徳山発電所・平成24年度見学会【3】

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(「徳山発電所・平成24年度見学会【2】」の続き)
(期間限定記事は現在締め切られています)

見学会は続いているが、ここは管理区域外で随時観に来ることができる場所なので一般公開記事としている。

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ヘルメットを外して返却し、発電建屋を出た。


例のシャッターの反対側、発電事務所の裏側には去年見かけなかった水槽が置かれていた。
子ども向けに水力発電の原理を説明するための模型で、台の上と地上に水槽が置かれておりコックを捻ると流出する水が水車を回して豆電球が光る仕組みになっていた。
管理区域外なので後から撮影できると考えて写真を撮らなかった…そのまま撮影するのを忘れてしまった

事務所に戻るとき水圧鉄管路の方に目が向いたので、忘れずに尋ねてみた。
水圧鉄管路の先っぽに何かコマみたいなものが付属していますが、あれは何ですか?」
「どの部分ですか?」
「鉄管が地面に潜るところで先端部分がコンクリートで巻いてありますね。そこに何かが串刺しになっているのですが…」
居合わせた2人の職員にとって注意を惹くものではないらしく、どの部分を指すのか水圧鉄管路の見える場所まで移動して指差して示す必要があった。
「ああ…空気バルブですね。管内の状態に応じて空気を排出したり取り込んだりして圧力調整しています。」
内部をもの凄い圧力の水が流れているのに水を外へ噴出させないで空気は排出できるのが不思議な気がするが、そう複雑な機構になっているわけでもないという。
「中に浮きが入っていまして普段は水圧で栓をした状態になっています。負圧がかかったときはここから空気も取り込まれます。」
水圧鉄管路についても尋ねてみた。
「水圧鉄管路の内部を点検するなんてことはあるんですか?」
「ありますよ。定期点検のときは送水を停めて管の内部を調査します。」
「実際に内部へ人が入るんですか?」
「それもあります。6年に一度の点検では簡易な調査、12年に一度は水圧鉄管路の内部に入って点検します。」
「内部に入るって…あれほどの急勾配だからそのままでは入れないのでは…」
「水圧鉄管路の内部に足場を組んで往来できるようにします。かなり大がかりな作業になります。」
定期的な保守点検は予測されるにしても、内部へ足場を組んでまで作業員が入るとは驚きだった。私もここに居合わせる担当者たちも直接目にしたことはないが、完成から既に半世紀が経とうとしている設備だから、少なくとも4回は本格的な点検を経ていることになる。
最初に足場を組むこと自体がもの凄く危険で困難な作業ではないだろうか…

去年に同じく風力発電の説明もあった。
東部発電事務所の入口横にある風車に連動した蓄電池である。
「どれだけの電力を賄っているんですか?」
「この規模の風力発電なので…事務所の電力を賄うまではいかず蓄電池を充電して夜間の外灯に使う程度です。」
去年同様事務所の1階でアンケート用紙に記入した。ダム見学会のものと共用だったので、要望事項のところに企業局管理のダムも見学させて欲しいと書いておいた(苦笑)
それから私はこれからの行動予定に関してあわせて質問した。
「あの水圧鉄管路の上水槽のところまで道がありますね。車で行けますか?」
「行けますよ。どうやって行くかと言うと…」
私自身地図で調べてはいたものの、わかりにくい場所と思った。似たような道が多く、そのうちの一本だけが山に向かって伸びていたからである。恐らく担当者も現地まで行ったことはないらしかった。
市道を進んで信号のある交差点を左に曲がって給食センターの前を通って…までの情報を頂くことができた。
「あと、ここは5時過ぎても大丈夫ですか?もう5時近いですけど車を置いてちょっと水圧鉄管路の写真を撮りたいので…」
「ああ、全然問題ないですよ。」
こうして見学会の形ではこれにて終了となった。
私は一旦車に戻り、パンフレットを助手席に置いてきた。

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時刻は既に午後4時を回っていたが、まだ日は高い。写真を撮るのに全く問題ないし、少々疲れてはいるが予定通りに事が運び成果がどんどん積み上がって行くので気分が良い。

まずは市道を渡って水圧鉄管路を詳細に撮影しに行った。
歩道に見える大きな角桝は後述する桝とは無関係で単なる雨水桝と思われる


去年と特に変わった様子はない。
そう言えばこの小屋が発電所に関連ある施設なのかどうか尋ねていなかった。
電源線が引き込まれていることから水圧鉄管路の流速や流量を計測する施設では…


水圧鉄管路の写真は去年の見学会の直前に撮っているので、なるべく重複しない情報を記録する写真を撮るように努めた。

一番下の雛壇からカメラを水平に構えて撮影している。
上の雛壇に遮られてこれしか見えない。また、水圧鉄管路の勾配は意外に緩い感じだ。


必要だから有刺鉄線付きフェンスが張り巡らされているのだが、撮影に関してはどうにも邪魔だ。


上部をズームしている。
少なくとも2ヶ所ほど勾配変わり点があることに気付く。間上発電所のものと同様、地山を削ることなく水圧鉄管路の方で合わせているようだ。


最後の1スパンが地中に潜り込む部分。水圧鉄管路に塗装の諸元表が貼り付けてあったが、コケで汚れていて読み取れない。


手前には四角い網目の蓋がある。これはバイパス管部分の点検桝だろう。

コンクリートの巻き立て部分は直方体だが、最後の1スパン分だけは下流側を斜めに削いだ形になっている。
そこに先ほど担当者に質問した空気抜きバルブが串刺しになっている。


