常盤池・楢原【7】

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(「常盤池・楢原【6】」の続き)

一連の撮影を終えてブロック足場のところに戻ってもすぐには上がらずに白鳥大橋の方へ向かった。
幸いコンクリート基礎部分は水上に現れていたのでその上を歩いて進むことができた。


最初の折れ点にさしかかる。ここはブロックの足場を見つける前に上部を辿ろうと企てた末端部分だ。
コンクリート基礎下の砂地部分がなくなった。どうやら基礎全体が傾斜しているようだ。


この倒木には見覚えがある。以前、白鳥大橋から撮影したとき「水面に立つ幽霊のように見える」と言及したあの枯れ木だ。
風や波以外この枯れ枝を動かすものもないのだから、写真に写っているものと同一だろう。


軽く一跨ぎして更に基礎の上を進んだ。
白鳥大橋が近くに見え始めるにつれて次第に向かい風が強くなってきた。かなり寒い。


基礎の下は完全に池の水で覆われた。足を滑らせたからと言って直ちに溺れる心配などないが、時期柄かなり寒い思いをしなければなるまい。


非常に風が強い。帽子はバッグに仕舞っていて正解だった。被っていたならまず飛ばされる。池の中央から入り江に向かって風が吹き込んでいるようだ。
白鳥大橋の上はこの寒空の下でジョギングする人の姿が窺えた。


これは限界だろう…
傾いた基礎が災いして、遂に池の水を被る状態のところまで来てしまった。
角度の変わる先では再び基礎が高くなっているが、不定期にパシャパシャ波が押し寄せる状態の基礎の上を歩かなければならない。


さて、どうするか…
判断にあまり迷っているわけにはいかなかった。白鳥大橋を歩く人にとって私の姿は丸見えである。さっさと決着をつけたい…風の冷たさもそろそろ体の芯に堪え始めた。


ダメだ…無理して進攻する価値がない…
仮にここをクリアしたとしても、その先では基礎が完全に失われて足場がなくなっていたのだ。


先を窺うために身を乗り出して撮影しようにも、時折大きな波が押し寄せて足元近くを濡らす。
基礎の下は既に膝下まで充分に浸かる位の水深があった。


つま先立ちで波が洗う部分に立ち、カメラを差し出してズームする。
もう少し水位が下がっていれば砂地が現れていたのかも知れないが、それでも橋の下までは無理だ…いずれ進攻不可能になるだろう。


最大限にズーム。
急な角度のついた護岸にはいくつかの控え柱が見えている。その下には崩れ落ちた古い護岸の破片が波に洗われていた。


あの控え柱が付属した護岸には見覚えがあった。

別の日に白鳥大橋から撮影した映像である。
水位が上がっているので分かりづらいが、この写真で一番奥に写っている控え柱付きの護岸部分だろう。


白鳥大橋は楢原の入り江の末端部付近に架かっている。常盤池の中央に近づいていくのだから、次第に水深は増していくだろう。この部分の護岸下が歩ける程度に水位が下がることはまずないと思う。

これで充分だ。
撤収しよう。


例のアパートの前まで戻ってきた。
自転車はちゃんと留守番していたし、私の一挙一動を観察している物好きなウォッチャーの姿もなかった。


積まれた建築ブロックのところから復帰した。護岸の天端に手が届くので、ズボンの汚れるのを厭わなければ両手だけの力で自分の身体を引き上げることができた。

時刻はもう午後4時半に近かった。寒い中、特に最後は常盤池の水面を渡る冷たい風に吹き付けられすっかり身体が冷えてしまった。


さて、最後にどうやってここへ到達したのかについての「答え合わせ」をしなければなるまい。
この場所を立ち去る流れで撮影した。逆回しで考えればこの場所を特定できるだろう。

護岸部に背を向けて撮影。右側にアパートの水色の壁が見える。
ここはアパートの駐車場の続きで、護岸に近い部分は舗装されず広っぱのようになっていた。


駐車場の中をダッシュで走り抜け、コーナーから振り返って撮影。まるで野良猫が逃げるときの動作のようでもある…^^;
アパートの建つ部分だけ舗装されていて、そこから奥に広っぱの部分が見えている。


この水色のアパートは常盤寮付近から右岸側を観察したときに分かっていた。自転車でウロウロしていたとき、アパートの横に草地が見えたのであそこから護岸の下へ降りられるのでは…と考えたわけだ。

アパートの入口。市道常盤公園開片倉線に面する個人商店横の地区道から入った場所だ。


楢原の入り江は、これにて未踏査区間は右岸側先端部付近を遺すのみとなった。しかしこの内の殆どを高専グラウンドの護岸が占めており、この部分は歩けるまでに水位が下がるメドがたたない。特に興味深いものが見つかるとも思えず、新しい発見が成されるまで続編が書かれることはないだろう。

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