展望デッキに上がってきたとき端にパネルの実物が置かれていることに気付いていた。
敷地にあるのと同じ太陽光パネルらしい。これが最小単位のパーツなのだろう。
対等出資会社の相手先となる昭和シェル石油グループによるもので、諸元が記載されている。
もちろん門外漢の私には理解できなかった。
(そもそも何で太陽光パネルから電力が取り出せるのやらも分からない)
展望デッキは誰でも訪れて見学できるものの、来訪者として関連企業や同様の太陽光発電パネル設置を検討中の会社担当者向けを想定している。どのような原理でパネルから電力が取り出せるかなど基礎的部分の説明はされていない。しかしこういうものから電気が造れるという認識を持つこととその広大さを目で見て確かめるのも一興だろう。
パネルの接写。表面には細い筋が埋め込まれている。ちょうど昔の車のリアウィンドウに埋め込まれた曇り止めの電熱線みたいだ。
写真では液晶パネルみたいに柔らかそうな外観だが表面は凹むような材質ではなかった。
改めて敷地に設置されたパネル群を眺める。
入口に近い部分の角に設置されている分は通常のよりも短い。
縦4列×横16行だろうか…繋ぎ合わせた一枚板を一定間隔で配置している。
基本部分はもっと長い。横が何枚あるか目がうろうろして数えきれなかった。
この長方形モジュールがいくつか集まってそ一つの正方形区画を造っている。
パネルを写真に撮影すると、光線の加減で若干の濃淡はあっても一様に黒である。ガラスだと普通なら太陽の入射角によってはモロに反射して眩しい場所ができる。太陽光発電パネルはそのような現象が起きないよう加工されているらしい。
ビルの窓ガラスのように眩しいのは太陽光を反射しているわけで、そうなっては太陽光エネルギーをロスしていることになる。更に反射光が周囲に及んでは近隣の居住者が眩しいだけでなく、焦点の加減によっては虫眼鏡で紙を焼くのと同じ現象が起きてしまうだろう。パネルの表面は平坦ながら、外観はザラザラしているように見えるのはそのように造られているからだろう。
日本全国でこのような太陽光発電パネルが次々と設置されている現状からふと変な妄想が頭を過ぎってしまった。
”搾り取られた”太陽光によるエネルギーの差分は
何処へ行くんだろう?
パネルが設置される以前は、この場所はただの産業廃棄物の最終処分場だった。そこへこうして大量のパネルを設置して膨大な電力を取り出している。太陽光の降り注ぎ方が大きく変わったとは考え難いから、以前は広大な敷地や周辺の大気を暖めたり大地に熱エネルギーを与えあるいは反射していたものが一部電力として取り出されているのである。素人考えながら、例えばパネル設置前よりも埋立地周辺の地温が下がるなど観測可能な変化は起きないのだろうかと思ってしまう。何処へ行くんだろう?
恐らくそうはならないだろう。太陽が降り注ぐエネルギーは膨大で、本当にごく一部だけをパネルで取り出しているに過ぎない。この埋立地の周辺だけで考えてもパネルが存在しない土地面積の方が遙かに大きい。仮にパネルが設置された場所の地温に変化があったとしても、ただちに周辺から熱エネルギーが移動して埋め合わされてしまうのだろう。
(キチンと理解するには恐らく太陽光発電の原理から勉強せねばなるまいなあ…)
展望デッキから降りて自転車の元へ戻った。
最近流行りの地盤高の標示が設置されていた。6.6mというからパネル設置にあたって更に盛土したのではないだろうか。
先ほどの軽バンはまだ敷地内を移動しているようだった。
さて、ユーエスパワー発電所と直接の関連性はないが、まったく無縁でもないこの近くにある目立つものを撮影しておかなければなるまい。それはこのレポートの当初から地味に存在感をアピールしていた。
紅白に塗られた高い鉄塔である。
それは有刺鉄線付きフェンスで囲まれたすぐ外側に建っていた。
厚東川を渡るこの鉄塔は見上げるほどに高い。
制限高を越えるため規定によって紅白にペイントされている。
現在は管理区域内にあるので真下まで行くことはできない。
しかしフェンス越しに鉄塔の諸元を調べることができる。
フェンスから見える位置にプレートが取り付けられていた。
この程度の距離ならズームで楽々撮影可能だ。
UPC火力線の4番鉄塔であった。
(プレートのみの拡大ショットはこちら)
恐らく石炭火力発電所の電力を西宇部変電所に送る経路だろう。ユーエスパワー発電所では独自の昇圧設備で中国電力に売電しているというので、この経路に接続し中国電力に送電しているのではないだろうか。
なお、石炭火力発電所は去年の7月に冷却用設備の不具合により運転を停止[1]し、2014年においてもなお停止している。[2]
もう一つの門扉が南側に設置されていた。
これは従来の埋立地部分への出入りと鉄塔メンテナンスのためのものだろう。
「この中へ入ってはいけません」の赤文字は分かるとして…何故かその下の文字が山口県となっている。
埋立地のうち厚東川護岸から一定幅は県有地になっているのだろうか。
今や有刺鉄線付きフェンスが設置され、防犯カメラが監視中となっている。
もうこの中へ立ち入ることは永遠にできないだろう。
フェンスの網目へカメラのレンズを押し込んで撮影。
ダブルトラックの未舗装路が今も遺っている。かつては釣り客もここを通ってポイントを探し歩いていたのだった。
宇部興産大橋が見える。
しかしこのアングルでは今やこれ以上近づいて撮影することは能わなくなった。[3]
ここまでを撮影して撤収した。
私が撮影している間、別の営業車がすぐ近くで停まった。結構見学者があるようだ。
今後大きな変化が起きるとは考えがたいから、何度も訪れる場所でもなく続編が作成されることは多分ないだろう。
他方、先にも述べたように企業担当などに限定されず誰でも現地を訪れて展望デッキから太陽光発電パネルがズラッと並ぶ奇観を眺めることができる。近くまで訪れる便があったら一度見に行くと良いだろう。現地への行き方などの概要は本編の総括記事を参照されたい。
出典および編集追記:
1.「宇部興産の火力発電所が停止、長期化の懸念も」エキサイトニュース(2013/7/10,10:48)
2.「宇部興産、火力発電所停止長期化も 中国電向け」日本経済新聞(2013/7/4,0:30)
3. 今から4年前に興産大橋をできるだけ近くから撮影するために埋立地の南端を訪れたことがある。当時はフェンスや立入禁止の表示板はなく釣り客などが出入りできる時期があった。
一応記事化は予定しているが現在では立入禁止になっている状況を鑑み限定公開を予定している。
1.「宇部興産の火力発電所が停止、長期化の懸念も」エキサイトニュース(2013/7/10,10:48)
2.「宇部興産、火力発電所停止長期化も 中国電向け」日本経済新聞(2013/7/4,0:30)
3. 今から4年前に興産大橋をできるだけ近くから撮影するために埋立地の南端を訪れたことがある。当時はフェンスや立入禁止の表示板はなく釣り客などが出入りできる時期があった。
一応記事化は予定しているが現在では立入禁止になっている状況を鑑み限定公開を予定している。