ユーエスパワー発電所【1】

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現地撮影日:2014/9/11
記事公開日:2014/9/15
一昨年辺りから身の回りの広大な空き地に変化が起き始めた。調べたわけではないが、恐らく日本全国に拡がっていると思う。
太陽光発電向けのパネル設置である。
敷地の造成が始まって立ち入れなくなったかと思うと、次に訪れてみたときには黒々とした板が同じ方向にズラッと並んでいるというパターンが多い。数年前まではまったく見られなかったのに、今では拡がり方にもの凄い勢いがある。市内や近郷地区だけみても何ヶ所もそうなっている場所を知っている。どうかすると身の回りでアパートが解かれて更地だったそれほど広くない場所にまで及んでいる。

太陽光パネルを設置するには現物購入の費用がかかり、更に設置手間や現地の造成などのコストもある。代わりにパネルから得られた電力を売ることができる。空き地のまま放置しておくよりは初期費用投資を回収できるだけの環境が整ったからと思う。これには言うまでもなく例の原子力発電所事故から安全かつ再生可能なエネルギーへ転換を促す潮流があった。従来よりも安価かつ効率的な発電パネルを製造できるようになり、かつ電力買い上げの制度や国からの補助も追い風なのだろう。

さて、こうした流れを受けて市内でも企業レベルで広大な土地にパネルを設置して太陽光発電事業に乗り出す[1]という話を夙に聞いていた。しかし物件的にそれほど興奮を呼ぶものとも思えず具体的に何処なのかは調べていなかった。この9月のこと、何となく自転車を漕いで昭和開作方面を走っていて偶然見つけることとなった。

当サイトでは発電所の物件は水力発電に限定していたのだが、市内の物件中心に運用している現状と初めて現地を訪れて接した奇観を読者にもお伝えしようと思い記事作成に至った。どんな物件も初訪問に最大の驚きと発見がある。そのことを記録するために、一般的事項は総括記事に作成し、本編および後続編では時系列に沿うスタイルにした。
なお、初回訪問時に撮影した一部の写真が巧く撮れていなかったので補充目的で2日後に再訪している。ここでは初回訪問時に撮影した写真を中心に、一部の写真に2日後撮影したものを含めている。

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8月中は雨や曇りが多く安心して出かけられない日が続いていた。冷夏気味という前評判も概ねその通りで焼け付くような暑さがない代わりに雨が目立ち、降らずとも梅雨のような蒸し暑さに気が滅入っていた。 9月入りして漸く天気が安定して写真映えする快晴の日が多くなってきた。鍋倉方面の用事をこなした後、そのまま何となく昭和開作方面へ自転車を走らせていた。この過程で以前訪れかけていた昭和開作の埋立地はどうなったかを知りたくなった。
ここで言う昭和開作の埋立地とは、厚東川東岸に沿った最南端の場所である。宇部興産(株)の社有地で埋め立てが完了した後もずっと遊休地状態になっていた。4年前初めて訪れたときには中に入ることもできた。
それが確か去年の終わりか今年の初めだったと思う。久し振りに訪れてみたものの何かの工事中で、高いフェンスに囲まれて中が見えなかった。敷地自体も当然立入禁止状態だったのでそのまま引き返していた。あれからどうなっただろうか…天気の良さにも誘われて厚東川に沿ってずっと下っていった。

市道厚東川東通り線の起点を過ぎて更に南下している。この辺りは既に企業向けの管理道だ。


企業の研究所などに向かう社有通路なのでその方面に用事のある営業車や資材搬出トラック以外外部の人は滅多に通らない。ただし部外者立入禁止となっている訳ではなく私のように自転車に乗ってフラフラしたり岸壁から釣り糸を垂れる来訪者の姿も見受けられる。

前回訪れたとき慌ただしく工事が進められていた昭和開作の埋立地はひっそりとしていた。
行く手を阻んでいた白く高いフェンスもない代わりに、新しくネットフェンスが設置されているようだ。


