宇部変電所【7】

インデックスに戻る

(「宇部変電所【6】」の続き)

正体不明なこの建屋自体は既に今までの連載記事で報告してきた。
この場所からの撮影は初めてである。


思ったよりも円筒形コンクリートは大きい。直径10mくらいある。建屋は円筒形の変電所寄りに載っているようなイメージだ。

継ぎ接ぎの目立つコンクリートの側面からは数本のパイプが地中に伸びている。
上の建屋にも繋がっているらしい。一部はかなり錆び付いている。


建屋の上部を撮影。
スレート屋根や庇の構造などから推測するに、昭和30〜50年代の建物のように思う。
アルミサッシ窓や雨水の樋は当然更新されているものと考えた上で


建屋は民家のように見えながら軒先には電線が繋がっていなかった。しかし近くにある外灯も電線が見えないので、埋設された電源線から電源を取っているのかも知れない。

この謎の構造物に隣接して多重回線の鉄塔が建っていてネットフェンスが張りだしている。
初回訪問時はこの辺りはかなり酷い藪で接近する気が起こらなかった。


フェンスの外側から鉄塔を撮影。
送出側は確か相生線、宇部南支線、山大医学部線だったと思う。


このフェンスを過ぎると初めて「謎の建屋」を調査したときの場所まで出てきた。
変電所東門の前からフェンス外周を伝って一周できたことになる。


すぐ上を山大医学部線が通っているせいか、近くの育ちすぎてしまった樹木は伐採されたようだ。


樹木の切り株が残っていたので、その上に立って背伸びをしてみた。謎の建屋の上部が見えるかも知れないと思ったのである。
しかし視座が数十センチ上がった程度では全然足りなかった。


絆創膏だらけの外壁は高さが2mちょっとだ。どうにかなりそうな高さながら外側に足を掛ける場所がなく上部を窺うことができない。


登り切れないことを見越してかフェンスなどは設置されていなかった。上部を作業員が歩くこともあるらしく、転落防止柵が設置されている。


すぐ傍らに設置されている外灯のコンクリート基礎が地面より若干高いのを見つける。
これを利用すれば…何とかなりそうだ…^^;


何だか黒いことを始めようと目論んでいるように思われるだろうが、そんなことはしない…この建屋が立入禁止フェンスの内側にあることは初回訪問時から知っていた。自分は入りはしないが、カメラにちょっと先を偵察して欲しいだけだ。フェンスの内側へ侵入して写真を撮りまくっていたら、明日の夕刊あたりに今度は自分が撮影された写真が掲載され一躍有名人になれるかも知れない…^^;

基礎コンの上に登り、更にボルト上へ足を掛けて右手にスタンバイしたカメラを持って思い切り伸び上がった。
上方に差し上げたカメラに偵察させた映像だ。


一面、コンクリートの平面で開口部はもちろん蓋らしきものもない。何かの液体を貯留する円筒状の水槽と思われるのだが…点検口などはすべてあの建屋の中に格納されているのだろう。

宇部変電所の高いブロック塀が始まる地点まで到達した。
左側のフェンスは山大医学部線の地中化点だ。


足元の良い道を引き返すなら、ここから市道へ出た方が安全で早い。
しかしこの近くにある造園業者の敷地近くを通ることになり、そこには車が数台停まっていて作業している人の姿もあった。


通れる筈のない場所から人が歩いてきたと思われるのも嫌で、結局そのまま引き返した。

謎の建屋が見える一角から振り返っている。
思えばこの敷地も用途が不明だ。謎の建屋を中途半端に囲うようにフェンスが設置されている。そして敷地は長いこと何も利用されておらず、荒れ地のようになっていた。


建屋に上がる階段の付き方も変である。フェンス門扉に対して逆向きの階段だ。
門扉と階段は後から付けられたもののようだ。


それと言うのも昭和49年度版の航空映像を眺めると建屋のない円筒形状の構造物のみが観察される[1]からだ。
変電所でこのような円筒形のコンクリート構造物を備えた例を知らない。正体を推測するのも困難だが、有り得そうなものとして、
(1) 非常時の燃料貯蔵庫
(2) 絶縁油などの供給施設
(3) 機器冷却用の貯水槽
のどれかだろうか。

このうち (1) か (2) だとすれば、この施設はもう現役では使われていないと思う。供給が必要な機器から離れ過ぎているし、特に燃料庫なら火気厳禁などの文言がどこかに出ている筈だ。しかしそんな表示など見当たらなかったし、何よりも定期的に燃料補充のための車両出入りが必要だ。しかしフェンス門扉はまったく開閉された様子がないのである。

(3) が正解ではないだろうか。かつては熱を発する機器を水冷していて、ここに密閉された貯水槽を造ってポンプで循環させ冷やしていた…などという想像だ。


この場合も現在は使われていないのではと思う。そもそも水冷式の機器が変電所で使用されるようなことがあったかどうかも分からないのだが…
宇部変電所自体は現役物件なので、正解を得るのはそれほど難しくはない筈だ。これを造った人が居ないにしても現に管理している人はかならず居るからだ。
中電に知人が居るので尋ねてみようと思う…正解が得られれば追記する

ここまでを撮影して素直に来た経路を戻った。


敷地を周回して一通り観察できるものは撮影したので、今後は大きな変化が起きない限り続編記事の予定はない。微細な報告は編集追記で対応する。願わくば「謎の建屋」の正体が明らかになればと思う。
時系列では以下のリンクから桃山開閉所の途中へ戻ることができる。

(「宇部興産・桃山開閉所【2】」へ戻る)

出典および編集追記:

1. 地理院地図の写真(1974〜1978年版)による現地映像。

ホームに戻る