常盤池・楢原【4】

インデックスに戻る

現地踏査日:2013/1/27
記事公開日:2013/6/5
本編および後続編では常盤池における楢原の入り江の右岸末端部付近の低水位踏査を収録する。
対象となっているのは以下のポイントされた中心点近辺の汀である。


楢原の入り江近辺は早くから開発が進み、汀まで私有地になっている区間が多い。とりわけ右岸側は高専グラウンドをはじめとして私有地が連なっており、汀に接近することが困難である。私有地の接する箇所はコンクリート等の護岸に覆われているため自然の景観として鑑賞するに値しない。しかし恐らく常盤池周辺の開発に制限がかかる以前の時代に行われた改変であり、昭和中期から後期までの興味深い構造物が観察できる余地はある。

この区間における最初期の踏査は、高専グラウンド付近の入り江に屹立する水没建築ブロックの目視確認により成された。それは入り江右岸に近い側にあることは知られたものの、アパートの駐車場という私有地から漸く観察できる状況だった。


この場所から汀へは降りられないし、そもそも何度も来れるような場所ではない。
ここを訪れたのは今までに2度だけである

1月下旬のこと…特にこの方面の調査を実行する計画もまったくないままある種の偶然が重なり、ぶっつけ本番の踏査が始まることになった。以下、そのときの様子を時系列でレポートしよう。
なお、この踏査区間に属する水没物件2件は撮影写真が多いので派生記事として構成している。若干読みづらいがご了承いただきたい。それから一連の踏査を実行した後の所感として述べるのだが、現地踏査日において楢原の入り江の右岸側は常盤池の中でもっとも汚れた場所である。以前、鋭角点を訪れたときの堆積ゴミは相当なものだったが、今回の踏査箇所の汚染度はそれを上回る。無意識に撮影したものが掲載ポリシーに反する写真となってしまい部分的に修正しているものもある。それ故に衝撃映像の部類はないが、食事どきの閲覧はなさらないことをお勧めする。一連の写真は物件の調査報告と共に周辺区域の環境レベルの低さについて間接的に問題提起するものでもある。


---

1月はまだ外を走り回るには寒い時期である。しかし寒い寒いとアジトに籠もっていては成果は得られず身体も鈍ってしまう。仕事で常盤台方面へ向かう便があったので自転車で用事を済ませ、その後常盤公園方面を走ってきた。

帰りは市道常盤公園開片倉線を走っていた。この市道は元から狭い。自転車なので私は左端を進んでいたのだが、反対側から右側通行の自転車が走って来るのが見えたので車道へ膨れての離合は危険とみて思わず道路の右側へ渡ってしまった。
この市道は狭いのに右側通行する自転車がとても多い…歩道の未整備が原因なのだが…

渡った先がたまたまこの場所だったので、深く考えることもなくここから地区道側に向かっていた。もちろんこの先から見えるものをちょっと眺めて来ようという気持ちはあったのだが…
写っている店舗自体は今回のレポートには関係がない


詳細な経路は最後に述べるとして、いくつかの偶然も重なって私は今まで訪れたことがないこの場所に来ていた。
岸辺まで民家が密集する区間が殆どな中、そこは珍しく容易に立ち入れる空き地だった。
何となく接近できそうな感触があり、さっと自転車を乗り付けたのである。


そこはちょうど入り江の先端部分に向かって例の水没コンクリート構造物が見える場所だった。


水没コンクリート構造物の側面がどれほど水上に現れているかで水位の見当がついた。通常水位に戻るとコンクリート部分は隠れて中央の鋼管部分だけが現れることが分かっていた。この見え方なら低水位とは言えそれほど低くはない。実際1月は常盤池各所の低水位踏査を行ってから数回雨が降っていた。

近くで眺めたいターゲットのある方を眺める。
歩いていけるかどうかは…まったく微妙だ。しかし石垣の下に積まれた栗石は水上に現れており、あそこまではどうにか行けそうだ。


