちを代弁してみようか。

せっかく新幹線の近くまで来たってのに、
新幹線の映像は全くナシなん?
そういう声がきっとあるだろう。変電所カテゴリの記事だけど、新幹線絡みの設備だし、現にすぐ傍らを山陽新幹線が通過しているのだから、列車の写真が一枚くらい有っても良いだろうなーとは思っていた。

精々、言い訳すればなかなかタイミングが悪かったのだ。
スロープを自転車漕いで登っているときは何も通らず、フェンス門扉前に停めて変電所の方へ歩き始めたところで小郡方面からサッと通過した。その直後に例の近隣住民らしき声もしたので一旦戻って周囲を窺い、そのときは暫く何も通らず…それから腹をくくって再度フェンスの方に向かった直後にまた反対側から通過…といった塩梅だったのだ。

それに…この記事って変電所カテゴリだし…元から鉄道関連を収録するエントリって、まだ作られてもいないし…

しかし…
どうでも自分を含めて鉄分補給せよ(?)との天の声があったようで、いよいよ自転車に跨ろうかという折りになってチャンスがやってきた。厚狭方面から峠山トンネルに突入する新幹線の音が聞こえたのだ。
衝撃音という程ではないが、空気を揺さぶる音が坑口の方から漏れていた。峠山トンネルは2km近い延長があるので、疾走する新幹線と言えどもカメラを動画モードに切り替えるゆとりはあった。
しかしさすがに撮影場所を移動するヒマはなかった

では、どうぞ♪

フェンス越しで見辛いし、本当に一瞬なんですが…
[再生時間: 12秒]


これで気が済んだ?^^;
取りあえず義務(?)は果たしたぞ。
本当に撤収だ。

ロープの向こうには、まだ例の白い車は停まっていた。
えぇい、構うものか。


自転車に跨り惰力で坂を下った。もちろんロープがあるからその手前でブレーキを掛けて自転車から降りると、来るときと同様サッと自転車を抱えて跨ぎ越した。
視線は一切車の方へ向けず、恰も自分は一つの業務をこなしたのだ…とでも言いたげに極めて事務的に…
何事も起こらなかった。
車には誰も乗っていなかったのだ。


停まっていたのは白黒ツートンカラーの車ではなく普通の自動車だった。
近くに人の姿が見当たらないことから、どうやら先ほど新幹線の向こう側で野良仕事の傍ら話をしていた近辺に田畑を持つ地元住民らしい。やれやれ…

もう少し藪の勢いが衰えたら再訪は…
さあ、どうしようか。

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