新山口変電所・初回調査【1】

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(「新山口変電所・初回調査【序】」の続き)

”徐行してね♪”の標識から坂をゆるゆると登っていくと、目的の物件が徐々に姿を現した。
車に乗っている段階から、既に奇妙かつ奇っ怪な機器たちがフェンス越しに見えていた。

まず誰も来ないとは思うが、正面の門を少し避けて車を停めた。


ここは通用門らしい。正門は更に奥の方にあるようで、管理棟も見えていた。


さすがに敷地は広大だ。周囲を整備された管理道が伸びていて、車で移動できそうだ。
すぐ前方に2回線の引き込みが見えている。さすがに規模が大きい。


現在地を航空映像で眺めてみよう。
今、概ね下の地図で中心点としてポイントされる場所にいる。


正方形状の敷地の約4分の3に鉄塔や機器類が配置されており、それらは航空映像でも銀白色に見えている。
まるで集積回路を顕微鏡で眺めているようだ。
航空映像にはタイムラグがあるが残り4分の1の敷地は今も同様だった

山口変電所に比べて何もかも規模が違う。敷地が広大なら、機器群も送電線そのものも巨大だ。
一回線分は位相の異なる3本の送電線で構成されるのだが、1本のワイヤーではなく2本を合わせた形で張っている。門型鉄塔に取り付けられた耐張碍子も2本のワイヤーに対応していて、それぞれが3個連結されている。


デカいー!! などと独りごちながらカメラを構えていた。

門型鉄塔から機器に降ろすワイヤーは、2セットの碍子でV吊りしている。
山口変電所およびその下位の送電鉄塔では殆ど見られないパターンである。


新山口連絡線 のタグがあった。
送電線の伸びていく方向からして、山口変電所に接続されているルートではなかろうか。


そのすぐ横にほぼ同等な仕様の引き込み線があった。


こちらは 新小野田火力連絡線 となっている。
小野田にある火力発電所で作られた電力がここに到達するのだろう。


ここまで観ただけでも、すべての機器類が山口変電所の規模を凌駕していると感じた。送電ワイヤーがダブルになっている点、それを受ける碍子や機器類の大きさも。
しかしまだまだこんなものではないことはすぐ理解できた。敷地の奥の方には、比較にならない化け物のような機器が見えかけていたからである。
あまりにデカくて奇妙な形でかなり気持ち悪いと思うw

振り返って撮影。
車を停めた通用門から50mくらい歩いてきている。
敷地の反対側に向けて開渠があるのが気になった。


それは場内に降りそそいだ雨水を排除する側溝で、管理道の下を暗渠でくぐり、反対側にある溜め池らしき場所に接続されていた。


この側溝を観たとき、大方の酔狂な方々が想像するのと同じことを考えた。
側溝の中をくぐって敷地内に入れてしまうのでは?
さすがに中電たるもの、そんな杜撰な管理ではない。
ちゃんと鉄格子のスクリーンが掛かっているではないか。


しかしその構造を見て次に感じたこと。
この格子って、動くのでは…?
確かめるために、わざわざ側溝の中へ降りて奥を覗いてみた。
今は流れておらず干上がっていて、管理道の下を斜めに横切って敷地内の側溝に繋がっていた。
スクリーンが掛かっているのはこちら側だけで、敷地側にはなさそうだ。

…と言うことは、
もしかすると…
その想像通りだった。

固定されていなかった。


格子はかなり重いものの、両端はボルト留めされておらず、手前に引き上げることができた。実際にそこまで試した訳ではないが、その気になれば這って入り込める程度に持ち上げられるだろう。
ボルトでがっちり固定されていると、雨降りの日が続いて上流から木の葉などが流れて引っかかったとき取り除くのが大変だ。かと言ってこのスクリーンがなければ、側溝を伝って敷地内に入る輩が現れるかも知れない。

犯罪指南する積もりなど毛頭ないが、まあ有刺鉄線が張り巡らされたフェンスによじ登り、鉄線で傷だらけになるよりはこの側溝経由の方が簡単だろう。高さ50cm程度、幅が1m程度の側溝なら大人でも苦労することはない。

ただ、立入禁止の明示と共に有刺鉄線付きフェンスがあるというだけで、暗黙にも堅い侵入阻止の意図が理解される。まして敷地内は直接触れるのみならず、接近するだけで瞬時に命が奪われる事態が起こり得る危険度だ。たまさか不法侵入して事故でも起こそうものなら、翌朝の新聞の三面記事に顔写真付きで掲載され、一躍有名に(もちろん悪い意味でw)なれるだろう。

そんな危険を冒さずとも、現在は安いデジカメを使うだけで全く安全に、しかも現実にはその位置に身を置くことなど絶対に不可能な近接映像を得ることができる。
但し網目の細かいフェンスが撮影にはとっても邪魔だが…
再びフェンスの前に戻って、門型鉄塔の上部に焦点を定めた。

引き込み部分。
ここにもお馴染みの が取り付けられている。ただし取り付けてからかなり年月が経つのか、色褪せていた。


ダブルの活線を3個連結した耐張碍子で支持し、碍子の手前から垂れ下がるジャンパ線をV吊り碍子で受けている。電気はこのジャンパ線の部分を流れている。
鉄塔の梁から2m近く離しているから、それだけ高圧電流が流れていると言える。


ジャンパ線から地上に据え置かれた碍子に降り、よく分からない機器を通されている。
碍子が乗っている灰色のケースはガス遮断器と思われる


反対側を振り返る。
この鉄塔から伸びていた。敷地内に真っ直ぐ入って来るので、鉄塔自体は耐張型の割とシンプルな形である。しかし2回線で活線がダブルだから、かなりワイヤがうるさい感じがする。


ピントが合うか自信がなかったが、ダブルの活線をズームしてみた。
活線同士が擦れ合わないようにスペーサが定間隔で配置されている。これと同じものを駅の構内から電車のパンタグラフが持ち上げる架線に見つけることができる。
水平に横切るラインは中電の事務所に送られる電線と電話線


さて、容易に歩いて行ける範囲で観察できるものは撮影し尽くした。
車を移動しようか。

おっと…
動画撮影もやっておこう。

[再生時間: 19秒]


車に戻るとき、通用門の内側にこんなサインが隠れているのを見つけた。


新山口変電所と新山口制御所を案内する看板である。敷地の内側に置いてあるので、来たときは分からなかった。
写真では分かりづらいが、新山口変電所の下にはコミュニティーホールという文字の消された跡が見える。
今でこそ無人化され、誰も常駐しない変電所となったのだが、かつてはオール電化の説明会などに使われることがあったのかも知れない。

通用門に貼られていた表示。
正門は管理道に沿って300m進んだところにあるという。


もちろんここからも見えている。歩いていけない距離でもないが、正門に行くだけでここから300mもあるのだから敷地の広さが想像されるだろう。

通用門から敷地の反対側を眺めている。
この周辺にあるより更に大きくて巨大な碍子をぶら下げた門型鉄塔群が見えている。


今まで観てきたよりもっと「気持ち悪い」眺めを期待して車を正門の方へ移動させた。

(「新山口変電所・初回調査【2】」へ続く)

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