宇部変電所【4】

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(「宇部変電所【3】」の続き)

変電所敷地の外側には異様に沢山の碍子をぶら下げた鉄塔が建っていた。
何と5回線を抱えている。このうち最下段の1回線が先ほど見た山大医学部線の地中化開始地点に引き込まれていた。


フェンスの外側なのでその気になれば足下まで行くことはできた。しかし雑草が膝下まで伸びる今は時期が悪い。虫害が心配で進攻する気力が起きなかった。


この索道の他に、鉄塔より下の方へ降りていく踏み跡があった。もっとも索道より更に藪が深いので踏み込まなかった。

この場所を地図でポイントしている。


地図で見ると、桃山中学校の裏手へ降りるような道が記載されている。桃山中学校自体訪れたことがないので分からないが、変電所付近から直接中学校へ降りる里道があるらしい。
ロープ1本張られただけで立入禁止になっていない理由かも…

山大医学部線への引き込み。
この近辺で既に足下は草ぼうぼうである。


上の写真を撮った後のこと、改めて先もカメラを向けたあのコンクリート壁を観察した。
やっぱりおかしい。不自然だ。

何?この奇妙なコンクリート壁は?


コンクリート壁の上半分は本体と一体化しておらず、後から打ち継ぎ足したような感じだ。
特に下半分は正方形の絆創膏を等間隔で貼り付けたような感じになっている。絆創膏の中心部分は若干盛り上がっており、飛び出た釘か何かを覆うように貼り付けたようだ。これと似たものを見たことがない。
何か気味が悪い…sweat
この小屋の正体が気になったが、詳しく調べる前にまずは簡単に観察できる変電所敷地内の方にカメラを向けた。難しいやつは後回しだ。

お約束の機器がひょろひょろカーブを描いたワイヤで結ばれている。その間には比較的新しい縞鋼板の蓋が掛かった溝があった。


何とも言えない非日常的な光景だ。


提灯みたいな柱状碍子。先に見た赤茶けた門型鉄塔の内側になる。取りあえず死んではいないようだ。


フェンスは奥まで伸びていたが、門扉に遮られてここから先には行けない。したがって変電所の敷地内を観察できるのもここまでだった。

門扉の先は空き地になっていて、その一番手前側にあの意味不明な小屋とコンクリート壁があった。
一番外側になるフェンスとは高さが違う…ここも中電の施設なのだろうか…


民家と思われた建屋は、変電所の設備の一部らしかった。屋根の形状、明かり採りの小窓、屋根の下に着いている換気口のせいで如何にも昔の民家っぽく見えたのだ。


更に接近し、なるべく腕を高く上げてフェンス内側のものを撮影した。
建屋は円筒形のコンクリート基礎の上に載っていて、何故か一部が中電のフェンスからはみ出ている。敷地内にある側の基礎には太いパイプが伸びているが、ここからは観察できない。


敷地側には階段があり、庇付きの扉がある。
基礎が円筒形で基礎部分に銀色のパイプが接続されているとなれば、想像されるものはポンプ場だが…

まさか…ポンプ場ではないだろう。
位置的には宇部変電所は高台になるので、配水関連の設備があっておかしくはない。しかし配水設備ならここから200m程度離れたもう少し高い場所に昔から配水池がある。そもそもフェンスの注意書きは明らかに中国電力のものだ。変電所の敷地を間借りして配水設備を置く筈もなく、普通なら中国電力とは別途の門扉を造る筈だ。

仮に中国電力独自の所有物としても、変電所にポンプ室?
そんなものが必要なのだろうか…

入口の扉に何やら文字が書かれている。フェンスの外からだとズームでないと窺えない。


この建屋の正体を知る参考になる筈だ。頑張って背伸びし焦点を合わせる。
そのまさかだった。

ポンプ電源 MWh


MWhの意味するものは不明だが、それ以前にこの建屋の存在自体意味が分からない。
変電所にポンプ室が要るようなことがあるのだろうか…

そもそもこの建屋自体、如何にも構造が怪し過ぎる。
フェンス門扉側にもコンクリート壁の側面には同様の奇妙な模様があった。


ツルンとした円筒面ではなく、こちら側にも正方形状の絆創膏が貼り付けられている。後から貼り付けたにしても相応に古い設備らしく、コンクリートは至る所変色していた。
チキン肌みたいで何だか気持ちが悪い…sweat

コンクリート壁の上部からは4本のパイプが地中に潜っていた。


このあたりをもう少し念入りに調べようと思って接近しかけたのだが…
ストップ!!
思わずサッと身を引いた。


これ以上近寄るな!とばかりに、これ見よがしにイラガの幼虫が糸を吐いて空中を動き回っていた。知らずにパイプの下まで潜り込めば、間違いなく服にくっつけてアジトまでお持ち帰りするところだった。こいつは見た目がグロいだけではなく、素手で振り払うなどして皮膚に触れると相当エラい目に遭う。今の季節はこれだから迂闊に草地や木の下などに入れないのである。

潜入できないなら、今回踏査できるのはここまでだ。
と言うかコイツの姿を目にした途端踏査意欲が完全に萎えた

引き返そう。
こういう場所へ頭から潜り込むには夏を越して涼しくなるまでお預けだ。


自転車の元へ戻る。
来るとき撮影したこの立て札をしげしげ眺めていて、あることに気がついた。


どこかで観たことがあるような顔だな?


古い立て札を白く塗りつぶして再使用しているのだが、下書きを完全に消しきれていない。この立て札には見覚えがある。新山口変電所に行くとき道中に立っていた懇切丁寧な案内看板の亜種だ。


新山口変電所へ向かう途中、この種の案内看板をしつこいくらい見せられた。どうやら数多く作りすぎて余ったので、はるばる宇部まで運んできて上書きし流用しているようだ。

結局、気になる正体不明のポンプ室を残した形で退散することになった。
あれが何であるかはいろいろ推測される。扉には「ポンプ電源」という粘着テープにプリントした文字が見られた。しかしこの小屋自体がポンプ室なのではなく単なる電源制御用で、ポンプ室は別の場所にあるのではと思う。
機器群に供給する冷却用の溶媒を循環させるポンプ室かとも思ったが、そんな高尚なものではないだろう。これまでいくつかの変電所を観てきたが、そんな設備は見あたらなかった。古そうな構造物なので、過去に使われていて現在は廃されているのかも知れない。
この正体が何であるか中国電力は当然正しい答えを持っているはず

山大医学部線への引き込み鉄塔の方向は、秋口から冬場にかけて雑草が枯れ果てれば進攻できると思う。もしかすると今回の冒頭で訪れた桃山開閉所を裏側から眺められる場所があるかも知れない。
現地はフェンスの外側で接近は問題ない場所だが、季節柄草地へ入れないので追加の踏査は涼しくなってからになるのは致し方ないだろう。

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【追記】(6/27, 22:30)

連載モノとしてはこれでひとまず終了だが、本日の夕方再度桃山方面を通る用事があったので、どうにも自分ながら気になる部分について追加の写真を採取してきた。
いずれ続編で報告する。
(「宇部変電所【5】」へ続く)

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