反対側を眺めている。
入り江の末端部で白鳥大橋が見えかけている。しかしたった20cm程度しかない護岸の天端を歩くなんてかなり危険な匂いがする。


護岸の基礎コンクリート部分が現れるまで水位は下がっている。
あの上を歩けそうだが…高低差が2m以上あって直接は降りられない。


勇気を出して少しばかり天端の上を歩いた。
先で天端幅は細くなっているし倒れかかる雑木にも阻まれそうだ。


再びターゲットの方向を眺めると…
護岸に沿って建築ブロックが積まれているのを見つけた。あのアパートのすぐ下だ。


民間アパートに近接することになるが、玄関側に窓はないから大丈夫だろう…たまたま出入りする人さえ居なければ視線を気にする必要はない。

それでも目立たぬよう姿勢を低くしてそそくさと建築ブロックの方へ向かった。


これはどうだろう…
水位が低いときに降りる用事を持つ人はそれなりに居るらしく、基礎コンクリートの上に建築ブロックが重ねて積まれていた。


建築ブロックはただ横置き状態で重ねられているだけのようだ。見るからに不安定で足を載せた途端ガラガラッと崩れる心配なきにしもあらずだ。まあ、降りる途中に崩れてしまっても基礎コンクリートの下は水が引いているから靴を濡らす心配はない。帰るときは再度積み重ねれば戻って来れる。むしろ崩れることで足を挫くことの方が懸念に値する。

周囲を見てもここ以外に降りられる場所は皆無だ。当然ここはやってみることになるのだが…
失敗はできない。足を載せている段階で突き崩してしまったらもう飛び降りる以外の手段を断たれることになる。それはかなり悔しい。しかし安泰に降りることさえ出来たなら間違いなく今までで最も近い場所から水没建築ブロックの写真を撮ることができるだろう…

長丁場になると感じて一旦自転車の元へ戻り施錠した。ショルダーバッグは特に次の行動へ移る支障にはならなかったが、帽子はバッグの中に入れてカメラも一旦ポケットへ仕舞った。
寒風が意外に強くて帽子を飛ばされる心配があった

積まれた最上段のブロックでも護岸の天端から1m近くあった。護岸に腰掛けても足は届かない。まったく微妙な嫌らしい高低差だがそれでも足場のブロックが置かれているだけ有り難いと思わねばならない。

== しばしデジカメ撮影は中断… ==

後ろ手で体重を支えつつ右脚を建築ブロックまで伸ばした。それでやっと爪先が届く状態だった。
体重移動する前に右脚先で軽く最上段のブロックをこづいた。ややグラついたがそれなりに安定していそうだ。もしかすると水位が高かったときからこの形を保っていたのかも知れない。

次に左脚をブロックの上に降ろした後、護岸側に体重を分散させるために後ろ前身体を入れ替えた。大丈夫…コンクリート護岸の天端に両手が届くから安泰に戻って来れる…それを確認した上でブロックの上でしゃがみ込み更に足を下に伸ばした。どうにかコンクリート基礎部分に足が届く状況だった。

まずは無事に最初のタスクをこなした。
戻るときもここから以外に上がれる場所がないだろう。


再びポケットからデジカメを取り出しまずは正面に見える水没コンクリート構造物をズーム撮影。
時刻は既に午後4時近い。日が傾き始めているのであまりのんびりもできない。


常盤池は市の持ち物である。よっぽど危険な場所に居るなら別としてこの場所に身を置くことは(酔狂だという意見はもちろん甘受するとして^^;)いけないことではない。むしろここに至る途中私有地を横切ることの方が問題だろう。だから仮にコンクリート護岸内側の目撃者から誰何されたとしても私はまるっきり平気だ。淡々と自分の目的を話すだけだろう:常盤池の岸辺を視察して回っていますと…

何処まで行けるか分からないがコンクリート基礎の上を歩いてターゲットに向かった。
その先には…


これは酷い投棄ゴミだ。自転車が基礎コンクリートの上に無惨な姿を晒していた。


錆びないアルミ製のスポークとゴムタイヤはそのままとして、ステム部分などは原形を留めないほど錆び付いていた。
池に投げ棄てられて相当の年数が経っているようだ。


足を引っ掛けないよう苦労して跨ぎ越したその先にはもう一台が…
カゴの形からいわゆるママチャリのようだ。それ以外はスポークすら遺っていない。


遺憾ながらこんな場所に2台も自転車が見つかったなら、すぐ近く(よりハッキリ言えばすぐ上のアパート)から投げ捨てられたと考える以外ない。
卒業した学生が退去するとき自転車の積み込みを忘れていて処分に困り、塀の向こうから投げ捨てた位のことだろうか。

低水位踏査だから少々の投棄物やゴミはつきものだ。
それにしてもここは酷い。ここが常盤池の一部だと信じたくない程だろう。


元が何だったかも分からないほど朽ちてバラバラになった鉄製の部材。
躓かないよう跨ぎ越そうとして思いがけないものが落ちていることに気が付いた。


磁気カードである。
これはいくら何でも新しいものだろう。


何これ?

この厚みならクレジットカードの可能性はないだろうが、もしかして…コンビニのキャッシュカード?
それもたんまりと残高があるのにうっかり塀の向こうから落としてしまったとか…?

(「常盤池・楢原【5】」へ続く)

ホームに戻る