宇部興産窒素線・No.90鉄塔

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記事公開日:2013/12/28
宇部興産(株)窒素線のNo.90鉄塔は、浜1丁目にかつて存在した地上部最終の鉄塔である。
下の写真は現役で稼働中にズームで撮影している。[2009/7/5]


鉄塔の位置図を示す。


厚東川発電所より送られた電力は、このNo.90鉄塔より地中へ潜り、窒素工場まで送られていた。[1]
建設されたのは昭和24年10月のことで、当初からここで地中化していたかどうかは分かっていない。
幼少期から見てきているので30年以上前から今の状態だったことは確からしい

《 個人的関わり 》
浜通りと浜バイパスの交差点近くにあるため、信号待ちをしている間も注意すれば見ることができる位置にあった。山の斜面に基礎部分を造って建てられた比較的大きな民家の裏手にあるので、幼少期はその家が消費する電力を専用線で導いているものと勘違いしていた。

浜バイパスはテーマ踏査活動を開始してから自転車で頻繁に通る経路である。しかしNo.90鉄塔が民家の真裏に建っており、撮影には民家にカメラを向ける形になるためにそれほど多くの写真は撮影されていない。
近接しての撮影は考えていたものの、民家の庭の中に建っていると考えていたために現役稼働中は一度も鉄塔には近づかなかった。

他の鉄塔が極めて早く解体された中、No.90鉄塔は架線と引き込み碍子が外されただけで比較的遅くまで遺っていた。[2013/12/12]


結局、No.90鉄塔は同年の12月25日に解体撤去された。かつて鉄塔が建っていた基礎周辺部分は現在のところそのまま遺されている。一連の撤去作業が遅れた理由は不明だが、現状復旧に関して土地所有者との協議が終了していなかったからと思われる。

《 アクセス 》
現地踏査日:2013/12/5
      2013/12/12
記事公開日:2013/12/28
この物件は既に失われており踏査記事がいくつも作成される予定がないので、初めて現地を訪れた記事をそのまま後続記事として記述する。実際に現地を訪れたのは、架線の撤去が終了し各鉄塔の撤去が殆ど進んでからだった。
一部で写り具合の良好な別の日撮影の写真を流用している

No.90鉄塔は市道下条浜通り線の終点付近から民家の裏側に見える。


民家は山の斜面に建っていて近づく道がないように思われたため、接近するには民家の裏庭を通らなければ到達できないものと考えていて稼働期には一度も訪れなかった。


市道下条浜通り線のカーブミラーが立つ場所から細い路地があり、ここから行けるようにも思われた。
しかし今まで訪れた限りでは数軒ある民家の庭へ入っていくように思われたので先へ進んだことはなかった。


最初にここを訪れたのは、計画線として既に記事を作成している市道浜中山線の追加踏査を行った時だった。この路線は現在場所に起点が設定されているので、未成線市道を示す何かがあるのではと考えて偵察していた。

架線を除去され鉄塔だけになっている状態のNo.90は他の場所からも見えた。現に稼働していないということは接近できる場所まで行ったとしても危険はないし、メンテナンスで鉄塔を訪れる作業員が毎回あの民家に断りを入れて庭先を通っているとも考え難い。現地へ到達できる経路がかならずある筈だと考えた。
窒素線の追跡は現時点で決して充分行えているとは言えず、しかもこの先無くなってしまうことが確実で、今まだ撮影できるなら着手しておきたい気持ちも後押しした。

入り込もうとしている道は本当に民家の庭へ続いていそうな気配だった。もし住民に誰何されたなら、私は姑息な手段に訴えず本当のことを告げようと思った:「歴史ある窒素線が廃止されるので鉄塔の写真を撮りに来た」と。

この道から行けるとは限らないので、まずは偵察の積もりで自転車を脇へ寄せ、堂々と歩いて入った。
小道はうねうねと先へ続いていてすぐに民家の玄関で行き止まり…という塩梅ではなかった。


次の小道を曲がるとき、山側に自然石の石積みが出来ているのを見つけた。
そして石積みを見上げると…


山の方へ登っていく道らしきものがあった。
方向からすれば間違いなくNo.90鉄塔に向かっている。


単に向山へ上がる道の一つかも知れないが、すぐ近くを通るなら鉄塔への索道を兼ねているだろう。
これは間違いない…
その感触を得た後、踏査が長丁場になると予想した。この生活道を通る住民の邪魔にならないよう一旦自転車の元へ戻り、道の端へ寄せて施錠した。


向山の方へ登る道は、生活道を数十メートル進んだところから分岐していた。
振り返って撮影しているが既に自転車を停めた場所は見えない。


下から見上げたところ。
いきなり急な登りになっている。頻繁に人が通る道ではなさそうだが、階段状にコンクリートで固められていた。


山に登る方向に民家はないので、心理的負担は軽減された。幸い一連の偵察では誰にも遭遇しなかった。

向山に登る道というのも一つの答えのようだった。
登り坂の途中に今は殆ど顧みられていないと思われる立像が置かれていたからだ。


かつてこの近辺に住む人が設置したのだろうか…
像の前にはお賽銭が散乱していたがお花などは供えられていなかった。


像の成り立ちが気になったが背面から撮影はできなかった。
階段のすぐ下が民家で、もし住民があるなら私の挙動が丸見えだったからだ。
二階部分に生活感が感じられず廃屋かも知れない


コンクリートの塊でできた階段を登り切ると…
やはりそうだった。


そのものズバリ…あの鉄塔に向かう索道だったのである。


この経路を地図表記する。
国土地理院地図の最拡大表示に経路を上載せしている。
表示に時間がかかるなどの不具合が出るかも知れない[2]


現地で記録してきたものは後続記事で詳細に述べるとして、この索道は私が訪れた時点では他の何処にも通じておらず、鉄塔の前で行き止まりだった。
しかしこの道は鉄塔管理の専用道ではなくその先が自然廃道化したものと思われる。階段のところに見た石仏と鉄塔の敷地前に置かれていた円筒形の水槽が根拠だ。このような水槽は向山の至る所にみられる。水が得にくい台地を耕して畑にしたときの灌水目的だろう。

これほど容易に到達できるのなら、現役時代に来ておきたかったと切実に感じた。

(「宇部興産窒素線・No.90鉄塔【1】」へ続く)

出典および編集追記:

1. 現在の国土地理院の地図では送電線の経路は表示されないことになっている。しかしNo.90鉄塔の位置には現在でも坑口のような記号が記載されている。以前はここまで送電線の経路が記載されていた。

2. OSやブラウザによっては新規リリースされた国土地理院の地図を埋め込んだページで履歴に障害が発生(「戻る」ボタンを操作すると一瞬フリーズする、前のページに戻れないなど)する。

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