新山口変電所・初回調査【序】

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現地踏査日:2011/10/10
記事公開日:2011/10/14
先週のこと、帰り道の途中にあるからという単純な理由で山口変電所に立ち寄った。
そこは3年前の野山時代に一度立ち寄っていて、変圧器や鉄塔など普段見馴れない奇妙な機器類に思い切り非日常的な光景を味わうことができた。

それは別に美麗なものではないし、それ故に一般大衆が眺めに訪れる物件でもない。敢えて言えば、
気持ち悪い面白さ
とでも言えるだろう。

シュールな光景を眺めて楽しむ気持ちを加速させたいなら、これより規模の大きい変電所を観に行けば間違いなく叶えられる筈だ。幸いそれは車を小一時間程度走らせれば行ける場所にあり、しかも私に関しては不慣れな場所ではなく、何度も遠くから眺めたことがあった。
それこそが今回のターゲットとなる新山口変電所である。

新山口変電所は電圧階級からすると山口変電所の上位にあたる。日本列島を結ぶ電力の大動脈とも言える超高圧線(50万V)が接続される変電所の一つだから、巨大な”気持ち悪さ”に触れたいなら大いに期待できそうだ。

新山口変電所の位置を地図で確認しよう。


新山口変電所は下関市豊田町にかなり近い美祢市の端にあり、山口変電所よりも更に山の奥へ押しやられたような辺鄙な場所にある。
それにも関わらず私は早くからおよその場所を知っていた。

前の会社では、月に一度程度豊田町に行く用事があった。
豊田に行くには厚狭から県道65号を辿るのが最も分かりやすくて近い。今のように県道の全区間が対面交通に整備される以前から何度も車を走らせている。
県道が厚保のサーキット前(現在はマツダの走行試験場になっている)を過ぎて峠を越えると、正面に大きな送電鉄塔が寄り集まる場所が見えるようになる。そして県道沿いに立つ電柱に変電所の行き先を案内する看板があった。当時からちょっと観てみたい気持ちはあったが、業務中だし、敢えて寄り道してまで観に行かなかったのは徳山発電所の水圧鉄管のときと同様だった。

山口変電所を眺めて写真を撮り、テンションも興味も高まっている今のうちに行っておいた方がいいだろう…
そういう気持ちから10月の連休最後の日の10日、美祢方面への県道走破プランに合わせて新山口変電所を調査物件として加えた。

なお、おおまかな場所は分かっていたとは言っても実際に車を走らせると、経路は思いの外複雑だった。行き交う車が殆どなく自由に車を停められたので、今回は丁寧に道中の写真を撮ってある。今回は現地へ向かうまでを序章とし、現地での撮影を第一章としよう。いち早く新山口変電所にある奇妙な機器を観たい方は、この序章を飛ばして「新山口変電所・初回調査【1】」に直行されたい。

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美祢の西部から豊田方面に向かう県道65号でマツダの走行試験場前を通過すると、やがて遠方にそれが見えるようになる。この風景は仕事で車を走らせていた頃から変わっていない。


遠くに鉄塔群が見えている。
県道は蛇のようにウネウネとうねりながらも変電所の方に向かっている。
無意味にうねった道が独特でここを通るたびに蛇を連想してしまう


新山口変電所も他の多くの変電所と同様、無人化されている。それ以上に元から変電所なんて一般人が訪れる場所ではない。電気に関する問い合わせなら、普通の人はカスタマーサービスへ電話するか事務所に出向くだろう。
そうでありながら奇妙なことに、新山口変電所への行き先案内は実に丁寧なのである。
新山口変電所 左折


電信柱は中国電力自身の持ち物だから、どんな宣伝看板を貼り付けるのも自由だ。オール電化とか給湯器の御用命は…など商売意欲旺盛な看板をベタベタ貼り付けそうなものだが、そうした文句は殆ど見当たらない。殆どの電信柱は、積極アピールする効果があるのかと思われる新山口変電所への行き先案内になっているのだ。仕事でこの県道を走っていた頃からそうだった。

やがて十字路に差し掛かり、蛇の道の途中から見えていた青看の案内が登場する。


先に見た”新山口変電所左折”の看板の後、左へ入る道はここしかない。また、十字路の傍らに立つ電信柱も同じく変電所の行き先として左折を案内しているから、標識や看板群に気をつけている限り迷う余地はないだろう。
この交差点がA地点になる…詳しくは後出のマップにて解説

