宇部坂上池【1】

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現地踏査日:2014/10/19
記事公開日:2014/10/24
山陽自動車道の霜降山トンネル坑口へ接近してやろうという当初の目的から外れて宇部坂下池を訪れてから2ヶ月が経った。結局、坑口へ接近する道は分からなかったし訪れた溜め池でもいくつかの未解決な問題を残した。しかしイノシシ遭遇事件とヤブ蚊攻撃に辟易したのでひたすら涼しくなるのを待っていた。

10月の半ばになると漸く少しばかり涼しくなり、試しにあちこち山野を歩いてみてヤブ蚊が少なくなっているのを体感した。気温と湿度が低いと汗をかいてもサッと引いてくれるのでそれだけでも快適である。そして19日の日曜日、午後からアジトを出るかわりに欲張らず上池の到達のみに限定して訪れることに。

先行して総括記事で書いた通り、上池は下池と同じ沢の上流部にある。したがって前回と同じ道を経て行ける筈だ。しかしよく見ると、南側にある別の分岐路からも道が伸びている。後述するようにこの道は途中まで入ったことがあり、恐らくここからも行けるだろう。

地図ではこの分岐点である。


市道に関しては勝手知った道だしこの場所もよく覚えていて迷うことはない。サッと分岐点まで自転車を漕ぎ着けたところだ。時刻は既に午後3時ちょうど。上池だけが目的の積もりが、やはりこの市道を通ればあちこち寄り道して撮影したので遅くなってしまった。既に山の陰が伸び始めていた。

かなり坂がきつい。まあ、我慢大会とか鍛錬やってるわけでもないので最初っから降りて押し歩きした。


今回も舗装路がある限りは自転車を連れて行くことにした。前回のようなイノシシ事件があったとき、緊急目的で脱出する保険代わりになるので。

坂の半ばで地区道は右へカーブする。下池のとき押し歩きした坂よりは幾分緩やかだ。
その先の左側へ僅かにのぞいているものを見逃しはしなかった。
このときズームした画像はこちら…多分何のことか分からないだろう


カーブの後、地区道はかなり深い沢地の端に沿って直線的に伸びていた。
下の家の屋根が地区道と同じ高さになる頃、溜め池とは無関係だが重要な物件が見えてくる。


溜め池とはまったく無関係な物件だが、当サイトとしてはさすがに言及しないわけにはいかない。
振り返って撮影している。


ズーム撮影。沢を渡る形でコンクリートのドーム状のものが見えている。
庭先には四角い桝がある。


これは厚東川1期工業用水道の導水路だ。厚東川ダムから出発して山沿いを隧道で通り、関口付近で厚東川、国道2号、山陽本線を厚東川水路橋で横切っているあれである。原型は戦前に造られた古いもので、ダムから高低差のみを利用して自然流下している。老朽化が酷いので、昭和50年代以降バイパス管を設置したり既存の導水路の内部へパイプを挿入することで現在もダム水を送り続けている。
庭先にある四角い桝は点検用のNo.26桝で、上部には縞鋼板の蓋が掛けられ転落防止のため施錠されたチェーンが張られている。
いずれも民家の庭先こんなに浅い箇所を工業用水道が通っている場所は例がない。導水路施工以前からこの民家が存在していたことを窺わせる。この水路橋および桝には沢地を市道側から遡行することで到達できる。最初その手段で存在を確認し、後にこの地区道から俯瞰できることが分かった。したがってここまでは一度訪れたことがある。[1]

しかし…このことを書き始めるとホントにきりがないから先へ進むとして…そういう理由でこの場所まで来たことはあるものの、ここから先はまったく初めてである。
地区道の坂が少し緩くなってきた。 火の用心の看板があることから一般向けの登山道ということが分かる。


アスファルト舗装路は最後の民家の前で終わっていた。ここから先は山道だ。
方向転換がどうのこうのという文字の見える看板がある。何処かへ出られるだろうと間違って入り込む車が後を絶たなかったのだろうか…