埋立地の現状は変わっていないように思えたが、残念ながら有刺鉄線付きフェンスが設置され立入禁止になっていた。
以前は車止めのバリカーが置かれているだけで立入禁止標示はなく真っ直ぐ進むことができていた。


何故立入禁止となったのか理由を知るのに時間はかからなかった。
すぐ横にユーエスパワー発電所の案内矢印が出ていたのだ。


確か以前はこの辺りもずっと荒れ地状態だったような気がする。
それが…どうだろう。キチンとアスファルト舗装されていて来訪者が駐車するための区画線まで引かれている。


最初この変化の理由が分からなかった。駐車場は奥に向かって若干の勾配がついていて先にあるものが見えなかったからだ。

自転車を乗り入れるにつれて見えてくるものによってそうだったのか!と理解するに至った次第だった。


広大な昭和開作の埋立地は、太陽光発電のパネル設置エリアとして生まれ変わっていた。駐車場とか展望デッキという文字の見える表示板がある。明らかに来訪者向けの案内だ。

仕掛け人は…やはり宇部興産(株)だった。
埋立地は社有地だから遊休地状態で放置するよりも活用することを選んだのだ。


当初、ここに現れる耳慣れないキーワードが分からなかった。ユーエスパワーというのは何だろう…多分、太陽光発電事業を専属とする子会社ではないかという察しがつ付いた。しかし先の案内表示板では「ユーエスパワー発電所」となっていたのに、ここでは宇部興産発電所という文字がみられる。[2]

既にフェンスの向こうに黒々としたパネル群が見えている。
ここが発電所入口の門扉なのだろう。さすがに厳重な立ち入り規制が敷かれていた。すぐ横には身障者マークがペイントされた特別な駐車スペースがある。


そのすぐ横に設置された展望デッキ。敷地の中に入れないので、代わりに視座を上げた場所を確保してここから見学してくださいということなのだろう。
正規の階段とは別に、車椅子でも自走できる緩やかなスロープが設置されている。当初から発電所の見学目的として整備されたようだ。


フェンスの向こうにはかつての埋立地一面に黒々としたパネルが敷き詰められているのが見えていた。もの凄く広い。今まで見てきた太陽光発電パネル設置場の比ではない。確かに発電所という名前に相応しい規模だ。

さて、嬉々として写真を撮りまくっている最中に変化があった。ちょうど上の展望デッキにカメラを向けているとき、一台の軽バンが敷地内へ乗り込んできたのだ。運転手は薄い紺色のシャツを着ていてヘルメットを装着している。一目でこの発電所の関係者であることが理解できた。軽バンは私が立っていた入口門扉の前に車を停めた。
最初の私の反応は…エラいことをやらかしてしまったのではというものだった。ここは関係者が見学するための施設で、部外者の私が乗り込んで写真撮影しているものだから通報が入り制止に来たのではと思ったからだ。市道までは公の場所だからいいとして、そこから南側は社有地である。標示が出ていなくても暗黙的に入ってはいけない場所なのかも知れない…ましてカメラでパシパシ撮られてネットへ揚げられては大変だという話になって…

運転手が窓を開けた。これは開口一番、何か言われるだろうなーと覚悟していた。
「すみません。中に入りますんで自転車を避けてもらえますか?」
やや拍子抜けした。如何にも私は門扉の前へ自転車を置いて撮影していた。それで逆に私の方から確認した。
「ここは(部外者の私が)居ても大丈夫な場所ですか?」
「構いませんよ。そこに展望デッキがあるから観て行っちゃったらええです。」
どうやら通報によって私のような危険人物を排除しに駆けつけたのではなく、単純なメンテナンス業務で訪れただけらしい。私は門扉の前に置いていた自転車をフェンス横に移動した。その後担当者は手持ちの鍵でフェンス門扉を解錠し開けた。

せっかくだから撮っておこう。
門扉が開いたところである。敷地内は監視カメラ付きで厳重に管理されている場所だから、仮初めにも門扉がこんな感じで開けっ放しで放置されていることは絶対にない。
パトロールカーのナンバーや運転手が写り込まないように被写体から外している


