常盤池・水没コンクリート構造物【1】

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現地踏査日:2010/11/23
記事公開日:2013/1/4
ヘッダー部分の現地踏査日をご覧になってお分かりの通り、初めてこの物件の存在が分かったのは2年以上前のことである。記事化が大幅に遅れたのは最終的には私の怠慢の成せる業なのだが、初期に於いては後に述べるような理由で頓着するに値しないと思われていたのも確かだった。

3年前、航空映像で楢原の入り江の末端部付近、高専グラウンド近くに小さな異物を見つけてその存在を訝っていた。しかし高専グラウンドに近づくことができず、対岸から観察することを思いつき、その過程で市道楢原線の走破劇があった。
そして楢原の入り江の「尖った場所」を過ぎた先にあるこの小さな空き地から目を凝らした。


そして水面に全く動かない筏のような物体を発見し、航空映像で見えていた微細なものが実態をもつ何かであることまでは確認できた。


このとき既に水面上へ突き出たパイプらしきものの存在には気付いていた。


しかし当時の記事にもあるが、揺れ動く水に連動しないことからこの近辺は水深がかなり浅く、水底に突き刺さっている竹や棒だろう…というだけで片付けていたのである。
一連の経緯は「水没建築ブロック」を参照

2010年の秋のこと、常盤池の水位が低い状態が長く続いていた。このとき再度水没建築ブロックの見える場所を訪れ、それが結構高く聳え立つ塔のような形状であることを確認できた。
この低水位なら、他の場所を訪れればきっと前回とは異なる光景を提供してくれるに違いない…そう思って再び私は市道楢原線に向かった。そして楢原の入り江にある独特の「尖った場所」を再度訪れ、低水位に乗じて池の底に降り立った。
このとき入り江の出口部分を撮影していて鋼管らしき物体に巨大な下部コンクリート塊が付属している何かを見つけたのであった。


以下は、見えているコンクリート塊があると思われる場所を中心にした航空映像である。
マーカーを表示すると隠れて見えづらくなるので非表示に設定している。改めて航空映像を眺めると、確かにそれらしきものが視認されるのであった。


常盤寮がある半島部分の入り江側20mくらいのところに僅かながら水の色が異なっている部分がないだろうか。恐らく水位がやや高く上部が僅かばかり水を被っているのだろう。明瞭なコンクリート色ではなく若干薄い灰緑色の染みのように見える。しかしそのサイズからしてほぼ間違いない。

入り江の中に居た私は最初汀を辿って接近しようとしたが、先の方で市道から降りられる場所を見つけたし置き去りにした自転車から離れてしまうので、一旦自転車の元へ戻ってその場所まで移動した。

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時系列としては「楢原鋭角点【2】」の続きになる。ここは一連の水没物件を確認した最初の場所だ。
ここからならあのコンクリート塊が近くに見える筈だ…


見えてきた。
高専グラウンド側に水没建築ブロックが、そして手前には水没コンクリート塊が現れている。


この空き地の横からは汀へ降りる斜面ができていた。
自転車を停めて降りていく。


降り口の斜面から流れ出た土砂が堆積し、遠浅の岸辺を造っていた。
しかし水位が低いとは言えさすがにあの現物まで歩いては行けない。


岸辺は遠浅の状態で続いていた。
この勾配なら、コンクリート塊がある近辺でも水深は恐らく1mもないだろう。
条件が良ければ胴長靴装備で到達できるかも知れない…実行する積もりはないが^^;


現在の観測位置からその遺構は南西の方角になる。
逆光は避けられたが斜め横からの西日を浴びる形で鮮明な映像にはならなかった。


中心に直径10cm程度の鋼管が刺さっている。コンクリート塊から上へ突き出ている部分は50cm程度だろうか。コンクリート塊そのものはどの位の高さがあるか不明だし、高専グラウンド側を向いている面がどうなっているかは当然分からない。
水没建築ブロックを撮影しに行ったときこのコンクリート塊に気付かなかったのが不思議だ