何だか民家の庭の裏手へ回って行き止まりになってしまいそうな道だが、落ち葉の積もる道はしっかり先まで続いていた。幅は狭くなり当然もはや車は入れない。
ここからが登山道なのだろう…と思い自信をもって進んでみたところが何だか先行きが怪しい。チェーンが張られているのが見える。[15:05]


遠くからこの危険 立入禁止の看板が出ているのが見えていたのだ。
もしかしてこの道は何処か崩れていて通れなくなっているのではないかと思った。


大丈夫…立入禁止になっているのは分岐する小さな沢地で、山道自体はそこで左カーブして先に続いていた。何で立入禁止なのかよく分からないが、ちょっと覗き込んでみると荒れた深い沢地になっていた。時間があれば帰りに調べてみることとして…

ちょっと足を留めて先を窺っている。どうにか進攻できそうだが両側から枝が垂れ掛かっている場所が目立つ。足元も悪そうだ。
自転車を連れて行く意義が感じられないと判断し、今度こそは早々にここへ留守番させることに。
前回は軍事演習みたいな押し歩きでかなり懲りたので


地理院地図の拡大図では、市道から溜め池まで同じような道が続いているように見える。
しかし実際にはうちの裏山にあるような山道状態だった。


早々に自転車を諦めて正解だった。
すぐに枝を避けつつ歩かなければならない状況となったからだ。こういうとき両手が空いていなければ歩きづらいことこの上ない。


うわー、この道大丈夫だろうか…
道を失う心配はないにしてもシダが生い茂り始めた。足元の地面の状態がよく分からず気持ち悪い。


湧水の通り道になっているようで足元をチョロチョロと流れている。
幸いヤブ蚊は居なかった。[15:10]


歩き始めたとき進行方向左側下にあった深い谷地がいつの間にか同じ高さまで追いついていた。
清澄な流れである。ゴミ一つ見当たらない。
小川の近接映像はこちら


山道はこの小川に沿ってずっと続き、両側は常に鬱蒼と木々が生い茂っていて眺めはまったく効かない。前回訪れた下池への経路と合わせて観音岳への登山道として知られている[2]が、道中はかなり退屈な道だ。
この先で一箇所、どちらを進めば良いのかちょっと迷う分岐路があった。深く考えずあまり荒れてなく歩きやすそうな左の分岐を選んだ。

あまりに道中長いのでこのまま登山道となってしまうのではとも思われたが、沢地に伝って歩いている限りは大丈夫だ。
先の分岐路付近で登山道と沢地の位置が入れ替わったようだ。


緩い登り坂の山道に対して沢は追いつくような勢いで急勾配になっていた。
大きめの岩がごろごろしている。永年かけて水流に削られたのかやや丸っこい。[15:15]


興味深い地形に出会った。
沢地は登山道の高さまで追いつき、幅広の不定形に流れていた沢ではなく細い溝のようになっている。


これは自然にできたのではなく人為的に拵えたものだろう。地山だった部分を掘り割ったか、元は沢だったものに盛土して後から溝状に掘ったのか…沢地のこの変化によって先に求めるターゲットが近いことを感じた。

やはり、そうだった。
沢地が登山道へ完全に追いついたところで突如黒々としたスパイラル管が現れた。
その先に開けた道からは期待していた眺めが見えかけていたのである。


やっと着いた。
この溜め池で間違いないだろう。


それにしても…さっき見えた黒いスパイラル管は余水吐なんだろうか…
ちょっと調べてみた。

(「宇部坂上池【2】」へ続く)
出典および編集追記:

1. 過去に外部ブログで集中的に記事を書いている。将来的にすべて当サイトへ記事化するか限定公開ないしは書籍化を考えているのでここでは案内しない。
と言うか沢山あり過ぎるブログの記事を探すのがとっても大儀なので…^^;

2. 宇部坂上池コースとして知られている。(霜降山登山コースに詳しい知人によるマップ情報による)

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