山へ分け入っていく市道(美祢市道…路線名は分からない)を進む。
県道そのものが交通量は少ないから、この市道は更に車を見かけなかった。


「ほうほう防犯協議会」

何か奇妙に頷く協議会を連想してしまいがちだが、そういう意味ではなく「ほうほう」はこの近辺の地名(保々)である。
美祢市には他にない一風変わった読みの地名が目立つ…そう言えば「保の木」も同様の読み方をする地名

道なりに車を走らせていると、再び新山口変電所に関する非常に分かりやすい標示板に出会った。
確かにそれは分かりやすかったのだが…

えっ?
戻るのかよ?


いや、行き過ぎたから引き返せという指示ではない。
引き返すような鋭角カーブになるが、ちゃんと矢印の方に山の中腹を登っていく道があった。
ここがB地点になる

しかし些か当惑を覚えたのは、何だか遠回りしている気がすることと、目的地までまだ3kmもあるという事実だった。

県道を走っていて前方に鉄塔群が見えたとき、直線距離で3kmもないような気がした。それなのに県道を外れて暫く走ってきた今の時点であと3kmってのは一体…?

まあ、看板がその通りなら、従う以外あるまい。
県道からは見えていた変電所もこの分岐点からは全く見えないし、そもそも鉄塔すら山の端に隠されて何処にも見えない。

このカーブは殆ど完全折り返しに等しい位にきつく、軽四の私の車ですら一度では曲がりきらなかった。

ここから先は中電の管理道になるのだろうか。まず対向車も後続も来ないだろうから、ちょっと車を降りて撮影する。


元から幅員のない道で、最近の雨で斜面が崩れて土のうを積んだため余計に狭くなったようだ。

この蓋のない側溝に脱輪してしまいそうで鋭角カーブを内回りできず、何度かハンドルを切り返すことになった。
片車輪でも突っ込んだら多分自力では脱出不可能…車で行く人は用心してね♪


看板の裏側は、ちゃんとカーブの形状に即して正しく表記されている。
ちなみに写真では小さくて分かりづらいが、矢印の右上にはホタルとゴルフでスイングする人のイラストが描き込まれている。
芸が細かい。


ここから正確に3kmあったかどうか不明だが、本当に道中は長く、暫くの間人里を離れた道を走ることになった。

小さな峠を越え、何と民家が並ぶ道に出てきた。どうやら今まで走ってきたのはまだ中電の管理道ではなく、一般市道のようだ。
元々の道はここで左へ曲がっているようで、直進する道はやや狭い。


しかしここでも迷うことはなかった。
ちゃんと直進方向へ親切丁寧な案内が出ていたからだ。
ここがC地点


恐らくここから管理道だったのだろうか。全くすれ違う車はなかったものの、道は舗装されていて路面の荒れもみられない。
再び小さな峠を越え、視界が開けた先にそれらしき鉄塔群が見えてきた。


間違いない。このまま真っ直ぐ行けばいい。

管理道は敷地へ向かう前で一旦高度を下げ、それからやや左に曲がって伸びる進入路に向かった。
そこで最後のスロープを前にして、またしても丁寧なお出迎えが…


あたかも「ようこそいらっしゃいました。慌てることはないから徐行してね♪」という感じだ。
変電所は一段と高い敷地にあるようで、ここからは送電線の一部しか見えない。


一連の経路を国土地理院の地図上にマークしてみた。
現在位置を国土地理院の地図で確認しておこう。


確かに迷うことなく到達はできたのだが…
最初に入った交差点(A地点)から目的地のD地点への経路を眺めると、
明らかに遠回りしている。
あの青看があった場所から少し先にも左への分岐があるように見える。

実際、それは確かに存在していて恐らく案内された経路よりも近い。しかし結論から言えば、その道を行くならA地点の十字路で一旦右に曲がって県道の下をくぐる道に入る必要がある。
明らかな遠回り経路が案内されているのは、新山口変電所が県道の左側にあるのに一旦右へ曲がって県道の下をくぐるイレギュラーで混乱させるのを避けるためだろう。

ともあれ、いらっしゃいませと迎えられたからには、少なくとも一般人に来て欲しくない場所ではなさそうだ。
じっくりと堪能させて頂くことにしよう。

(「新山口変電所・初回調査【1】」へ続く)

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