この周辺の汀を右往左往したものの、コンクリート塊までの距離を詰められる観測場所がなかった。ただ、遠目にもコンクリート塊と鋼製の棒があるだけで、仮に現物まで到達できたとしても正体が何であるかを突き止める手がかりはなさそうだった。


最大限にズーム撮影。
目測で一辺が2m程度のコンクリート塊で、人工的に整形されたと分かる程度の形状をしている。もっとも水没建築ブロックに比べて造りは粗雑だ。


コンクリート塊の上部と視座がほぼ一致しているので、上部がどんな具合になっているかはこの場所では分からず、むしろ離れた市道からでないと分からないだろう。

汀を離れて斜面を少し登った場所から再度撮影。
この場所でもまだ分からない。常盤寮のある半島部分まで行ければあの場所が一番近いのだが…


諦めて一旦自転車に跨り、常盤寮方面に進みつつ観察できそうな場所を探った。
例の水没建築ブロックと一列に並ぶ地点に近づいた。


西日で影となっている部分が不鮮明だが、2つの未解決物件が並んで見える。


市道よりズーム撮影。
距離は遠くなったが視座が若干高くなった分だけコンクリート塊の上部が見えている。


見たところコンクリート塊の上部も真っ平らで何も乗っていない。ただ中央に鋼管が刺さっているだけだ。

いつものお約束だが…
あなたなら、この水没コンクリート塊を
何と推測するだろうか?


これは難易度が高い。あの水没建築ブロックよりも正体を突き止めるのが難しいだろう。水没建築ブロックは明らかに何かの役に立たせようという意図で丁寧に建築ブロックを積み上げている。他方、このコンクリート塊は傍目にも粗雑で、うち棄てられた不法産業廃棄物の一つだと強弁されたなら納得いくものかも知れない。実際、鋼管だけが水上に頭を覗かせている状況を見たとき、遙か昔に不法投棄された鋼製構造物ではないかと予想していたくらいだ。
存在位置やその形状から、先行して見つかっていた水没建築ブロックとの関連性は大いに疑われる。
そして少なくとも両者が常盤池の中に存在し始めた時期は近接している可能性があることだけは分かった。

この物体は昭和49年度の国土画像情報閲覧システムでも確認できる。
「国土画像情報閲覧システム - 常盤池西部(昭和49年度)の航空映像」
http://w3land.mlit.go.jp/cgi-bin/WebGIS2/WC_AirPhoto.cgi?IT=p&DT=n&PFN=CCG-74-12&PCN=C23&IDX=15
別ウィンドウで開いたページ右上にある400dpiのリンクをクリックすると高解像度の画像が表示される
当時は今より水位が低かったのか、そのコンクリート塊はより明白な正方形の灰白色として視認される。最初に水没建築ブロックを調べたとき気付いていそうなものだったが、航空映像焼き付け時のゴミだろうと思って気に掛けていなかった。
他の場所にも同様の白い粒々が水面上に見えるところがあったので

他の場所ならともかく、結構広い常盤池の中でこの楢原の入り江だけに近接して似たような水没コンクリート構造物が存在すること自体どうにも関連性を疑わざるを得ない。微細な遺構や廃モノなら他にも若干見受けられるが、航空映像からも視認できるほど大規模なものは今のところこの2件以外知られていない。

ともあれ現地でこれ以上考えているわけには行かなかった。常盤寮からあの半島の先端部分に近づけば更に水没コンクリート塊を近くで観察できるのは確実だが、既に西日が傾き始めていた。何よりも常盤寮構内は部外者立入禁止の立て札が掲示されているのを知っていた。

そこで一旦撤収はしたものの、この方面に訪れる便ができたなら次の手段を試してみようという作戦は既に出来上がっていたのだった。

(「常盤池・水没コンクリート構造物【2】」に続く)

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