宇部変電所【2】

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(「宇部変電所【1】」の続き)

市道小松原桃山線は抜け道としての活用が多く、私自身月に2〜3回は北小羽山から鍋倉方面に向かうのに利用している。私の場合は夕方以降通ることが殆どで全く意識されないのだが、昼間の時間帯に車で通ると圧迫感を覚える場所がある。

それは変電所の周囲をぐるっと回る狭い区間のある場所なのだが、
上を通る送電線が異様に低い。


一番下の位相にあたる電線は、目測で市道の路面から6m程度しかない。市道を横切って変電所に出入りする送電線は他にいくつもあるが、このルートだけは明らかに低いと分かる。極度の電磁波アレルギーを自称する人なら、この下を通りたくないかも知れない。

送電線はちょうど市道の退避用コブ状領域の上を通っている。真下に自転車を停め置いて離れて撮影してみた。


自転車の座高が1m弱で、舗装面から直下のワイヤまで自転車6段分くらいしかないことが分かるだろう。

乗用車との対比。
普通車なら別に何の問題もないのだが…もしブームを下げ忘れたトラッククレーンがこの区間を通ってしまえば、間違いなく「やっちまった」になるだろう。


もっともこの市道は大型車両は通行不可となっている。それ以前に市内を走る営業車両ならこの道が狭いこと位は周知なので、背の高いダンプトラックやトラッククレーンが入り込む余地はない。
市道小松原桃山線の終点側に禁止標識が出ている…しかし市道真菰線側にはなかったと思う

しかし大型車両でなくとも2tダンプに引っ越し用の荷物を高々と積んで通るとか、まこも池で釣りしてカーボンロッドを背負ってこの下を歩くなんてのは自殺行為だ。
空気は電気の不良導体なので剥き出しのワイヤを空中に張っても大きなロスなく送電できるのだが、空気より相対的に伝導率の良いものが接近すれば、接触しなくても間の空気が「破られて」電気が流れる。電圧が高ければ絶縁を破ろうとする力が強くなる。このような高圧線なら、恐らく1m程度に近づいた時点で撃たれるだろう。

危険防止と電磁波の影響を危惧する意見もあって、交通量の多い道や住宅地の上を横断する送電線は、鉄塔を嵩上げすることで対処されている。しかし交通量の少ない市道や人が近づく可能性の少ない山あいを通る鉄塔では未だに低いまま放置されているものがある。この鉄塔もいつかは対処されるかも知れない。

余談だが、高圧の送電線下でトラッククレーンなどを用いた作業を行う場合、所管の電力会社に届け出が要るようだ。遙か昔のこと、親元の敷地を造成しL型擁壁を据え付けるとき、下請け業者が知らずにトラッククレーンを操作していて中電のパトロールカーから警告を受けたことがあった。

真下まで移動した。
比較対象となるものが近くにないので高さが実感しづらいかも知れない。


ズーム撮影し、この鉄塔が宇部下関線という路線名であることを確認できた。


これほど低いのでちょっとズームするだけで2連の耐張碍子をとても間近に眺めることができる。
この写真だけは3年前に初めて訪れたときのもの


この付近を動画撮影してみた。
[再生時間: 28秒]


それにしても狭い市道をひっきりなしに車が通る。平均的に見て毎分1台は通過していく塩梅だ。狭隘区間は普通車一台がやっとで、私がフェンスに貼り付いていても邪魔になりそうな位に狭いし、何よりもとっても奇特な人間に見られてしまう。じっくり観察できるような状況ではなかった。

もう一本西側を通る引き込み鉄塔がある。これに比べても奥の方を通る鉄塔は異様に低い。


変電所の近辺にある一般家庭は、ここから直接降圧された電力を受けているようだ。
敷地内から一般家庭向けの電柱が始まっていた。


2本のスパイラル管は空のまま設置されていた。将来回線を増設したときのためだろう。


この場所までが市道小松原桃山線の狭隘区間で、ここより西門前付近まではどうにか離合できる幅になる。


左側の山へ分け入る道が古道とされる市道崩金山線である。詳細は以下の記事にて。
派生記事: 市道崩金山線

このあたりから市道の片側には民家が並び、変電所の敷地は一段高くなって外からは眺められなくなる。
その高低差を埋めるように先で市道が若干高度を上げ、そこに西門がある。


この場所をポイントした地図を示す。


市道は西門前でこの路線上の最高地点に到達している。よく見ると西門と東門を結ぶように敷地内へ点線の経路が描かれており、双方の門の前で市道は不自然なクランクになっている。
このことから勝手にこんな憶測を描いてみた。
かつての市道は敷地内を通っていたのでは?

これは国土地理院地図の拡大図だ。こちらでも同様に敷地内部を通る点線が記載されている。


点線の道は国土地理院の表記では”一般車両を通さない道”となっており、単なる中電の作業用通路と言えばそれまでである。実際、その可能性の方が大きいだろう。他方、昔は変電所の敷地が今より狭くて市道は現在の東門と西門を結ぶように通っていたが、変電所の機能拡充ということで北側に敷地を拡大し、市道もその外側を巻くように付け替わった…という可能性はないだろうか。
この辺りは調べてみないとちょっと分からない

西門のすぐ内側に巨大な鉄塔がある。山口変電所でも同様のものを見かけた。


パラボラアンテナらしきお椀がついていることから、電波の送受信を行っているように思える。


敷地内にコンクリート建て4階くらいの建屋がある。かつては作業員が常駐していたのだろう。


入口のイブキに隠されていて分かりづらいが、意外に西門前のスペースは広い。車数台は余裕で駐車できる。


電波塔の横には中央が凹んだ平屋があり、何かコンベアのような配線が伸びている。もちろん何のためのものかは分からない。
建屋から地中に伸びている巨大なダクトも気になる…


西門の門扉越しに眺められるものはこれだけだ。
見たところ特に危険そうな場所はない。こういう場所を係員随伴で見学するツアーなどがあれば良いのだが…


宇部変電所も現在は無人化され、善和にある制御所からコントロールされている。
非常用のインターホンが通用門横に設置されていた。


常駐はしないものの保守のために散発的に作業員が訪れることはあるようだ。
建屋横の通用口に何やら張り紙が見えていて興味を惹いた。


ズーム撮影でやっと読み取れる距離だ。
どうも建屋の老朽化からか、耐震強度が低くなっている箇所があることを注意喚起する張り紙のようだ。


外観はベージュ色のコンクリート建てだが、意外に築年数が経過しているらしい。入室にはヘルメット装着で揺れを感じたら着色されている区画から退避するように…と書かれている。

さて、ここまで観てきたものは過去に外部ブログで記載したものが殆どだ。記事をお読みになった方なら過去ネタの焼き直しに映って退屈だったかも知れない。
しかしここから先は殆ど以前の記事にない内容になる。それもその筈で、今回踏査した中に以前は接近できないだろうと諦めて放置していた場所が数ヶ所あったからだ。その中で未だに正体が分からず、首を捻ることになる物件に出会うことになる…

(「宇部変電所【3】」へ続く)

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