常盤池・陸繋島【1】

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現地踏査日:2012/10/21
記事公開日:2012/10/27
(「常盤池・陸繋島」の続き)

夏を過ぎて台風が続けざまに日本列島に襲いかかり、そのいずれもが西日本には大した雨をもたらさずに消え去っていった。その後雨のない日が続き、近辺の溜め池やダム湖などおおよそ雨水を頼る水がめは軒並み水位が下がった。この現象に便乗し丸山ダム湖の取水塔や常盤池の白鳥大橋などを訪れたのだった。

少雨で水位が下がっているときでなければ踏査できない場所の筆頭として、以前訪れた陸繋島が頭にあった。折しも21日の日曜日に常盤公園へ行く用事があり、久し振りに自転車に跨った。
青空の広がる気持ちの良い天気で、こういう日は写真も映える。市道レポート向けの写真を撮りつつ常盤池の北側に向かい、途中からユースホステルの裏にある「あの場所」に向かうよう計画していた。

総括編では航空映像を掲載したので、ここでは現地へ向かうための地図を載せる。
これはユースホステルの入口をポイントした地図だ。


平面的に表示される地図では分からないが、この周辺は尾根と沢を交互に横断する場所で、市道もアップダウンが多く道幅が狭い。車でも自転車でも走りづらい要注意区間である。

スポーツ広場側から向かったとき、Cocoland(元の厚生年金センター)の入口を過ぎると最初の登り坂が始まり、小さな坂を登り切ったところの左側にユースホステルの入口がある。


途中で常盤池を周回する遊歩道を立体交差で横断し、若干下った先に広いグラウンドの付属したユースホステルの建物が見えてくる。
このグラウンドは一野球チームの契約練習場かも知れない…近くに専用の倉庫があった


この3月に訪れたときは遊歩道から自転車で漕ぎ上がった。ここを訪れるのはこれで3度目である。初めて来たときには陸繋島の知識がまだなく、幼稚園児に宿泊したユースホステルを見て感激して帰っただけだ。

国旗掲揚台の近くに自転車を停めようとしたとき、前回ちょっと私を悩ませたあの住民が玄関前に鎮座していた。


よう♪元気だったか?^^;


自転車のタイヤの音で早くに察知していたのだろう。グラウンドの横を通る頃から既に彼の声が聞こえていた。
珍しく吠えもせずじっと待機ポーズをとったままこちらを見ている。
尻尾を振ってすり寄って来るならぎゅ♪ギュッ♪としてあげたいのだが…^^;

3月の汀踏査のときはここから斜面を下ったのだった。
あれから殆ど変わっていない。草木の伸びる時期ながら下草はこまめに手入れされているようだ。


ごめんよワンちゃん…構ってあげられる暇はないし、今回もユースホステルには用事がない。
接近するとまた吠え始めそうなので、前回と同様にこの斜面側を通って迂回した。まあ、いきなり噛み付くような様相ではないが…

岬に向かう道に復帰する。
今の季節でも歩くのに全く支障はなく、ユースホステル利用者の散歩道として整備されているようだ。


写真は撮らなかったが、上のショットを撮影する直前にユースホステルの利用者か管理人と思しき方とすれ違った。軽く会釈しておいた。ユースホステルの周囲に車は見られないので、滞在客とは思えない。
幼稚園や学校の宿泊需要は意外に多いのかも知れないが、個人的に滞在する客があるのだろうか…すぐ近くに商売敵のCocolandが整備され新装オープンしたのでなかなか厳しいのでは…
余計なお節介だよね…

風致保安林の標識柱をみてからは下り坂になる。
既に常盤池が木々の間から見え初めている。まだ水位は分からないがそれらしき茶色いものが見えているようでもあった。


サクラ記念樹の石碑も既に写真を撮っているので一瞥を加えるだけだ。
いよいよだ…


岬の突端まで雑木林なのでまだターゲットは鮮明には見えない。
しかし水面がかなり低いのが分かったし、茶色の目立つ砂地が少しずつ全容を明らかにし始めていた。


これは…もらったぜ!と思った瞬間だった。
充分に水位が低く、それは完全に姿を現している。汀もかなり後退していて足を濡らさずに降りられるだろう。


遂に姿を現した常盤池の陸繋島。
原典ファイルを載せておこう。拡大対象画像です。
画像にマウスをかざすと拡大、ダブルクリックで最大化します。
クリックすれば元のサイズに戻ります。


確かにそれは島の様相を呈している。砂州の部分は細かな粒子の粘土で覆われているのに対し、島となる部分は砂州よりもかなり隆起しており土質も異なるように見受けられた。
砂州は今しがた降りてきた獣道の末端からではなく、若干西寄りから伸びていた。先端部分の島には枯れ木の幹か根元のようなものが地表に現れている。

それを見て前回、水位が高かったときここから目を凝らして眺めた先に視認できた動かない物体を思い出した。
波の動きにまったく連動しなかった水上の突起物だ。


この突起物は、やはり島に固着した木の根か何かだった。
距離があるので、ここからズームで写真を撮っても明確にはならない。しかし肉眼でも泥の色とは異なる白っぽさと形状で木の根か杭らしいと判断できた。

