常盤池・水没コンクリート構造物【3】

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現地踏査日:2012/12/3
記事公開日:2013/1/18
(「常盤池・水没コンクリート構造物【2】」の続き)

時系列からすれば「楢原鋭角点【3】」の続きとなる。
市道に停めていた自転車に復帰し、あの物件に近い市道楢原線の終点を目指した。

一番初めにこの物件を見つけたあの駐車場付近から撮影している。
充分に水位が低いため、コンクリート塊がかなり露わになっていた。


ズーム撮影する。
高専グラウンド寄りにある水没建築ブロックとの位置関係が分かるだろう。


今回この方面に自転車を走らせたのは当初からこの物件の近接画像を得ることにあった。
一枚目の写真では少しばかり写りかけているが、水没コンクリート塊は常盤寮のある半島部に最も近い。そして水位の低い今なら近くの岸辺から辿ることで半島部の下へ到達できそうだと判断した。

市道楢原線の終点で、正面が常盤寮である。


ここから敷地内に入れるなら半島の下に降りる容易な経路を探せるだろうが、部外者立入禁止が明示されていながら読まなかった振りをして構内に入り込む愚を犯す積もりはない。若干難易度が上がるが、そうまでしなくても別の経路を見つけ出せたからだ。

常盤寮を背に撮影。
自転車を停め置いた場所に竪排水があり、そこから降りられると判断した。


この場所から降りるのも初めてなので、楢原の入り江踏査も兼ねて周囲の写真を撮っている。一連の記事は、本編と並列にする形で以下の派生記事にまとめている。
派生記事: 楢原の入り江【3】
降りたった小さな入り江から既にそれが見えていた。


倒木がやや多いが問題なく半島の下まで歩いて行けそうだ。


自然の岸辺は途中から石積みをコンクリートで巻いた護岸になっていた。


石積みの下は乾いているが、砂溜まりは殆ど平坦だ。あと10cm程度でも水位が高ければスニーカーでは歩いて行けなかっただろう。


護岸より倒れかかっている枯れ木がある。
もしかすると第二回踏査で半島から接近するとき最後の障壁になった木かも…


好都合にも砂溜まりは半島の先端からコンクリート塊に向かって伸びていた。
ハマる危険に注意しつついざり足で進む。


汀の先端に立ち、ズームなしの普通モードで撮影している。
直線距離で10m以内だ。前回の護岸からの撮影よりも5〜6m程度近づいている。


立っている真下を撮影。靴の浸水に注意しながら既に1cm程度の水深の中に立っている。
砂溜まりとは言っても足元は堅い粘土質でハマる心配はなかった。非常に緩やかな遠浅になっているようだ。


ズーム撮影すると被写体の中でコンクリート塊の写る割合が増えるので、明るさが補正され見えやすくなる。
表面の状態までかなり明瞭に見えているだろう。


画質を損なわない範囲での最大ズーム。
コンクリート塊の表面に横筋が付いているのが見える。型枠の痕だ。やはり何かの意図をもってこの場所にコンクリートを打設したのは相当確からしい。


コンクリート塊の側面には至る所に豆板(生コン打設時の振動充填不足によって生じる不規則な隙間)が見えている。元々が水面下に没する構造物なので外観の審美性を問わず、コンクリートの重量と固化による補強だけを期待した施工らしい。

この場所からパノラマ動画撮影を行った。

[再生時間: 37秒]


砂溜まりの入り江末端部側へ移動し、アングルを変えて撮影した。


ちょっと気になったのでカメラを向けたまでだが…これは固定された構造物ではないだろう。
その先の右岸側には水没建築ブロックが見えている。
楢原の入り江にばかり水没物件が集中しているような気がする


砂溜まりの先端から写す限り、この先それほどの深さがあるとは思えない。
コンクリート塊付近はどの位の深さがあるのだろうか…


遠浅らしいことは、グラデーションを描くように色が変わる水底の土の色からも推測はできた。もしかすると胴長靴程度の装備であのコンクリート塊まで到達できるかも知れないが、実行する積もりはない。たまさか急な深みが隠れているかも知れないし、あの場所へ到達したところでこれ以上手がかりになるものは得られそうにないからだ。

現時点で、本件に関する撮影はこれが限界だ。これよりも更に常盤池の水位が下がるとは思えない。そしてこの記事を書いている現在から数日前(1/11に蛇瀬池を訪れたとき)のこと、常盤用水路が通水しているのを目撃したから今よりも水位が上がっている筈だ。

水没建築ブロックと合わせて楢原の入り江に存在する未解決物件として、自然に次の疑問がわき起こる。

この2つの物件に関連性はあるのだろうか?


もし両者が殆ど同様の構造だったら、例えば楢原の入り江に架橋する計画があって橋の基礎部分を先行施工した…などの仮説も有り得た。しかしその可能性はほぼない。一方は中空の建築ブロック積みで、本物件は中が詰まったコンクリート塊である。しかも2つの構造物を結んだ線は、楢原の入り江の両岸を結ぶ最短距離にもなっていない。

しかし水没建築ブロックと水没コンクリート塊がほぼ同程度のサイズであること、正方形を成す外側の辺は両者がほぼ平行になっている点に着目すれば、この2つの構造物をセットにして何かを造ろうとした、あるいは造って活用した後の遺構かもという可能性を捨てきれない。

もし正解が得られるなら、両者相携えて同時解決をみるような気がする。この広大な常盤池に対して楢原の入り江の狭い一角だけに類似した構造物が存在し他の場所では観られないという事実から、個人的には双方何らかの関係があると予想している。これらの構造物を造った時期や目的が共通するという意味でだ。

高専グラウンドや当時この入り江を整備した護岸工事関係者が答を握っていそうな気がする。続編が書かれるのは、次なる成果や情報がもたらされた時になるだろう。

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