常盤池・にしめの鼻踏査計画【3】

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(「常盤池・にしめの鼻踏査計画【2】」の続き)

以前からの課題であったにしめの鼻へ到達できただけではなく、低水位に乗じて汀へ降りる難行をこなした。苦労の甲斐あってにしめの鼻付近の汀は普段まず観ることの出来ない特異な光景を提供してくれた。

西日を避けて南東を撮影している。
にしめの鼻の汀、岬を擁する半島のもっとも常盤池に張り出した場所だ。通常水位になれば現在の場所には立っていられずおよそ3m程度が水面下に没することになる。


にしめの鼻本体を正面から撮影しようにも汀がそれほど長くないので全体像を収められる位置に立てない。
そこで岬から180度パノラマ動画撮影を行ってみた。

[再生時間: 25秒]


ながしゃくりの入り江側の眺め。
汀の土質が明らかに変わっている。


やや緑かかった薄灰色を呈している粘土質だった。
踏むとやや沈み込み軽い弾力性があった。打ち寄せる波の届かない部分は真砂土で、岬から削り取られて堆積したらしかった。


ズーム撮影している。
蟻が集っているように見える黒い粒は粘土に空いた細かな穴だ。
どうしてこんな形状になるのだろう…


ながしゃくりの上部に向かって歩いてみた。
途中、汀に何やら焚き火の跡のような黒いものをみつけた。


木の葉が散らばっていたので、最初私は焚き火の跡とばかり思っていた。
近づいてもなお正体が分からずアスファルト屑?と思いかけた。


私は殆ど人が訪れることもないにしめの鼻という半島の突端の、それも普段なら降りることができない汀に居ることを忘れていた。
水に浮くゴミが流れ着くことは有り得るにしてもここまで来て焚き火をする人などいない。ましてアスファルト屑のような重い物がここへ打ち上げられる筈もないのである。

そうとなればこの黒々しいものの正体と言えば、あれしかない…


ながしゃくりの付け根の出発点からここへ至るまでの途中にも炭生跡と思しき遺構をいくつも見かけた。そこよりは背丈以上に低い汀なら、場所によっては石炭層の一部が露出することは普通に有り得るだろう。

振り返って撮影。
倒れた木が一様に先端を入り江側に向けていた。


ながしゃくりの入り江に沿って遡行してみた。
水位は充分低下しているものの、それでもなお汀までしだれ掛かっている枯れ木が進路を阻んだ。


この場所で早々に進攻を断念した。
岬からはものの数十メートルしか進んでいない。この先で数本の枯れ木が枝を伸ばしたまま斃れていて、とても進攻できる状況ではなかった。


周知の通りこの場所は対岸の周遊園路から丸見えである。いちいち好奇の目で眺める人は居ないが、一挙一動はすべて分かる。
この岬を目指そうとした最初、もし道が見つからなかったら低水位に乗じてながしゃくりの先端から汀を辿ろうなどと画策しかけていた。もし実行に移していたなら途中で断念させられるか、岬を目前にして藪漕ぎならぬ酷い「枯れ枝漕ぎ」を強いられていただろう。まして周遊園路を歩く人から丸見えになるこの場所で…

根こそぎ持っていかれている木は栄養も水分も摂れずどれも枯れていた。
倒れた木を足掛かりにするなら半島部分に復帰できる高低差だが、みっしりと密集する木々で押し返されそうだ。

一連の倒壊と岸辺の崩落は、恐らく数年前の大雨による水位上昇によって引き起こされた。にしめの鼻の突端をはじめとして幅1m程度岸辺を削られたことになる。
このような崩落は常盤池が誕生した直後から有り得ただろう。にしめの鼻のある半島も当初は今より肉厚だっただろうし、護岸整備されない自然の状態なら、今後数十年の間にながしゃくりの折れ曲がった部分で半島が浸食され島が誕生するかも知れない。

こうした自然の崩落は、人に代わって「一散掘り」を演じてくれる。崩れた岸辺を広範囲に検査すれば殆ど労せずして石炭が得られることになる。


実際、先ほどみた焚き火の跡のような場所以外にも「黒い燃える石」らしきものが波に洗われていた。昭和中期までなら、この状況を見れば籠を背負って拾いに来る人があるかも知れない。
もっとも真に石炭だとしても品位はかなり悪い…枯れ木を薪にした方が火力が強いだろう

…という訳で、今回のお土産。
常盤池ながしゃくり産の泥炭だ。


この付近の汀も粘土質だったが、先の場所より粒子がずっと細かい。踏むと足の裏に粘り着く感じだった。


右手にカメラを構えて粘土の汀を水洗いしてみた様子。
最初はざらざらな表面の粘土が、ちょっと手でこすり水洗いすると表面がツルツルになった。まるでバターを撫で回しているような感触だ。

[再生時間: 20秒]


よく雨上がりの未舗装路にコーヒー牛乳のような水が溜まり、乾くとねっとりとしたペースト状になるが、ちょうどそんな感じの粘土だった。この粘土が削り取られて完全に乾いたら、ちょっとした風でも粉塵状態になって飛んでいくと思われる程だった。

ながしゃくりの入り江は遡行できないので、反対側の金吹の入り江側に移動することにした。
ここから岬の突端部分に向かって歩きながら動画撮影してみた。

[再生時間: 48秒]


まだ西側の眺めを撮影していなかった。
逆光を覚悟でカメラを構えた。


正面に白鳥大橋が見える。
このアングルで撮影できているという事実だけで、間違いなくにしめの鼻に到達できたことの証明になるだろう。


白鳥大橋の袂に南遠山の鼻が存在する。
逆光なので暗くなってしまいよく分からなかった。


今度は最初降りたった金吹の入り江側に移った。

来るときここを通った筈だが、岬到達の達成感に浮かれて見落としていた奇妙なものがあった。



あれは何だ?


思えばにしめの鼻に到達して初めて出会った人工的な構造物だった。
大したものではないので、以前既に掲載した水没鉄筋の記事に追記する形で作成した。
派生記事: 未知の水没鉄筋
金吹の入り江は倒木がまったくなく、ながしゃくりより更に遠浅になっているらしく広範囲な砂浜が現れていた。


西日を背に受ける時間帯なので自分の影が映り込みがちだし、光線の加減で実際よりも赤みが勝って写ってしまう。
しかし容易に到達できない場所であるだけに、採取できるデータは何でも持ち帰りたいと思った。

(「常盤池・にしめの鼻踏査計画【4】」へ続く)

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