どの程度空気の移動があるのだろうか…
状況によっては音を立てて周囲の大気を吸引したり破裂音と共に吐き出したりするのだろうか…
あのハンドルを手動で動かすようなことがあるのだろうか…


雛壇の上部は私有地なのでフェンスの外側も辿ることはできない。反対側へ移動した。

フェンスの網目越しに撮影している。台座コンクリートの側面に四角い蓋が取り付けられている。
何が格納されているのだろう…


この先は私有地に隣接していて辿れないのは去年確認済みだった。


ここまで撮影して駐車場に引き返すとき、去年の見学会でも説明されたバイパス管の存在を思い出した。


これは去年撮影した写真である。
発電事務所の駐車場を入ってすぐのところに2つの桝が離れて並んでいる。


去年の見学会の説明によれば、水車や発電機を点検するとき、水圧鉄管路を介さずに工業用水を送るためにバイパス管が併設されていると聞いた。この2つの桝はバイパス管の点検用という。


水圧鉄管路に導かれた工業用水は地上から30m下の発電用水車を回している。バイパス管は発電に関与しないので発電建屋を若干迂回するように通されている。もしかすると同じくらい深いところを通っているのでは…
もしそうだとすれば、この桝はとてつもない深い竪坑になっているのでは…

格子にカメラのレンズを押しつけて撮影している。
グレーチングの格子はそれなりに細いのでカメラを失う心配もない。
しかし胸ポケに差したボールペン程度なら落下してしまうだろう


点検坑なので固定された梯子が設置されていた。その末端は一番下まで届いていない。幅は1.5m程度ながら流れる部分の最大深さは3mくらいありそうだった。
想像したほど桝は深くはない。精々駐車場の路面から10m程度だ。内部には若干水が溜まっている。しかし雨水桝どころではない深さに恐怖を感じる。

駐車場内にある同サイズの桝2つを結ぶ延長上を歩き、振り返っている。
確かに水圧鉄管路の横に設置されたバイパス管の通りと一致する。


では、バイパス管のこの先はどうなっているのだろうか?

桝の延長線上をたどって駐車場の端まで歩いた場所がここである。
去年は見学会終了後すぐ菅野ダムに向かったのでこの場所に気付いたのは初めてだった。
駐車場の端にコンクリート階段があり、斜面の途中に何やら大きなコンクリート構造物が見える。この下をバイパス管が通っているのだろうか。


東部発電事務所の裏手には東川というやや深い谷地を形作っている川がある。この川は発電を終えた水の受け皿とはなっていないことは気付いていた。工業用水が排出されているなら、相応な門扉がある筈だし水量はもっと多くなければならない。工業用水は東川の下をくぐっていると想像される。

あまり人が来ない場所でちょっと不気味だが、階段を下りてみた。
東部発電事務所との位置関係はこんな具合だ。この近辺はこれほど起伏がある場所なのだ。
この写真を撮影しているときさっそく川向かいの家の飼い犬が吠え始めた…


グレーチング蓋が掛かっているが駐車場にあるものほど頑丈ではない。そのせいか蓋を隠すように4枚の板が並べてあった。


しかし桝のサイズからしてバイパス管の点検桝であることはかなり確からしい。

ここは東部発電事務所の駐車場以外からでも来れる場所だったが、草まみれの斜面の状況からして誰も訪れるような場所でないことは明らかだった。滅多に人の来ない場所なので適当に蓋を掛けて放置されているのだろう。
これがバイパス管の点検桝なら、その深さはかなり容易に想像がついた。深い谷地を形成している東川の下をくぐらなければならないからだ。

中を覗くのは…
さすがに上に載せられた板を外してまで撮影しようという気にはならなかった。
これで止めておこう。本当に怖い。


覆われているのは見るからに華奢な鉄格子の蓋にあり合わせの木の板だけだ。下手をすると上を歩き回っているうちに蓋ごと落下しそうな気がする。
多分内部に別の蓋があるだろう…さもなければあまりにも危険過ぎる

真向かいの家の飼い犬が吠え始めたところで素直に引き返した。
はるばる遠方からやって来てこれ以上に濃い踏査をすることもなかろう。
手前を横切っているのは発電所で作られた電力を送出する地下埋設溝である


しかし…
この場所だけは行っておかなければならない。

ズーム撮影する。
ここからは全く見えないがあの上水槽まで到達する道がある筈だ。


ここから見えている水圧鉄管路の最上部、上水槽を写真で採取する…これが本日最後のタスクだ。

どの道を行けばいいものか確証はない。担当者から聞いた情報とアジトを出る前に作成した手帳のメモ書きを頼りに、私は車に乗り込み東部発電事務所の駐車場を後にした。

(「徳山導水路・上水槽【1】」へ続く)

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