常盤池・にしめの鼻踏査計画【4】

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(「常盤池・にしめの鼻踏査計画【3】」の続き)

低水位に乗じてにしめの鼻の汀まで降り、写真から動画まで今の段階で必要と思われるものは一通りデータ採取した。ついでながらジャンパーのポケットにはにしめの鼻で採取した石炭らしき石のサンプルも入っていた。

時刻は既に午後4時。今の時期は既に太陽も本日の営業終了とばかりに低い位置から橙色の光を投げかけていた。その名の通り西に向いている岬なので、太陽を背にすれば背丈の倍以上の影が汀に伸びた。


岬の西側となるながしゃくりは夥しい倒木が汀を埋めていて進攻不能だった。他方、東側の金吹の入り江に向かう側は倒木がなく汀を辿って行けそうだった。
そう頻繁に来られる場所でもないので、水位の低い今のうちにちょっと踏査しておこうと思った。苦労して降りた崖を回避して半島に戻れる経路を探す意図もあった。


にしめの鼻踏査からは離れるので、派生記事として作成しておいた。
派生記事: にしめの鼻より北側の汀踏査
復帰できる踏み跡を見つけられず、結局最初に岬へ降りた場所まで戻ってきた。
岬の先端部分は侵食が本当に酷い。次に前回と同じくらい水位が上昇したら今見えている崖も削られ岬が更に後退するだろう。


この倒れかかった枯れ木を手がかり足掛かりにして降りてきた。
写真では分かりづらいが人の背丈をはるかに超える高低差がある。


さて、どうやって復帰したかと言うと…

詳細な説明はこの一枚の写真で代用しよう。
これと同じ手のかけ方ではないが、降りるときに使ったこの倒木を頼りによじ登った。


鉄棒の要領でなるべく陸地に近い側の幹を掴み、腕だけの力で上体を引き上げた。それから片足を幹に載せつつ上方にある別の灌木を左手で握った。倒れた枝は完全に根が地面から抜けていてグラグラ揺れた。端っこに体重を預けると幹ごと滑り落ちそうなので陸地に近い側にぶら下がった。
下草が枯れる時期になったら他の降りやすい場所が見つかるかも知れないが、岬の近辺で汀へ降りられる場所はここ以外ないと思う。もっとも常盤池の水位が戻れば崖の上から眺めるだけになるのだが…

タイヤ一組を見つけたあの場所を通るとき、市のコンクリート杭が設置されているのを見落としていた。


踏み跡の中央に半分以上埋まっている。角がとれてザラザラになっており、かなり古そうだ。


国土地理院の地図によると、にしめの鼻がある半島部の中央に標高36mを示す測量点が記載されている 。


地図表記にはにしめの鼻踏査の以前から気付いていた。具体的な標高が記載されているということは、その測定箇所を示す何かがある筈だ。
しかし道となっている部分を調べた限りでは、明確にそれと分かるベンチマークなどは見つからなかった。恐らく踏み跡から離れた半島の最高地点にあるのだろう。
このような地点を追っていくのも一つのテーマ踏査になるが…今のところ考えていない

来るとき眺めた景色だから特に注意すべきものはない。日も陰っていることだし足早に歩いた。


最初、この踏み跡を見つけることができた場所だ。
特に目印らしきものがなくても周囲の様子ですぐ気付くことができた。


その場所に立ち、来るとき強引に突っ切ってきた部分を写している。
写真では分かりづらいが、中央付近にやや赤っぽいものが見えているだろう。ながしゃくりの入り江に沿って植わっていたあの灌木だ。


さて、この先が一体何処へ出るものか検証しておかなければならない。次に私あるいは興味をもつ読者がにしめの鼻を踏査するとき役に立つだろう。

すぐ目についたのは道を塞ぐ形のかなり太い倒木だった。
日の当たる上側にキノコが並んで棲息している。


キノコが多いという話は一度にしめの鼻を訪れたという方から聞いていたのだが…
まるでマイタケのような外観だ。


マイタケは好物だが、まさか持って帰ろうとは思わなかったし触ることすら自重した。
石炭は素性が分かっているからともかくキノコはまったく知見がないしアジトへ持ち帰って厄介なことになっては困る。
観葉植物のドラセナの鉢に素性の知れないキノコが侵入したことがあったので…

