本山岬の浜辺に遊ぶ【3】

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(「本山岬の浜辺に遊ぶ【2】」の続き)

転がるに任せて細い道を自転車で下りきると突然藪が開け、草むらが左右に退いた先に絶景が待っていました。岬にある公園から離れるように走った分だけ、それは砂浜のかなり遠くに見えています。だけど遠目で見ても確信できました。
今度こそは思うままの写真が撮れる!!
目指す先は見えていても、接近するには相当長いこと砂浜を進まなければなりませんでした。
歩くなんてじれったい…いち早くあの場所まで行きたい!

自転車に跨ってガンガン進んでいたものの、深い砂浜と積み上がった貝殻にズブズブとタイヤを取られます。それでも無理やりペダルを踏み締め、漕いで行きます。
普通のじでんしゃだと貝殻の角でパンクするかも…お勧めできません…

振り返って撮影。
自転車隊が砂浜に刻んだ一条の気ままなラインが…


こんな所まで普通、自転車で乗り込まないよね。
だけど、笑わば笑え…東側と違い、ここは見ている人なんて誰もいない。急な階段でもない限り、常に自転車は携行するポリシーなのです。先の方で自転車に乗れる区間があったとしたら、また取りに戻らなければならないじゃんか…

そして…
自転車隊の目の前に広がる待ち望んでいた景色です。


西日を受けて黄金色に輝く岬の絶壁。
これだ…これだよ。
本山岬は、岩場ゴツゴツの岬とは違うんです。確かに岩場もあるけど、見たところまるで真砂土で築き固めたような垂直壁が海に突き出し、仮借なく波に洗われている…そういう場所なんです。

砂浜には割れて粉々になった貝殻が厚く積もっていました。
自転車に跨るとズブズブ埋まり、やがて漕ぐこともできなくなりました。しかし留め置くことはせず、押したまま「黄金の壁」に向かって早歩きしました。
もの凄い垂直壁!!
自転車を崖の下に置いてみたけど、全体像を収めるには汀近くまで下がらなければなりませんでした。


垂直壁には何層もの地層がハッキリ見えています。
このずぅーっと上の上の方に、最初足を踏み入れた公園の柵が見えています。

本山岬の浜辺に遊ぶ【1】」で、公園から西側を見たとき「入ってはいけません」の看板が出ていた場所があったのを覚えているよね?


立入禁止の看板の向こうに擬木の柵があり、先のデカい写真では浜辺から見えています。
…と言うことは…
この柵から1〜2m先は15m近い垂直壁… ((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル..
過去に転落事故とかなかったんだろうか…なかったよね?ないことを祈る…怖いよぅー

見た目は確かに真砂土のようだけど、大きめの砂礫が混じっています。岩ほどではないけど結構固く、真砂土みたいにポロポロ崩れる感じはありません。それでも執拗に波で洗われ続ければ、硬岩ほどの固さはないのでしょう。自立を失って垂直に崩されているような感じです。
このままではあと数百年もすれば本山岬全体が浸食されて無くなってしまうと思う…

この崖の下に自転車を留め置き、さっそく周囲を散策しました。
フワフワな砂浜なのでスタンドを立てて停められる場所を探すのが困難だった…

時間帯や光線の加減にも助けられているんだろうけど、個人的には西側の景色の方がずっといい!
近くにいる人と言えば、公園からも見えていた岸壁で釣りをしている人くらい。東側と違い、駐車場や公園から離れているから、気付かずスルーする人は多いかも知れない…お陰で散策する間、完全に景色を独り占めすることができました。

貝殻がちな砂浜を踏み締めて、更に東へ進んでみました。

あの崖を回り込んで振り返って撮影。
左側は離れ小島になっていて、永年寄せては返す波で岬から切り離されたように見えます。


この離れ小島こそ、先行公開のダイジェストでもお伝えした穴ポコだらけの小島でした。
この小島自体も地層が見えています。


岬の突端を経て、さっきまで居た東側の行けるところまで行ってみました。
不思議なことに岩というか、この地層部分には殆ど海草が付着しておらず、足を滑らせることなくその上を渡って行けました。
写真でも窺い知れるけど…波打ち際と言うのに海草らしきものが見当たらないでしょう?


このあたりが接近の限界かな。
さっき探検した謎のパイプが見えています。


何と、これはさっき逆光に苦しみながら写した穴の反対側みたいです(汗)
こちらから見ると意外に穴は広い…もっとも通り抜けはやっぱり無理ですが…


崩れずに残った崖の層一枚隔てて反対側に回ったことになります。厚みは1mちょっと。反対側へ来るために、1km以上遠回りして到達したことに…

穴ポコの数や規模からすれば、明らかに東側よりもここ西側の方が目立ちます。それも穴を通して向こうを眺めるだけではなく、人間がラクに通り抜けられる規模のものが沢山ありました。

小島に穿たれた鼻の穴トンネル。
トンネルがそこにあれば…ええ、そりゃあくぐり抜けてあげるってのがトンネル冥利ってものでしょうが!(えっ?)


