如何にして語録を創るか

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項目作成日:2016/9/10
この項目では、今までにいくつか作成してきた語録に共通する所感を記述している。既に当サイトで作成・公開されている「語録」から移動している。

何をもって語録とするかは人それぞれであるが、ここでは語録の定義として「客観的に読み取れる以上の含意を目的として作られる気の利いた(風に見える)語句または文章の集合体」を与える。諺や俳句、短歌なども含まれるが、いずれも実際に表記される以上の叙述が含まれていなければならない。更に語調の良さ、スッと染みこむような現実味、思わず膝を打つような訴求性の技巧を問う物でもある。

気の利いた語録を創るには、主張している内容に真実味があって深いことと、できるだけ簡素な語句で簡潔に述べられていることが重要である。両者は相反するものであり、語録制作の困難の原因になっている。ここでは語録を創った際に感じた経験則をまとめている。
【 大言壮語すること 】
語録は歴史的人物や著名な発明家など偉業を成し遂げた人の特権のように思われている。それは著名人の特異な発言がしばしば引用され話題に上るからに過ぎない。語録を考えることは表現技法や感性を試す良好な題材であり、一般人にも共有できるものである。まずは自分で創ってみることをお勧めする。

その際のポイントは、語録は凝縮系であるという事実を踏まえて所感を盛り込むことである。短歌や俳句ほど制限されてはいないが、後述するようにテンポの良さや語句の選び方は語録の価値に大きく影響する。「あの経験をした人物が唱えたから真実味がある」という種の語録が目立つものの、誰が唱えても共感されるものも多い。

一部の有名人の共有物と思われている間は、大仰だとかキザであるという固定観念の払拭は難しい。作成した語録を唱えてみてキザに感じるならば、些かその印象が和らぐよう語句を選定し直せば良いのである。常に控えめな物言いをしているなら、語録では大言壮語する位でちょうど良い。これは後述する主張の強さにも相通じる。
【 パターンを作ること 】
ある程度の長さになっても簡潔性を表に出すには、まとまりの良さと語調やテンポも重要である。一般の文章でも複数事項を列挙するならそれらが従属なのか対等な並列関係なのかを意識して明示することで、見通しの良い記述が生まれる。しばしば見受けられるパターンを以下に記す。
・対比型
「a は b であり、c は d である」
「a が b であるなら、c は d である」
・類似型
「a は b だが、b' ではない」
「a が b であるように、a' は b' である」

このような記述法は特に語録や諺のようなものに多い。テンポの良さを導入することは押韻や五七五調に相通じるものもある。
【 断定すること 】
語録に「〜かも知れない」「〜だろう」は馴染まない。特に短文による語録では禁忌な存在で、主張を著しく弱めてしまう。感覚的には主張しようとしていることの4割方適合していれば、適合しない部分が6割程度あっても言い切ってしまうものである。半分以上適合しない部分を例外扱いしたり適当な反例を一つ挙げることで反証する(ふりをする)ことが可能である。語録は自分以外の他人の脳で吟味するものだから100%ズバリ誰の読み手にも適合する筈がないのであり、重ならない部分があってもおおよそ容認される。ただしあまりにも適合度が低い語録は、恐らく自分自身でも撤回したくなるだろう。
【 副詞を削ぎ落とすこと 】
断定・否定する以外の副詞は語録の内容に殆ど影響を与えない。存置させても補足説明を与えるメリットよりも冗長なイメージを与えてしまうデメリットの方が大きい。

語録を創るメリットは前述の感性の面だけではない。それを創る人の属性を手短に伝える助けにもなる。
時間が早く流れ手短で簡素が求められる現代社会では、概ね「結局何が言いたいのか?」が問われる局面が非常に多い。この流れを受けて長文大好き志向の当サイトですら、総括記事で概要を述べて詳細は時系列記事で長々しく…が確立している。プロフィールとは別にこの語録を公開したのも同様の考えによるものである。

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