明らかに踏み跡は周遊園路に向かっていた。
途中でまた別の新しいコンクリート杭を見つけた。


再び市のコンクリート杭だったが、まだ殆ど欠けがみられず先のよりも随分と新しい。


前方に周遊園路が見えてきた…が、明らかに高さが合わない。今いる踏み跡の方が数メートル高く、まともに繋がっているようには思えなかった。


周遊園路から直接この道に入る経路はなさそうだ。こちら側からは周遊園路が見えるのに向こうからは現在の道はまったく見えない。まるでトラップドアだ。一体どのような接続のされ方になっているのだろう。

生えている木々が疎らでこの周辺は適当に歩けば何処からでも周遊園路に降りることはできた。しかし逆から来るための道が必ずある筈だ。


奇妙なことに、踏み跡は周遊園路を目前にして大きくながしゃくりの入り江に向かってUターンしていた。
経路に沿って設置されているコンクリート杭が目安になった。その通りに進むと…


ここが入口になっていた。
椅子のように置かれている2個の切り株から場所が推測されるだろう。


なるほど…そこは周遊園路の枝道から入れるように段差部分を削ってスロープになっていたし、溝を跨ぐ部分にはグレーチングが置かれていた。


遊歩道を外れて最初に細い道へ入ったとき撮った一枚だ。
この写真から冒頭でお伝えした「ここに答が既に現れていた」の意味が分かることだろう。


グレーチングが設置されていたのだが、立ち木や灌木の陰になっていて存在を見抜けなかった。
排水溝を設置しても人が横断しない場所には溝蓋やグレーチングを掛けない。上を覆えば溝掃除がしづらくなるからだ。この場所に設置されているということは、そこを横断する経路があると判断される。人が歩くのなら溝蓋がなくても簡単に跨げるが、枯れ木や落ち葉を集めて回収するときグレーチングがなければ一輪車を押して行くことが困難だ。恐らくはその用途も含めて蓋掛けされていたのだった。

断片的な写真では分かりづらいので地図を元にこの経路を書き込んでみた。
太い緑色が元からあったと思われる岬へ向かう道だ。


現在の周遊園路が造られたのは平成期に入ってからのことであり、歴史は極めて浅い。ながしゃくりに注ぐ常盤用水路が造られたのは昭和初期だから入り江に至る道は当然あったと推測されるが、かつてはにしめの鼻に向かう道は半島の尾根を伝う部分しかなかった筈だ。

帰りがけに周遊園路から観察してみた。
現在の周遊園路は半島部分を掘り割りの形で横切っている。今でも直接にしめの鼻に向かう人があるのだろうか…掘り割りの斜面に自然な踏み跡ができていた。


周遊園路との接続部付近が不明瞭になっているのは、にしめの鼻に向かって歩く人が少なくなったので、特に分岐部分を整備せず分断するに任せたからだろう。
周遊園路からにしめの鼻まで歩く道を整備するという可能性は…さあどうだろう…

さて、常スポ駐車場まで歩いて戻り、無事にアジトへ帰還した。
ここでちょっとしたおまけがあった。

まずはシャワーを浴びようとばかりに着ていたジャケットを脱いだのだが…
ポケットの中の「燃える黒い石」が…


無造作に脱いだためせっかく掃除したじゅうたんの上に黒い石をぶちまけてしまった。

石は極めて脆く、雲母のように薄くペラペラと剥がれた。ポケットへ入れて揺さぶられるだけで小さく砕けてしまったらしい。


マッチかライターで火を近づけて本当に燃焼するか調べたかった。
その両方ともアジトに持ち合わせはあるが、敢えて試さないでおいた。せっかく持ち帰ったサンプルが消失してしまう懸念よりも、じゅうたんに着火してアジトに蓄えられた記事化を待っている資料と共に焼失してしまうのが怖かったので…^^;


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