無人化されている筈の桃山開閉所にとっても似つかわしくない設備。それは…
トイレである。
フェンスの内側にこれを見つけたとき、「えっ?何で?」と思った。臭突の存在でトイレはほぼ決定的だ。
いくら無人化されていてもメンテナンス要員は訪れるし、作業中に用を足したくなることもあるだろう。しかし年に数回程度しか訪れない施設内にトイレがあるのも変だし、それも設置されているのは主に作業することになる変圧器などのある区域から思い切り離れた場所だ。
前編となる総括でも桃山開閉所はかつては広い敷地にもっと機器が設置されていると述べた。今より頻繁に作業員が訪れていた時のものだろうか…しかしこのトイレはそれほど古くはない。臭突が強制ファン型だから精々昭和後期だろう。
(トイレに反応したのも宇部岬変電所にも奇妙なドアのトイレがあったからだ)
距離的にはこのトイレ近辺が一番あの気持ち悪い緑色ケヤリムシ群に近い。
しかしなお太陽の位置が逆光になるために明るさバランスが崩れて映像が鮮明にならなかった。
あの気持ち悪い青緑色を映像で表現したい…背景をホワイトアウト気味に明るさ調整して撮影してみた。
光の感度が上がる代わりにどうしてもピントが甘くなってしまう。ズーム操作することはできても単純に拡大されただけで鮮明な映像を撮ることはできなかった。
距離が離れるのもやむなしだが順光でもう少し撮影しやすいアングルを求めて先へ移動した。
戻ってくるときに撮ったものも含めて結局次のフェンスの折れ点から撮影したものが一番明瞭に写っていた。
(左端の門型鉄塔にある碍子が接続されない腕金は地中化以前のものだろうか…)
柱状碍子、遮断器接続部の碍子…その殆どが同じ色である。
品位を落とさない程度にズーム。
写真では碍子のヒダの部分が幾分汚れているように見えるが、実際少し埃を被っているようにも思われた。
お約束の電気音は聞こえてこなかった。
フェンス外側の様子も撮っておかなければならない。
何とか人が通れる程度の余剰地があってその外側はかなりの斜面だった。みっしりと竹が生えている。
この辺りは何の機器も設置されていない草地状態で、一部コンクリート通路のようなものが遺っていた。
更に離れたところに大きなコンクリート建屋があった。
造りからしてそれほど古いものとは思われない。
アルミ扉には制御室の文字があった。
制御室入口の横にはエアコンの室外機が設置されているので、あるいは中で作業することもあるのだろう。
(トイレを設置するならこういう場所に併設すると思うのだが)
機器群からは遠ざかったが太陽が背中の位置に移動し撮影しやすくなった。
いずれもフェンスの外側からなので網目の一つにレンズを押し込みシャッターを押している。この場所から若干オーバーラップさせつつカメラを左へ振って連続撮影した。
一段高い敷地にある機器群は中国電力の宇部変電所のものだ。
この辺りからフェンスの外側は草刈りこそされているものの傾斜が大きく歩きづらくなった。
それでも藪を漕ぐ必要はまったくなかった。
関係者でも殆ど訪れることのなさそうな荒れ地である。
その一角に見慣れない橙色のパイプが野積みされていた。
このパイプの近くのネットフェンスへくっつけてプラスチック製の部材が置かれていた。
半円状に窪んでいるからあのパイプを固定する部材だろう。
この白い部材は窒素線のNo.90鉄塔を視察したとき見たものと形は同じだ。黒いビニルテープで被覆されたケーブルが白い陶器のような碍子の上に置かれていた。恐らく同様の絶縁機能を持つものだろう。
パイプには高電圧ケーブルの文字が見えたので、この中にワイヤを通して埋設するのだろう。
窒素線はこの記事をかく現時点で既に運用を停止し、ワイヤや鉄塔はすべて撤去されている。しかし地中化部分の鞘管は敢えて掘削してまで除去はされていない。これと同様のものが埋設されている筈だ。
どこまで進めるものだろうか…と興味本位で歩いたきたところ、どうやら本当に宇部変電所部分も含めてぐるっと一周できそうに思われた。敷地の端までフェンスが伸び、その外側を回り込む点検通路が見えていたからだ。
(「桃山開閉所【2】」へ続く)