何度も言うように、小島全体が重厚な岩ではなく砂礫混じりの真砂土っぽいイメージです。
通り抜けているうちにグシャッ!と上から崩壊するのでは…と、ちょっと心配でした。

波打ち際から瀬戸内海を眺めます。
遮るものがないせいか、さすがにここは風が強い。波しぶきが跳ね上げられます。
パノラマ動画撮影しようと思ったけど風の雑音をひらってしまう…


かなり厚みがあるのに、奇妙なところへ穴が空いたものだなあ…
まさか、鉄棒とか持ってきてわざと「貫通させた」わけじゃあないでしょうね?


思い切り接近。
見た目ほど脆くはありませんが、一枚岩よりは脆弱です。弱い部分から少しずつ削り取られています。


例の子供会のプリントによれば、砂の中に埋もれた丸っこい石の正体こそ、かつてここにあった石炭層の下に土の層があり、川の中で削られていた証拠である…と説明されています。そうとなれば、この近辺の地層は太古の歴史にあって著しく変動していることになります。
なるほど、大岩には似合わせない角の取れた小さな石が沢山埋め込まれて一つの岩を形成しています。熱や圧力の影響からでしょうか、見かけはポロポロとこぼれそうなのに、意外にしっかり固着しています。

弱い部分から浸食され、そこが波しぶきや雨水の通り道になるらしい。
こうしてある日、突然バサッと全体が剥落するのでしょう。


ここへ来た時点でもう4時を過ぎていたというのに…
そろそろ家路を急がないと、アジトへ着く頃には暗くなってしまうかも知れない…そうでありながら、この西側海岸は興味深いオモチャを次々見せつけて、容易に帰らせてはくれません。

岬へ突き出る崖に穿たれた、思いの外奥行きがありそうな窟。
入ってみたくありませんか?
…って言うかどうしても入りたくなっちまうのが自転車隊クォリティー♪


「何もこんな中に入らなくたって…どうせ行き止まりに決まってるでしょうが?」

その通り…あなたは大変に聡明であります。
波が穿いた穴倉ですから、どこまでも奥が続いているワケがないわけでありまして…

しかし、
「穴があれば覗き込む。
可能であれば、中へ入ろうと試みる。」
聡明になれない自転車隊の標準仕様なのであります。
マジで私の前世は本当に穴掘って暮らす野ウサギだったのかも知れない…

ええい、構わぬ。
潜り込むぞー♪

2mばかり入ってきたところ。
割れた貝殻が土手のように積み上がっています。まだ奥があるの?


匍匐状態なら入ることはできます。
実際、そこまで入りました。
よい子はマネしないように…と言う前に誰も真似しやしないよね♪


ダメだ…もう限界…
無理やり入ったら、つっかえて出て来れなくなるかも知れない。最後は腕だけ限界まで奥に伸ばして撮影してみました。まだ奥があるみたい…

キリがない…
もう帰ろう。ホントに帰るよ…

しかし最後になって、私が小学時代に見て微かな記憶に残されていた本山岬の映像を取り戻すことができて、大変満足しました。
駐車場からはちょっと遠いけど、余力があれば岬の西側も観た方が良いね。ここまで来る人は少ないかも知れないけど、景色としてはコッチの方が上かな。

帰りは乗れる場所まで再び自転車を押し歩きし、砂浜部分からは強引に乗って漕ぎました。
来たとき下ってきたあの道を登り直すのはタルイので、岸壁沿いを走ることにしました。遠回りだけど平坦だし、本山の体育館近辺に出て来れることが地図で分かっていたからです。

岸壁からは、まだ釣り糸を垂れる人の姿が散見されました。
その近くでもう一度、大いなる楽しきひとときを提供してくれた本山岬を振り返りました。


「隣の芝生は青い」って言葉があるけど、隣の山陽小野田市っていいモノ持ってるね。
犬を連れて散歩ついで眺めに来る人、気軽にやってきて釣り糸を垂れる人…珍しい自然の景観を持つ場所の近くに住む人たちが少しばかり羨ましく感じられました。
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本山岬の散策としてはこれで完結です。
しかし…
ちょっと待ったーっ!!
振り返って本山岬を眺めたのですが…
自転車隊、何やらとっても気になるものを見つけてしまったようです。

でも、何処に?
「振り返った先に見えてるよ…」
さっきの写真です。
どこに何があるって言うの?


自転車隊、躍起になって説明します。
「違う、違う!もっと左!」
立ち位置はそのままで、カメラだけ左に水平移動すると…

あのレンガ造りの塔は何?
ただの廃屋じゃあなさそうだよ…


更にズームしてみると…
何これ!?


(さて…「薮に埋もれる謎のレンガ塔」として続きを書いた…でもあそこに行けるんだろうか?)

出典および編集追記:

1.

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