岬から真下の砂地まで50cm程度の高低差があった。突端まで木々が生えているので、枝や幹を手がかりにそれほど困難なく降りることができた。陸地に近い部分は既にすっかり干上がっており、砂礫混じりの砂地は歩き回ってもはまる心配はなかった。
すぐにでもあの島まで向かいたい気持ちを抑えて、まずは生け捕りにした獲物をじっくりと堪能するかのように島の全容を撮影した。

正面に移動している。
水が濁って見えなかっただけで、やはりこの近辺は広範囲に遠浅だった。前回見えかけていたあの突起物の高さから判断しても水深は3月のときから高々1m程度しか下がっていないと思う。


西側、金吹の入り江に近い側から撮影している。雲一つない絶好のコンディションだ。
さすがにここまで訪れる来園者もなく、対岸にも人影は見られなかった。
しかしこの場所を歩き回る私の姿は他の場所からだととても目立つだろう


砂州と島は殆ど一体化していて境目が不明瞭なほどの標高しかない。
また、観光客が頻繁に訪れる遊園からは充分離れているせいか、汀にゴミなどの人工物が殆ど見あたらなかった。


島の部分が円形で、砂州が台形状に接続されている全体の形状は前方後円墳を思わせる。砂州部分はさすがに水上へ現れてそれほど期間が経っていないらしく、目に付く植物と言ってもプランクトンに近いような原始的な苔類だけだった。
砂州部分は殆ど水平に近いので、ほんの数センチ水位が変動しても風向きによっては砂州の上が洗い流されるらしい。陸繋砂州の中ほどはまだ殆ど乾いていなかった。

砂州に対して横向きに撮影している。
汀へ打ち寄せられた砂塵が弧を描いており、確かにこの場所で半島の突端がもっとも張り出していることが分かる。


さて、反対側の土取の入り江側から撮影しようと汀を少し歩いたときだった。
ん?何だこれは?


砂地にとても目立つ一対のかすがいのようなものが現れていた。岬部分からは離れており、3月に来たときは全体が水中に隠れていたのでもちろん存在すら分からなかった。

まったく些末なネタだが何となく気になる…別途記事を作成して写真を掲載しておいた。
派生記事: 未知の水没鉄筋
さて、次なるタスクとして当然ながらあの島への上陸を試みた。
単なる自己満足や征服欲を満たすためだけではない。まあ、達成感はもちろん追求するが…岸辺から見えていた木の幹や根を含めて何か昔の人工物が遺っていないか調べるという目的があった。歴史的にみて常盤池が誕生してからこの島部分を訪れた先駆者が相当数あるのは疑いないにしても、そこに何があるか誰の目にも分かる写真付きでこの世に送り出す使命がある。
「それって使命なのかい?」ってツッコミはナシね♪

水位が下がってからの先客は、たまたま近くを通りかかった小動物の足跡だけだった。


浜辺に打ち上げられていた木の枝一本を拾い上げ、手に持って島を目指す。
何のために拾い上げたかはおよそ想像つくだろう。
これぞ開拓者精神だ。
だから話が大げさ過ぎやしないかい?


さて、足元を確かめつつそろそろと歩み始めた。
陸繋砂州につけられた私の足跡。もちろん他に人間の足跡はいっさいない。
この足跡は小さなものかも知れないが、
踏査においては歴史的な一歩である!


…と力んで宣言するために写真を撮ったのではない。
もっと現実的な問題があったのだ。
あまりにも足元が緩くて安全に進めない。
上の写真は、右足を踏み出しかけたものの足の裏に伝わる感触から危険を察知し、慌てて後ずさりした直後のものだ。全体重をかける前から足元が5cmくらい沈み込んだ。
さほど体重のないネコの足跡ですらかなりはまっていることからも推測できるだろう

砂州を進む段階からそういう予感がしていた。これほど天気の良いコンディションでも充分には乾いていなかった。見た目は水が引いているのだが、砂州の地盤はそんなに痩せてもいない私の体重を支えるほどの状態ではなかった。
困った…島を目前にしていながら、あの場所まで到達できない。

元から遠浅なのだから、砂地ではまると言ってもいきなり背丈まで沈み込むようなことは起きないだろう。そうは言うものの不用意に踏み込んで靴を汚したくない。
ちょうど一週間前に行った蛇瀬池の陸繋島踏査では本当にくるぶしまでハマッて靴を酷く汚した

目的物が見えていながら到達できないじれったい事態は、今まで数多くの物件で経験してきた。あっさり靴と靴下を脱いで裸足で進攻しようかとすら思いかけた。
さすがにそこまでしなかったが、この程度で諦めて汀からのズーム撮影だけで撤収する野ウサギ(?)ではない。二度目はないかも知れないチャンスなのだ。今行っておかなければ、いつ来ても到達はできない。なるべく簡単でインテリジェンスの感じられる安全な手段によって上陸を果たしたい。

しばし熟考し、足を汚さず極力リスクを冒さずに島まで到達する手段は、恐らく読者でも容易に思いつく素朴で原始的な手法なのだった。

(「常盤池・陸繋島【2】」へ続く)

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