”にしめの鼻まで歩いたことがある”との報告を地域SNSメンバーから得た以上、岬まで歩いて行けるまともな道があることは確実らしかった。
11月ともなると多くの草木が成長を停止する。枯れ落ちることはないにしても、葉の裏についた害虫や唐突なヘビの出現を懸念することもない。押し返されるほどの酷い藪でなければ、道ではない場所でも進攻可能なことを最近の踏査で体感していた。
常盤池の陸繋島を踏査してからも低水位状態が続いており、この状況はミッション遂行において最後の手段を用意してくれていた。攻略に有利な今のうちにやっておきたい…それで23日からの連休中に踏査を考えていた。
あいにく24日は出かけようとすると降り始めたり、再び日が照ったりと午後まで不安定な天気だった。午後2時過ぎに漸く雨雲が取れて降られる心配はなくなったが、風がやや強く冷たい。そこで買い物する用事もあったので車で常盤スポーツ広場に向かい、そこから歩いてにしめの鼻踏査計画を敢行することにした。
常スポ駐車場まで車を使ったので、少しは身体を使わなければならない。ウォーキングも兼ねて周遊園路を歩いてながしゃくりに向かった。
(市道丸山黒岩小串線のこの旧道区間を再撮影するためでもあった)
昼まで雨がぱらついていたのに、遊歩道を散歩やジョギングする人は多い。どうかすると軽い雨降りくらいなら傘を差して歩く人もあるかも知れない位に多くの人が利用する遊歩道だ。
再びここにやってきた。薬草園の真向かいである。
前編でにしめの鼻や攻略開始地点の地図を示しているので説明は要らないだろう。いきなり現地の映像からスタートしよう。
にしめの鼻に向かっていく経路とすれば、少なくとも私はここ以外思いつかない。ながしゃくりの左岸に沿って進む道である。
(後から思えば既にこの写真にヒントが現れていたのだった…)
遊歩道の枝線となるこの部分は、正直まったくの付け足しである。
先端は広場で終わっており、そこには本当に何もない…休憩用のベンチも立て札もいっさいない。以前からそうだったし今回も変わっていなかった。
だが今回はそう簡単には引き返せない。雑木林に隠され酷い状態になっていようが、踏み跡を探さなければならないのだ。
入り江側には擬木の柵が連なっていて、最後は藪に突っこんで終わっていた。
この擬木の続きにはいくら何でも道はなさそうだ。
水位が低い故に、ながしゃくりは常盤用水路を伝ってチロチロと流れてくる溜まり水を受けて枯れ川のようになっていた。汀はずっと先の方まで退いており、入り江の両岸はかなり乾いている。
どうしてもにしめの鼻までの道が見つからないという事態になれば、最後の手段としてここから降りて汀を伝って岬まで歩く方法が有り得た。しかしそれは低水位の今だから援用できる姑息な手段である。通常水位に戻れば、岬まで行けなくなる。陸路を歩いて到達したという報告を受けた以上、まずは誰でも陸上をまともに歩いて行ける経路を探すべきだと思った。
一番奥から振り返って撮影。
紅葉がちな今の時期らしく、鮮やかな朱色に染まった灌木が目に着いた。
(この強烈な色彩が後で自分の位置を把握するのに役立った)
擬木の柵がある場所から広場の端に沿って点検しつつ歩いた。
円形の広場の端に側溝が敷設され、その内側は一段高くなっていた。道らしきものは見あたらない。
しかし私は側溝の内側が広場より一段高い台地状になっている点が気になった。普通なら乱雑な斜面になっているところが、妙に整っている。人の手が入ったような感じを受けたのだ。
藪の端を点検する。よく見ると伐採された木の枝がまとめて置かれている。定期的に手入れされているらしい。
ただし一定範囲から先は原生林状態のままだった。
目を皿のようにして踏み跡ないしは獣道の痕跡も探したが、経路が頭に描き出されない。長いこと野山歩きをやっていると、そういう道の痕跡は草木がランダムに生い茂る藪とは異なる外観を呈している。一見無秩序な野山の中にラインが見いだせるのだ。
しかしどれほど眺めていても何も見いだせないならば…
強行突入である。
にしめの鼻に向かう道があるなら、ここから強引に半島を横切る方向へ進めば、金吹の入り江に到達するまでに必ず岬へ向かう道に出会うはずだ。この付近で半島の幅は高々100mである。その程度の歩行踏査で答が出るなら、我慢して突入やむなしだ。
そうと決まれば、少しでも藪の薄いと思われるところにあたりをつけ突入開始した。
道なんてものはない…これから探すのだ。
適度に進んだところで振り返って撮影。
先ほどみた紅葉した灌木が木々の隙間から薄い朱色に見えている。
岬に向かう道があるなら自分の進行方向に対して直角に存在する筈なので、漫然と歩くのではなく左右の通りを確認しつつ進んだ。
こうして半島のほぼ中央付近に到達したときだった。
やはり、道があった。
こちら側が薬草園に戻る方向になる。一見して山道レベルと分かる程度に開けていた。こちら側が岬の方向だ。
一応、踏み跡は視認される。しかし通る人はかなり少ない感じがした。
まったく妥当なことに、その道は半島のほぼ中央、最も高い尾根を伝っているようだった。
私はこの道を見つけることが出来なかったのが不思議に感じられた。今の周遊園路には繋がっていないのだろうか…
逆に辿ればすぐ答が得られるだろうが、帰りに検証しよう。どのみち岬へ到達したなら同じ道を引き返して来る以外ないので。
ターゲット攻略が最優先課題だ。まずはこの道を辿って歩き始めた。
同じ場所でフラッシュ撮影している。
近くに光が回る分、離れた場所は暗く写る。実際の見え方は上の写真とこれの中間くらいと思ってもらえば良い。
両側から木の枝が伸びており、道の形もやや淡い。慣れていない人は不安を覚えるかも知れない。
もっともラインが見えない藪漕ぎでこの道に到達したまでのことを思えば、私の中ではかなり明白な山道と認識される。ちょっと荒れているというだけで迷う要素がない。
踏み跡の中央にコンクリート製の境界杭を見つけた。
恐らく市の設置したものだろう。距離や面積算出に使われるのだろうか…
また、このコンクリート杭のすぐ傍にある枝に缶ジュースが…
缶に錆び付きが殆どないことから、かなり最近のものらしい。それなりに訪れる人もあるようだ。
(だけど空き缶くらいキチンと持ち帰ろうよ…目印にはなるけど…)
踏み跡はところどころでかなり淡くなっていた。とりわけ日の差す場所では下草が生い茂るために足元を見ても進行方向が分からず、先を見通さなければならなかった。
最初に迷った場所。ここには分岐があるように見える。左右どちらだろう…
あなたならどちらを選びますか?
写真を見て読者がどちらを選んだか分からないが、私は右の分岐を進んだ。木の幹が獣道ラインの左端を縁取って見えることと、ある程度地面が踏まれているように思われたからだ。
まあ、半島を岬に向かって歩いているわけだから最悪でも行き止まりになるだけだ。半島から逸脱してしまう心配はない。多分どちらでも同じことだろう…
(左側を進むとどうなるのかは結局検証しなかった)
道の形は見えても安泰ではなかった。殆ど廃道状態になっていて、至る所でこのような倒木がみられた。
この状況なら今や道を普請して歩く人もいないらしい。
周囲の木々が少なく若干開けた場所へ出てきたときだった。
あれは何だ?
ここって…誰か訪れるようなことがある場所なの?
(「常盤池・にしめの鼻踏査計画【2】」へ続く)