常盤公園・青年の家【4】

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(「常盤公園・青年の家【3】」の続き)

この辺りの窓際はどこも雑草が蔓延っていて近づくに苦労した。しかし廃の匂いを漂わせ始めている様子にそこはかとない魅力を感じ始めてしまっていた。
そこそこ雑草の少ない窓の一つに取り付き、中を覗こうとした。


壁に「宿泊室」のプレートが確認できた。
背中から日光を浴びる形になるため、どうしても二重写り状態になってしまう。


差し込む光を手で遮ってガラス越しに撮影したのがこれだ。
この光景には見覚えがある…


思い出した。幼稚園の宿泊でユースホステルに泊まったときの寝室に似ている。横からの撮影なので写真では僅かしか見えていないが、右側の木製二段ベッドのような造りにそれを感じる。確かユースホステルのベッドがそうなっていた。

ズームで奥の部屋を偵察しようとしたが、光量不足で明瞭には撮影できなかった。


さて、先ほど見つけた水色の板があるシャワー場の裏側が気になっていた。黒々とした入口が見えかけていたのである。扉はない。
去年までちゃんと営業していた青年の家には申し訳ないが、大変に薄気味悪い感じの場所で接近するにも勇気が要った。


こんな感じでブロック積みの一部が開いていたのである。当然ながら中は真っ暗だ。
暗闇のまま放置されなければならない何かの物件では…と想像した。


悪しきものが中に潜んでいる可能性は考えなかったが、暗闇の部屋の中を覗き込むのは気持ちいいものではない。夜行性の動物が潜んでいて不意に飛び出してくるリスクもある。

一歩引いて外の自然光を頼りに撮影している。
そこもどうやらシャワー室のようだが…何故に真っ暗?


フラッシュONで撮影してみた。
先ほど見た水色の板で仕切られたシャワー場と同様の造りになっている。しかしどういう訳か採光用の窓などはいっさいなく、天井にあるべき蛍光灯の痕跡も見受けられない。かなり早い段階で使われなくなったようだ。


先に見た水色の板があるシャワー場も含めて、ちょっと意味が分からない。プールなど何処にもないのにシャワーを浴びる場所だけ整備されていたことになる。
青年の家の横には広いグラウンドがあるので、かつて今のような暑い最中に球技など行って汗びっしょりになったときなどは役に立ったのかも知れない。給湯設備があるなら、春先や秋口でも使えるだろう。あるいは純粋にお風呂とは別のシャワーだけ浴びる設備を造ったのだろうか…

今でこそ何処の家でも風呂場にシャワーはつきものだが、昭和中期にはシャワー自体が稀で、一般家庭でも普遍的になるには昭和50年代近くまで待たなければならなかった。シャワー普及のはしりの時期、少ない湯量で汗を流せる画期的な設備として導入されたのだろうか。
水色の板で仕切られているのが男性向けで、この薄暗い独房みたいなのが女性用だろうか。もしそうなら現代ではとても考えられないセキュリティーレベルだが…^^;

謎のシャワー場の更に奥は…
ここから先は最初に訪れた場所だ。例のカーテンが取り残された民家の窓が見える。ここからは雑草の海の中を歩かなければ到達できない。


お化けヤツデの葉。
傘の代わりになりそうなほど大きい。これもまた廃を支配する構成員の一つだ。


先ほど反対側から到達していたので、これで青年の家を一周したことになる。
来た経路を引き返しつつ、近づけそうな部屋に限定して接近してみた。


先ほど看板らしきものが見えていた倉庫を横から観ている。
「彫刻半世紀」という文字が見えている。何処で使われていたのかは分からない。


文字を読み取ろうと別の窓から覗いていたとき、ちょっと興味深いものを見つけた。


簡易黒板である。
それ自体はまだ絶滅危惧種というほどではなく見かけるものだが、青年の家に寄贈したとみられる。スポンサー名が隅に記載されているのは珍しい。


部屋番号や広間の名称から、青年の家の部屋構成が推測できる。1階はむしろ部屋数が少なく2階が多い。3階にも部屋があるらしかった。

改めて外から眺めてみた。
入口側に近い棟は明らかに2階である。煙突がある棟の方に3階があるのだろう。
しかし写真を見る限り3階があるようには見えないのだが…


2階のテラスから屋上へ出られるようになっていた。
手すり部分など相当傷んでいるようにも見える。


屋上から眺める常盤池はどのような景色だったのだろうか…
もう撮影できる機会はないだろう


探検めいた一連の踏査を終えて戻ってきた。

厨房の外側に置かれた自動販売機。
まさかここまで来て買う人もなかろうから撤収されず放置されているのだろうか…


驚いたことに何と現在も稼働していた。
ちゃんと電源が入っていて販売中のランプが点灯していたのだ。


確かに自販機の上に設置されている電気メーターは、僅かながら動いていた。
グラウンドを利用する人が冷たい飲み物を買いに来る需要があるのだろう。そうなれば土日などクラブ練習で人が集まるとき続けざまに売れて、それ以外の平日は一本も売れない…という塩梅だろう。
売り上げ回収と商品補充が大変そうだ…^^;

ここまで撮影して立ち去り、この日の本命である周遊園路の実地歩行を開始した。

再びこの続編を撮影しに訪れることがあるだろうか…
この記事を作成する現時点では、改装して再出発するのか壊される運命かは分かっていない。湖水ホールにも会議室はあるし、青年の家は東駐車場からは離れているので利便性はあまり良くない。ただ、静閑さは保証できるので研究所や療養施設には向いているように思う。何か変化があったならこの続編をお届けしよう。

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FBページに青年の家を掲載したとき利用者が意外に多かったらしく反響が大きかった。その後の状況を知るために再訪し追加の写真を撮影してきた。若干現地の変化があったので後続記事として案内する。

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