常盤池に関する記事を書くようになってから、入江や半島などの地形を確かめるためにネットで地図や航空映像をよく閲覧するようになった。その比較的初期から気になっていたものがある。
まずは、下の航空映像を見て頂きたい。
これは常盤池の航空映像である。場所は高専グランドの裏手だ。ここに何かが写っているだろう。
池の水面に井戸のようなものがある?
常盤池の水面に何やら丸い穴が顔を出しているらしいのが見えるだろう。縮尺からすれば直径2m程度だろうか。「よくそんなもの見つけて来たものだね」って言われそうだが、注意して地図を眺めていると意外にこういうのに気づくものなのだ。[1]
航空映像で見えている全てのものが実体を持つとは限らない。常盤池の他の部分を眺めると、例えば白い紐状のものがいくつか見つかるが、別に巨大な未知の生物が泳いでいるのではない。これは撮影された航空映像のフィルム上に紛れ込んだと思われる微細な埃や傷であって、実体はない。
この他、常盤池の南部で無数に見られる小さな点は、放し飼いにされているハクチョウと断定できる。浅瀬らしきものが写っている場所は、元は実体があっても現在では水位が変化して消えているかも知れない。いずれにしてもそれらは正体が推測可能である。
高専グランド先の水面上に見える穴みたいなものもフィルムの傷かと思ったのだが、それは小さいながらもかなり鮮明に写っている。フィルム原盤の傷なら、白い紐状のものと同様ピントが甘く写り込むものだ。それが中空で井戸のような形状らしいことまで分かる。
航空映像は現在からおよそ10年程度の遅延があるから、現在この場所に手が入って破壊されていたり、水位が上昇して湖面から下に消えているかも知れない。その可能性さえなければ、「井戸のように見える何かの恒久的構造物」が常盤池の中に在るのはかなり確からしいと感じた。
その正体は何?
同じ手法で見つけた、臨空頭脳パークの長谷池にある正方形の構造物は、一風変わった余水吐であることが確認できた。池の水位が上昇すれば正方形の井戸に余剰水が落ち込み排水される仕組みだった。しかし今回はその可能性はほぼあり得ないと思う。
常盤池から流下する水系は極めて限られている。本土手および切貫から伸びる2本の用水路、工業地帯へ用水を供給する宇部興産常盤用水路、そして常盤池の余水吐から流下して海に注ぐ塚穴川である。私の知る限り、航空映像で観られるこの場所に余剰水を排出する構造物が造られた歴史はないと思う。航空映像ではたまたま井戸のような穴に見えるだけで、実際は全く別物の可能性もある。
では、他にどういう可能性があるかと問われれば…
百聞は一見に如かずだ。ここで議論百出させるよりも、たった一枚の現地の写真に優位性があるのは疑いない。
先日の土日、好天とサクラ満開に誘われて、自転車隊は常盤公園を目指していた。但しこの時点では、謎の竪穴に関しては踏査可能性の下調べ程度の認識しかなかった。
(市道梶返野中線の走破と並行して常盤公園を訪れたので経路が違っていたというのも理由にあった)
そしてアジトへ帰るとき高専グランドの前を通ったので、その正体を突き止めるために写真を撮ることを考えた。
ここからグランドに入って観に行けば話は早い。しかしそう事は簡単に運ばないことは想像がつくだろう。
(現地ではこのときここの写真を撮っていなかった…この写真は2日後に撮影されたものである)
学内敷地内への立ち入りは、何処も事務を通さないといけないことになっている。「常盤池の写真を撮りたいので…」という程度の理由でグランドへ入らせてくれるか大いに疑問だったし、何よりもグランドでは野球部員たちが練習試合をやっていて、お遊び感覚な徒歩・自転車隊が入っていける空気ではなかった。
それでこの土曜日は一旦おとなしくアジトへ帰り、翌日曜日の午後、別の方法を考えつた。
「楢原の入江を挟んで反対側の市道から見えるかも知れない」
そういう理由で急遽「市道楢原線」の走破計画を立てたのである。派生記事: 市道楢原線
途中に立ち寄ったポイントがここである。写真では分からないが、実はこのアングルからの一枚を撮影した時点で肉眼でも湖上に何かが認められた。
車の停まっている空き地へ入り、そこから可能な限り常盤池の汀に接近してカメラを向ける。
直線距離でおよそ200m程度だろうか。
やはり、そこには何かがあった。
航空映像で見たとおり、湖面に僅かばかり顔を出している構造物がある。ズーム撮影。
それは常盤池の水面がさざめいていながらも微動だにしなかった。浮島や筏などではなく、間違いなく恒久的な構造物だ。
しかしその正体はここからのズームでも遠すぎて掴むことはできなかった。
航空映像で見た井戸みたいなものの手前に、水面上へ突き出たパイプのようなものも発見された。
これも波風を受けても全く微動だにせず、浮かんでいる木材や竹でないことだけは確かだ。これは一体何だろう?
(後日また新たな「物件」として知られ頭を悩ませることになる…)
水面上に突き出た鋼管らしきものは、まるで水遁の術を実践中の忍者の如きに見える。
(凄い妄想力だw)
この正体も分からないが、池の底から伸びるパイプだとすれば、この近辺は意外に水深が浅いのかも知れない。
一連の物件に関する観測位置は市道楢原線の途中で、高専の方を向いて撮影している。
市道楢原線は、先で若干その謎の構造物に近づくような経路を取っていた。しかしこの空き地を過ぎると市道と常盤池の間は深い薮に包まれ、全く湖面を窺えなくなった。市道は走破したものの、別の角度で眺められる場所を得ることができず、結局航空映像で見つけた「謎の物体」が紛れもなく存在し、今も水上に顔を出しているという事実確認しか成し得なかった。
この時点でまだ別の作戦が頭にあったものの、来た道を延々と引き返し高専グランドを訪れる気にはならなかったので、予定していた経路だけを走ってアジトへ帰った。常盤公園はそう遠くないし、いつでも行けるので焦りはなかった。
週が明けて先日の火曜日、常盤湖畔ウォークが開催されることを知った。平日の午前中なもののこの日私は予定がなく空いていたし、天気も良かった。そこでイベントへの参加も兼ねて「次なる作戦」へ着手する計画を立てたのだった。
(「常盤池・水没建築ブロック【2】」に続く)
出典および編集追記:
1. Yahoo!航空映像の改定で以前よりも高解像度で眺められるようになった結果、水面に小さな点しか見えなかったのが現在では正方形の井戸のようにハッキリ見えている。
1. Yahoo!航空映像の改定で以前よりも高解像度で眺められるようになった結果、水面に小さな点しか見えなかったのが現在では正方形の井戸のようにハッキリ見えている。