担当者は運転席へ乗り込み、通常業務の一環として敷地へ車を走らせた。

このように現地は私のような部外者でも自由に見学スペースから眺めることができる。この記事を元にちょっと見に行ってみようと現地を訪れるのは、むしろ関連会社としては大いに宣伝となって光栄なことかも知れない。
あ…記事制作料および宣伝料は申し受けませんよ…カンパはいつでも歓迎致しますが…^^;

カメラ撮影のことは尋ねなかったが、撮影禁止などの文言は何処にも掲示されていない。まあ、今どき見学するならデジカメをはじめスマホなど撮影可能なデバイスを携行しているのが普通である。展望デッキを設置していながら撮影禁止なんてわけがないから問題ないと考えていいだろう。[3]

展望デッキに上がってみた。
これは凄い。太陽光発電パネルを設置してある場所は何ヶ所も接してきたが、今まで観てきた中でもここは超弩級に広大だ。


パトロールカーが走っていくのが見える。
やや時間がかかっているのは車を乗り入れた後門扉を閉めて施錠したからだ


そのままカメラを南の方へ回している。
地平線と言ってはオーバーだが本当にパネルの一番奥は地平線状態に見える。


展望デッキの西寄りには発電概要の説明板と現在の発電量をリアルタイムで表示する電光掲示板があった。


パネルの西の端を見るために展望デッキの端まで歩いた。
右側に見えるのが厚東川の河口部で沖合に興産大橋が見えている。


パネルの角地部分に敷地の利用状況を示す標示板が立っていたが、ここからズームすると遠い。後で下に降りたとき撮ろう。

立ち位置はそのままで今度はカメラを南から東へ振っている。


展望デッキの角が写っている。
視座はおよそ3m程度なのでそれほど高くはない。奥の方までパネルを眺めるなら10m位高い場所からでないと無理だろう。


中央部分に向かって撮影している。
パネルは発電効率が最適化されるように10度傾けて設置されているという。


展望デッキには充分高い位置からの航空撮影映像が展示されていた。
正方形状のブロックが17区画造られている。
初回撮影時には自分の顔が反射していたので撮り直している


埋立地の南端には緑地のまま置かれている部分と溜め池がある。この溜め池部分は一通りの埋め立てが終わってからも遺っていた。海から締め切って埋め立てれば更にパネルを設置できたのだが、周囲と同じ高さにするだけの土砂が足りなかったのだろうか。
溜め池の横の部分もパネルが設置されず残っている理由は分からない

時系列から外れるがこれも追加撮影分の写真だ。
展望デッキのスロープ途中からズームで撮影している。産業廃棄物の最終処分場標示だ。


車椅子用のスロープからこの表示板が最も近くなるので、初回訪問時にはそこから撮影していた。しかし視座が下がる分だけフェンスの網目が邪魔になって巧く撮れていなかった。
そういう理由で再訪時の撮影分に差し替えている

現地ではそこから再び展望デッキに戻った。まだ撮影していないものがあったので。

(「ユーエスパワー発電所【2】」へ続く)
出典および編集追記:

1.「メガソーラー発電所の事業運営会社設立について」ニュースリリース|宇部興産株式会社

2. 以前からあった厚東川発電所などを含む宇部興産(株)の統括となる発電事業部ではないかと思う。

3. 一連の記事のように写真と解説付きでネット界へ提出する行為は微妙である。業務上知り得た機密性のある情報は誰でも閲覧できるネットへは提出してはならない。私は関連企業に対する利害関係はまったくなく特殊な情報も持ち合わせない。他の同種記事と同様、現地で得られた映像とネットから得られる情報のみを元に客観的な記事を構成している。即ち一連の記事はまったくの趣味的・辞書的意図をもってのみ作成されている。
しかし尚も記事に問題がある場合はお知らせ下さい…訂正や削除要請は随時対処致します

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